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九十八
「九十八、九十八、九十八……」
また、音楽が聞こえる。
指先さえも見えない暗闇の中で、少女は自分の顔を撫でた。
ずぶり。大きな裂け目がある。そこに指が深く、とても深く沈みこむ。
指先に感じるのは、濡れた肉の感触。
鋭い痛み。生の実感。
同時に、頭の奥が痺れる様な感覚と共に、偽物の光が明滅した。
「はぁっ」
思わず仰け反ると、頭がゴツンと壁に当たった。
狭い。とても狭い空間だから。手足を満足に伸ばす事すらできないのだ。
擦れた吐息を吐きながら……笑う。
あまりにも辛くて、苦しすぎて、笑うことしかできないから。
「ふふ……あはは。くひっ」
笑いに合わせて、だらりと涎が頬へと流れる。
「九十八……きゅ……きゅうじゅっくひぃ……はぁ」
次は……九十九。




