華音の変化
真っ暗な部屋で目を閉じ、睦月は考えた。
華音は、はっきり言って異常だ。
三年の間に、なにが彼女を変えたのかと思ったのだ。しかし、いくら考えても答えが出ない。
「うーん。昔の先輩って、もっとこう……やさしかったよなぁ。わがまま言ったけど、基本的に無理な事は言わなかったし……。なんかんだで面倒見てくれて、遊んでくれて、それで」
そこで、ふと気づく。
「そうか……別に、変わっちゃいないんだ!」
心配しないで。気にしないで。あるいは、忘れて。
それは昔、一緒に何か『やらかしてしまった』後、怯える睦月を安心させるため、彼女が言っていた台詞だった。
彼女は、何一つ変わっていない。
子供みたいな性格も、睦月への態度も……そして、外見さえも。
変わらなさ過ぎて、怖いほどだ。
ただ、彼が華音を異常だと感じた理由は二つ。
ひとつは相変わらず、彼女が睦月を子供扱いしている事。
小さな時分ならともかく、今の彼が「なんにも心配しないで」と言われ、「はい、そうですか」と納得するわけもないだろうに。
そしてもうひとつ。彼女の死に対する感覚が、あまりにも薄すぎる事だった。
彼女が睦月の言う事を信じるなら、「橘が死んだ」という事実は、それだけでかなりショックなはずだろう。
なのに、反応があまりにも淡白に過ぎる。まるで死ぬと言う意味が、わかってないレベルに思えるほどだ。
不意に、枕もとのスマホがメロディーを奏でた。思考が途切れる。
着信だ。反射的にボタンを押し、耳に当てる。




