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前代未聞
「そうだね……明後日には立ち上がれるかな。普通に動くには、まだ十日はかかる。まったく、関節に沿って切り離すなど面倒な事を……おかげで動きがギクシャクする」
「誰がやったんですか?」
「さあ、わからんよ。最後に覚えているのは、月影庭園からドゥンケル城へと向かう道すがらだったな。芽衣子君がいないものだから、あの辺りのゲストが退屈してはいけないと、我輩が相手をしていたのだ。警備主任のケンゾーさんが見回りに来たので挨拶をして、その少し後に背後から誰かに襲われたのだ。……ガツンと一撃、間違いなく殺すつもりの強さだった」
「最後に会ったのはケンゾーさんか……」
(しかし、殺人事件の被害者から直接話を聞けるだなんて、前代未聞だろうな)




