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魔力ゼロの魔法使い、杖で殴って無双する。  作者: 水無月悪い人
第三章 超越編
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第三十三話「殺気」

 フィーレが言っていた露店に到着した。店先には杖だけでなく、槍や剣、弓、さらには銃まで並んでいる。銃はやはり高価で、一丁百万ルピという驚くべき価格がつけられている。どうやらここは武器屋のようだ。


「――なあ、お前」


 店主と思われる大柄な男に声を掛けた。


「ん? 俺のことか?」


 男が顔を上げ、少し驚いた様子で返事をする。


「そうだ。その杖、元々俺と俺の仲間のものなんだ。だから、悪いけど返してもらえないか?」


 男は少し考え込み、すぐに返事をした。


「……なんでだ? 俺はちゃんと買ったんだぞ?」


 まあ、そう来るか。想定通りだ。


「分かったよ。金はないけど、金以外のものなら協力できる。例えば、力仕事とかさ」


 男が大声で笑いながら言った。


「ガハハハッ! そんな細い体で力仕事? お前、本当に力に自信があるのか? ……だったらよ、俺と勝負してみないか?」


 来たな。こんなにあっさり釣れるとは思ってもみなかった。


「勝負か?」


「そうだ。みんな知ってる腕相撲だ。力自慢のお前なら、もちろん受けるだろ?」


「……ああ、受けてやる。ただし、俺が勝ったらその杖は二本とも俺のものだ。」


「いいぜ。俺に勝てれば、もちろんくれてやるよ」


 大柄な男はニヤリと笑った。どうやら、俺が簡単に負けると思っているらしい。まあ、今回はお前が鴨だ。


「あ、ちょっと待ってくれ。悪いけど、俺金ないんだ。賭けるものがないんだが、どうすればいい?」


「金は要らん。代わりに、お前が着ているそのローブを賭けろ」


 男は俺のローブを指差しながら言った。


「……ローブか。よし、分かった。じゃあ、早速始めようか」


(エルムスのじーさんから貰ったやつだが、まぁ負けることはねぇしいいか)


 以下のように修正して、セリフとモノローグをさらにわかりやすくしました。



 ---


「ハッ! 後から文句を言っても無駄だぞ。周りを見ろ、証人がこんなにいるんだ!」


 男が手を鳴らして威嚇する。


「……あっそ。うだうだ言ってないで、さっさと始めろよ」


「な、なにぃ!? ……許さん。決めた、腕相撲がどれだけ危険な遊びか、その体に刻み込んでやる」


 木製の台がセットされ、俺と大柄な男はそこに肘をつき、手を組んだ。


「誰か、合図を頼む」

「――へい! ならあっしがしやす!」


 坊主頭の男が名乗り出た。こいつも何かしら仕組まれているんだろうな。多分仲間だな。


「よし、じゃあ始めるぞ? いいか、小僧」

「いつでもどうぞ」


 男の顔は赤くなり、血管が浮き上がっているのが分かる。


「腕が折れても文句言うなよ?」

「お前こそな」


 緊張が高まる中、坊主頭の男が右手を挙げた。


「――始め!」


 右手が振り下ろされ、腕相撲が始まった。


「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 大柄な男の雄叫びが響く。


「……」


 俺は一切動じることなく、無表情で男を見つめる。


「どうだ? …………なに?」


 俺の腕はピクリとも動かない。大柄な男は顔を真っ赤にして、まるで茹でダコのように見える。


「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉ!! なぜだぁぁぁぁ! なぜ動かないぃぃぃぃぃぃ!!」


「さっきの言葉、覚えてるか? 俺が勝ったらその杖は俺のものだって。約束だろ?」


 男は息を荒げながら、さらに力を入れようとする。


「ぐぅぅぅぅおおおおおおおおおお!!」


 その力で、ついに腕相撲の台にヒビが入る。


「そろそろ飽きてきた。悪いけど、終わらせるぞ」

「な……なにぃぃぃ!?」


 俺が軽く力を入れた瞬間、ヒビが入った台はバキッと音を立てて割れ、大柄な男は勢いよく地面に顔をぶつけた。 


「――ぶぎゃっ!?」


「…………よし、俺の勝ち」


 観客たちは予想外の展開に驚いたのか、場が静まり返った。


「……なぁ、オッサン。そこにある杖、二本とも貰っていいよな。お前もこいつの仲間だろ? 大人しく渡せば、何もしないから」


「あ、ああ……持ってけ……クソッ」

「ありがとさん」


 俺は露店の男から杖を二本受け取る。


 よし、取り戻した。これでフィーレに返すことができる。……それにしても、この男、フィーレに負けたんだよな? あいつ、何を賭けて勝負していたんだろう? 戻って聞いてみるか。

 

 ……

 …………

 ………………

 

「おーーーい、待たせたな」

「あ、柊さん! おかえりなさい! あっ! その手に持っているのは……!」

「ああ、ほらよ。お前の杖だ」

「わぁ! ありがとうございます!」


 フィーレは杖を手にして嬉しそうに顔を輝かせ、レインは微笑みながら俺を褒めてくる。


「さすがですね、柊様。無事取り返すことができて良かったです。これで心置きなく先に進めます」

「まぁ、杖を取り戻すのは簡単だったけど、正直あんな露店とデカい男、あいつらグルだろうな」


 俺がそう言うと、レインは頷いて少し冷静に話す。


「はい、私もそう予想しておりました。あの男、そして観客たち、全員が仕組んでいたのでしょう」


「予想してたんなら、何で最初に言ってくれなかったんだよ?」


 俺が少し文句を言うと、レインは淡々と返す。


「お二人がそれに気づくことを期待しておりました。そうでなければ、今後も同じような状況が起きたときに、逆に対応が遅れてしまうかと思いまして」

「なるほど……って、そういやフィーレ、お前、あの男に何を賭けたんだ? 金がないのは分かってるんだが」


 俺がフィーレに問いかけると、フィーレは顔を真っ赤にして口ごもる。


「え、えぇ!? あ、あの! な、なにも賭けてませんよ!?」


 フィーレは目をキョロキョロとさせながら、必死に誤魔化そうとする。しかし、その焦り具合が逆に怪しい。


「……嘘が下手すぎるだろ」


 俺が指摘すると、フィーレは更に慌てふためく。


「……まぁ、なんでもいいけどな。……まさか体とかじゃないよな?」


 冗談交じりに言うと、フィーレは一瞬固まり、顔を真っ赤にして――


「な、なに言ってるんですか! 私はまだしょ――あっ、いえ! なんでもないです! 本当に何も賭けてませんから!」


 体なのかよ。……よくあのむさ苦しい男連中に貞操奪われなかったな。


(……あっ、だから慌てて逃げて来て、俺に助けを求めに来たのか)


 負けたにも関わらず自分が掛けたものを渡さず逃げるとか、フィーレのほうがチンピラじゃねぇか……?


 俺は溜め息混じりで話を切り上げそのまま、レインに向かって言う。


「とにかく杖も戻ったし、レイン。もう一つ聞きたいことがあるんだが」


 レインは無言で少し頷くと、また穏やかに口を開く。


「分かっております。柊様、フィーレ様、杖を取り戻せたことに関しては安心しました。さて、それでは本題に移りましょうか。ご準備はできていますか?」


 レインはいつもの冷静な態度で話を進めようとする。ようやく、俺たちがあの場を離れた後の話に踏み込む準備が整ったらしい。


「……お前とアレンに何かあったのか?」


 俺が少し警戒しながら問い返すと、レインは一瞬ためらいの表情を見せた後、淡々と答える。


「はい。柊様とフィーレ様が居なくなってからの話ですが……実は私もお二人に聞きたいことがあります」

「そうか、俺も聞きたいことが山ほどある」


 少しイライラしながらも、俺は頷く。アレンも気になるがアイツら……俺の仲間だ。無事だろうか……。


「では、落ち着ける場所にでも移動しましょう。ここはどうやら話に適していない様ですので」


 レインが静かにそう言い、右手を鞘に手をかけた。


 その瞬間、何か気配を感じたレインは急に動きが鋭くなり、刀を抜く――


「誰ですか」


 レインが冷静な声で言った瞬間、俺の背筋もピンと張る。気のせいではない。何か、ただならぬ迫力を感じる。


「――っ!?」


(何だ!? 今のは?)


 ……気のせい……いや、あれは確かに殺気……だよな。


 俺には分かる。この感じ、かつて|両親が俺を見ていた時の目だ《・・・・・・・・・・・・・》。姿は捉えられなかったが、間違いない。


 レインが剣を抜き、周囲を警戒し始める。その姿勢は、何度も経験した警戒心から生まれるものだろう。


「どうしたんですか? レインさん?」


 フィーレだけが気付いていない様子で、レインの異変に質問するが、レインはすぐに答えることなく冷静に鞘に刀を収めた。


「いえ、なんでもありません。……場所を移しましょう」


 それだけ言うと、再び無言で歩き出す。俺も少し辺りを警戒しながら、レインの後を追う。フィーレはまだその異常さを察していない様子だが、俺とレインはだけはその気配を感じ取っていた。


 やがて、俺たちは人目のつかない路地裏に足を踏み入れた。


「ここなら邪魔も入らないでしょう」


 レインがそう言うと、彼女は再び話し始めた。今までの経緯、そして俺たちが居なくなった後の出来事について――。

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