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刃物
和服が欠伸交じりで言った。
「あーあ、痛そう。……早いとこ、楽にしてあげなよ」
そう言うと、袂から包丁を取り出す。
「こんな事もあろうかと、厨房から借りてきたから」
「……兄さん、そういう余計な手際の良さを発揮しなくていいから」
「だってさー! もう、しょうがないじゃん!」
和服が両手をパタパタさせる。キョンシーがぽつりと言う。
「……今からでも、病院に運べないの?」
フードが呟くように答えた。
「だから、そういうレベルじゃないと言ってる。生きてるのが奇跡」
それを聞いて、キョンシーが涙声になる。
「だって……これじゃ、ムーちゃんがあんまりにも可哀そうだよう……」
その言葉に、ふん、と和服が鼻を鳴らす。
「違うね。こいつが可哀そうなんじゃないだろ? お前は、自分が嫌われたくないだけだ」
キョンシーは答えずに、また静かに泣き始めた。




