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九十七
「九十七、九十七、九十七……」
繰り返される死と暗闇の中で、せめて何度目の『死』か忘れぬように、少女は数字を数える。
自分の命を惜しむように、両の掌を首筋に押し当てた。
そこには大きく傷が開き、ひゅうひゅうと空気が漏れている。
「九……十…はぁ……かひぃ」
声が唐突に掠れる。酸素が薄くて、息が続かなくなってきたのだ。
……いや。元々、酸素なんて存在しないのかもしれない。
あと何度、この死を繰り返せばいいのだろうか?
胸を絞る様な苦しさと切なさに、光など一筋も差し込まない闇の中で、意識が白く明滅する。
「ぅ……し……ち……はぁっ」
耳に遠く、音楽が聞こえる。これは、なんの曲だったか……意識が急速に遠のいて行く。
次は、九十八。




