テーマパークの女王様
「でもね。逆に言うと、その人達はワールド内で騒ぎを起こしたりしないのよ。だって、ここにいる分には、誰にも迷惑かけてないんだもの。だから、オーナーと向こうの団体の人とね、ここだけはノータッチって言う、そういうルールを決めてるみたいなの」
「へえ。意外と分別があるテロリストなんですね。でも、そうか。ここが潰れたら、みんな外に出ていくしかないもんな」
「それでも、時々は暴走する人がいるから……。今回も、てっきりその類だと思ってたんだけど。違ったみたいね。オーナーも色々と調べてくれてるけど、向こうの信者は関与してないって話みたいよ」
「そうだ。オーナーって言えば。ねえ、先輩。そもそも、なんでオーナーはそんな場所をテーマパークとして開放してるんですか?」
「それね。昔、あたしもオーナーに聞いたの。なんでわざわざ遊園地なんですかって」
「そしたら?」
「いくつかあるんだけど、大きな理由は二つ。ひとつはこんな場所だから、せめてこれから死ぬ人が怖くないようにって」
「なるほど。つまり、死への抵抗感を少しでも和らげるためかな? ……もうひとつは?」
「人がたくさん来て遊んでいってくれないと、ストレンジ・ワールドが広がっちゃうんだって」
「広がる? ……どういう意味でしょう」
睦月は首を傾げて尋ねた。華音は言う。
「わかんない。多分……死んだらあたし達みたいな身体になっちゃう場所が、ここ意外にも増えちゃうって意味かなぁ?」
「うーん……? この体って……結局、なんなんでしょうね」
華音は首を横に振る。
「それもわからないわ。オーナー、その事については、あんまり話してくれないの。他にも就職支援とか、そういう理由もあると思うんだけど。外に出たけど仕事がみつからなくて、戻ってきた人とかいるしね」
「……俺らみたいなの、何人くらいいるんですか?」
「全員の数はわからないわ。あたしが知ってるのは、二十人とかそれくらい」
「意外と少ないですね」
「うん。あたしはここでは日が浅い方だし。それにほら……ここって、死んだ人を連れてきても無意味だから。ここで死なないと生き返れない。死って、突発的にやってくるでしょ? あたしみたいに、宣告されて死ぬほうが珍しいもの」
「ええ。病気や怪我にでもならないと、自分がいつ死ぬかなんてわかりませんよね」
「例えばさ、健康で幸せに暮らしてて、それで死ななくなるからってここに連れてこられて……ムーちゃん……『試しに死んでみる』気になれる?」
「それはちょっと……怖いですね。っていうか、絶対に嫌です」
だって万が一、生き返れなかったらどうなるのか?
……そんなの、ハイリスク過ぎて議論にすらならない。
逆に、生きる気力がない奴がこんな身体になっても、決して幸せにはなれないだろう。
だから結局、この現象を受け入れられるのは、死の運命が目前に迫り、なおかつ選択の余地がない者のみに限られるのだった。
「だよね? だから、どうしようもない病気とか怪我とか……そういう理由がある人じゃないと、オーナーがいい顔しないって言うのもあるんだけどね。結局、どういう仕組みでこうなってるのか、知ってるのはオーナーだけだもん! あの人に逆らう人なんて、ここにはいないよ。だからって、無茶な命令とかされないよ。出て行って外で暮らすのだって、自由だし」
「ふうん……?」
(仕組みがわからないから怖い。……けど、オーナー。サンドラさんは、みんなを縛り付けたり強制してるわけじゃない?)
すみません。
6月30〜7月2日まで予約投稿してたつもりが、しっかりできてませんでした……。




