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橘の部屋
睦月は、タオルを置いて部屋を出る。廊下に並ぶドアを、一つ一つ見ていった。
そのうちのひとつに『橘』のネームプレートを見つけ、ノックする。
「誰だね?」
少ししゃがれているが、間違いがない。橘の声だ。
「俺です。霜上睦月です」
「ふむ、君か。入りたまえ!」
言われて入った部屋の中は、ほとんどが黒と赤で構成されていた。
壁紙は黒で、ソファは赤、高そうなマホガニーの机の上には塩煎りナッツの瓶があり、その隣に真っ黒な表紙の、日記らしき本が置いてある。
壁の棚には吸血鬼関連の書物やDVD、ブランデーやワイン等の酒類が並んでいる。大型のテレビとオーディオセットがあるので、これで見ているのだろう。




