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素顔
呻く彼の首根っこを掴み、華音は引き起こした。
「はぁー……とにかくっ! いますぐ、その怖いお面を脱ぎなさいっ!」
「あい……ぬぎまふ」
のろのろとヘルメットを脱ぐ。華音が引きつった笑顔で女の子の背を押した。
「ほ、ほらー。このお兄ちゃんが、パパとママのところに連れてってくれるアルヨー?」
「お……おいで……」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔で、睦月は手招きする。
「いいいやあああっ! オバケこわいい!」
だけど女の子は泣き喚いて、華音の服を離そうとしない。
「どーすんのよっ! もうこれ、ムーちゃんに絶対ついてかないよっ!」
「そ……そんなこと言われても……俺だってどうしたらいいか……。先輩、この仕事長いんでしょっ? なにか考えてくださいよ……」
「こんな怖い奴に迷子が喜んでついてく方法なんて知らないわよっ! ああ、もう! 早くしないとパレードに間に合わないわっ!」




