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怪しい刑事
午後、八時過ぎ。
パレード車がドゥンケル城の前を、ゆっくりと通過する睦月はゲストの誘導をしながら、油断なく周囲を見回す。芽衣子の顔を見て驚くような人間がいないかと思っていたのだ。
あいにく、そこまでわかりやすい反応をするゲストは一人もおらず、みんな楽しそうに両手を振ったり、飛び跳ねたりしているだけだった。
セクシーな芽衣子は男性客からの人気が高く、パレードのみとは言え、数日振りの復帰とあって盛り上がり具合は中々だ。
その中に、転の姿があった。転は、睦月の姿を見つけると、意味ありげに唇の端を歪め、もじゃもじゃ頭をかき回しながら行ってしまう。
(……そういえば、刑事だって言ってたけど……よく考えたら、俺、警察手帳もなにも見せてもらってないんだよな)
転は、まるでパレードの混雑を避けるようにして、クーロン・ストリートへ歩いて行った。




