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華音の部屋
華音が歩み寄りながら言った。
「ここはストレンジ・ワールドの寮よ。……っていっても、ドゥンケル城の真下なんだけどね」
ベッド脇の目覚まし時計は、九時を指している。まさか、夜の九時ではあるまいが……知らぬ間に一晩たってしまったらしい。
慌てて身を起こそうとすると、華音がそっと押しとどめた。
「ムーちゃん、今日はお休みしてて。ご両親には、昨晩のうちに連絡してあるから。……それとこれ、朝ごはん。よかったら食べて」
言いつつ、枕元に紙包みを置く。ほのかに香ばしい香りを纏っている。
「本当はね、今日は一日側にいてあげたいんだけど、忙しくてダメなの。あたしの部屋、自由に使っていいから……お昼、遅くなっちゃうと思うけど、一緒に食べようね!」
そう言って手を振ると、華音は部屋を出て行った。




