36/148
ノクターンの湖
大時計が五時の鐘を鳴らす。
睦月は今、ドゥンケル城の裏手……ノクターンの湖のほとりに立ち、雨でけぶる湖面を眺めていた。
甲冑は隙間だらけなので、雨水をよける効果はない。
下に着たボディスーツには防水加工が施してあるが、素材が薄いので、表面を水が流れる度に少しずつ体温を奪われていく。
インカムから指示が入らないので、とりあえず大きな木の下に避難した。
園内にいるサブキャストの人数も普段の半分以下で、ケンゾーも休んでいるらしい。
彼は、ゲストの安全が確認できないのに開園するだなんて、オーナーの方針についていけないと電話で話していたそうだ。
まったくその通りで、実際のところ、睦月だって同じ気持ちだ。
湖に船が浮かんでいる。フードを被った小柄な人物が、キャイキャイと騒ぎながら湖を櫂で突いていた。
すると、周囲から触手や骸骨が飛び出ては船の上にちょっかいをかける。
カロンの渡し船で、冥府の湖を散策するという内容のアトラクションだった。
それをぼんやり眺めていると、通りから妙な人影が、傘も差さずにヒョコヒョコと歩いてくるのに気づいた。




