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魔力ゼロの魔法使い、杖で殴って無双する。  作者: 水無月悪い人
第二章 アレン王国編
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第十六話「ふざけた魔法使いの最終手段」

 アレン・フォールズ。真っ赤な鎧に、その上からでも分かる鍛え上げられた筋肉。

 まさに歴戦の王という風格。俺はそんな相手と戦うことになった。……杖無しで。

 

「逃げてばかりでは、罪を帳消しにする事等出来んぞ! このまま逃げる気なら牢屋に戻って貰うことになる!」

「うるせー! こっちだってでけぇハンデ背負ってんだ!」

 

 杖が無いと言ったら、杖が無いと何も出来ないのか? と言われ、頭に来た俺は杖なんかなくても勝てるわボケ! と、条件反射で言ってしまった。魔法使いが杖無しで戦える訳が無いのに、だ。


 なんとかギリギリでアレンの剣を避けてはいるが長くは持たないな。俺はAGL(敏捷)にステータスを振っていない。むしろ何故アレンの攻撃を避ける事が出来ているのかすら分からない。

 

「…………いや、違う。当てていないのか」

「ハッ! ようやく気づいたか。お前が何か隠していると思ってな。当てようと思えばいつでも当てられるぞ?」

 

 クソ舐めやがって……杖さえあれば……! この玉座の間にはそんなものは無い。居るのは俺とアレンと先程俺を取り囲んだ兵士達…………あ、そうか。俺って頭いいな。

 

「どうした? もう逃げないのか? まさか諦めたか」

「いいや、アレン。お前を倒す方法を見つけただけだ」

「ほう? ついに見せるか。ならやってみるがいい!」

 

 言われなくてもやってやるよ……!

 

「『ミスディレクション』!」

「なに……!? 消えただと?」

 

 よし、俺の姿が見えていない様だ。つまり、これは少なくともアレンは俺より実力が上ということは無いって事だ。だが、消えただけで攻撃手段が無いのなら意味が無い。そう、なら奪えばいい。運がいいのか悪いのか、この玉座の間には兵士達が居る。殆どが槍を持った前衛兵だが、中には杖持ちの奴もいる。俺は杖を持った兵士の元へと近付いた。

 

(よし……見えていないな。悪いが少し借りていくぜ)

 

「うぉ!? なんだ! 俺の杖が無くなったぞ!?」

「何言ってんだお前。今はふざけてる場合じゃないぞ。それより今はアレン様の戦いだ。相手の犯罪者の姿が消えた。……一体どこへ消えたのだ……まさかアレン様に恐れを成して逃げたのか?」

 

(馬鹿言うな、逃げるかよ)


 俺は兵士からパクった杖を持ちアレンの元へと戻る。この『ミスディレクション』もずっと姿を消せる訳では無い。あくまで一時的なものだ。それにもうこいつは気付いているだろうな。『ミスディレクション』は足音や足跡などの形跡は消せない。|姿が見えないというだけ《・・・・・・・・・・・》だ。さっきアレンは目がいいと言っていた。つまり――

 

「もういいか? 俺も動いても」

「やっぱり、見えてたんだなアンタ」

「いいや、見えてはいない。だが、俺は目がいいからな。お前が足を上げる度に(ほこり)が舞っていた。俺の目はそれを逃さなかった」

 

 姿が見えなくても、どこにいるのか、場所がわかるってことか。にしても、舞っている埃すら見えるとか目が良いとかのレベルじゃないだろ。

 そして『ミスディレクション』の効果は切れ、俺は玉座の間に再び姿を現す。

 

「……ん? あっ! 俺の消えた杖! お、おい!! それは俺の杖だ! 返せ犯罪者!」

 

 さっき俺が杖をパクった兵士がこっちに向かって叫んでいる。

 

「まだ犯罪者じゃねぇし」

「……ほう、兵の杖を奪ったか。魔法使いなら当然だな。では、ここからが本番という訳だ」

「ああそうだな。悪いが負ける気は無い」

「それは俺も同じ事だ。この国の王として負けることは許されない」

 

 アレンが四股を踏んだ。瞬間、地面にヒビが入る。

 

「……よしではここからは本気でいく。俺は手加減が出来ん。降参するなら今のうちだ」

「降参なんてするか。来るなら早くかかってこいよ」

 

 地面にヒビ入れるくらい俺だって出来る。勿論杖あってこそだが。


 ……と、ここまでは良かった。だが、勝敗に関わる致命的な問題があった。


「おいおい……何だこの杖。おいコラ! もっと手入れしとけ! 虫に食われてボロボロじゃねぇかっ! 杖を大事にしねぇ奴が魔法使い名乗ってんじゃねぇぞハゲ!」

 

 俺が持っている杖は明らかに安物だ。仮にもこの国を守る兵ならもう少し手入れしとけよ。しかも、木製ときた。俺が殴ればこの杖は直ぐに壊れる。ボロボロ具合も相まって、殴れるのは一回だけだ。


「う、うるせぇ! 俺だってな! 好きでそんな杖使ってんじゃねぇんだ! 金がねぇんだよ! アレン様が税金を増やすから――」

「おいバカっ! よせ! 聞こえたらどうする気だ!」

「あ、すまない……」


 もう遅いだろ。丸聞こえだったぞ。もうアンタらの王の耳に確実に入ってるぞ。だって側近の人、すげぇ怖い顔してんだもん。

 

「……だとよ。もっと国民のことを考えてやれよ?」

「…………」


 やべ、怒らせたか……?


「……俺みたいな庶民には王の苦労なんて分かんねぇけどよ。……でも、自分の兵だろ? テメェの命をこいつらは自分達の命をかけて、お前を守ってくれるんだろ? なら装備もいいやつやれよ。こんなボロボロの杖じゃ、普通の魔法使いなら自分の身も守れねぇだろ。……その点、お前のその鎧と剣はいいもんだな。自分だけいい装備なんだ、身を守るにはピッタリじゃねぇか」


 って誰が普通じゃない魔法使いだよ。


「……お前の言う通りだ柊」


 案外あっさり認めるんだな。

 

「だが、これもお前の言う通りだ。……庶民に王の苦労などわかるまい」

「……ああ、そうかよ。悪かったな、出しゃばってよ」


 こんな木製の杖じゃ鎧を来たアレンに致命傷を与える事は出来ないだろう。なら俺のやる事は一つだ。

 

「はああああああああああっ!」

 

 アレンが勢い良く真っ正面から突っ込んで来た。

 

(やっぱりそう来たか。こいつ俺の事舐めてやがるな)

 

 隙だらけの大振りな一振り。避ける事は出来る。しかし、ここで逃げてはアレンは実力不足と断定し、俺を再び牢屋に入れる事だろう。俺がそれを嫌なのを知って、コイツはその一撃を俺は避けないと考えている。でなければ、こんな隙だらけの一撃を仕掛けてくるはずが無い。

 

(だったらお前の一撃、避けないでやるよ……!)

 

「えいっ」

「――なっ!?」

 

 バキッという音を立て、俺は杖を両手で折った。


 アレンは驚いて目を丸くする。それもそうだろう。いくらボロボロの杖といっても、杖であることには変わりない。それは魔法使いにとって、それが無ければ戦うことすら出来ない程のモノだ。それをあろうことか、目の前の魔法使いはせっかく手に入れた杖を自ら折ったのだ。


「なにぃぃぃ!? お、お前っ! 一体なにがしたいのだっ!?!?」

「何って、お前を倒すんだろうが」

 



 《【魔法使いの最終手段】を発動しました。これより十秒間物理ダメージが五千パーセント上昇します》

 

(十秒か。十秒あれば十分だ……!)


 

「くらいやがれぇぇぇぇぇぇぇ」

 

 俺は勢い良く斬り掛かるアレンの剣を(すんで)の所で避け、アレンの腹にボディーブローをお見舞した。

 

 《【魔法使いのとっておきLv2】を発動しました。物理ダメージのクリティカル率を百パーセント、および十パーセントのダメージが加算されました》

 

「がはっ……なに……何故魔法使いにこれ程の力が…………」

「……舐めてかかるからそうなるんだ」

「ぐっ…………………」

 

 アレンは腹を抱えながらその場で意識を失った。

 

「アレン様!? 医療兵を呼べ! アレン様を今すぐ治療するのだ! 急げ!!」

「は、はい!!」

 

 黒のスーツを着た者が大きな声を上げた。アレンの側近の者だ。

 

「……柊様。貴方の勝ちでございます」

「ああ」

「しかし、今回アレン様はまだ実力を発揮されておりません」

「ああ、だろうな」

 

 うちの王は舐めて掛かかったから負けた、と言いたいのだろうこの金髪スーツの女は。多分執事ような役割を任された者だろう。俺たちが戦っている時、ずっと無言で見守っていた。その顔は勝ちを確信した顔だった。それ故に自分の仕える王が負けたのが気に食わないのだろう。しかも俺のような例外の魔法使いに。

 

 だが、俺は気付いてた。スキル《ミスディレクション》を発動していた時、アレンは姿は見えていないが、歩くたびに舞う埃で俺の姿を捉えていた。……だがもう一人、俺を確実に捉えている視線があった。……多分この女だ。俺がこの女を見た時、コイツと一瞬目があった。


 油断できないのは王じゃない。この女だ。


「……どうぞどこへでも。貴方の罪はもう何もありません。これより先は私達がアレン様の治療にあたりますので、ここに居られると迷惑です」

 

 なんだえらくはっきり言うなこの女。

 

「ああそうかよ。じゃあな……それと、あんたのアレン様にも悪かったと伝えてくれ」

「……チッ……かしこまりました。申し伝えておきます。早く消えて下さい邪魔です」


 この人、美人なのに口悪いな。その悪い口調で全部台無しだ。

 


 俺の戦闘をふざけた戦い方と思う者もいるだろう。だが、誰に何と言われようと、これが俺の戦い方である。


 こうしてアレンとの戦いは終結した――。

 しかし、俺にはまだやることがる。むしろそれが一番重要だ。 



 

 【レベルが五十に上がりました】』

 

 【スキル:『イリュージョン』を獲得しました】

 

 スキル『イリュージョン』

 ・MP消費ゼロ 使用者の望んだ事象を使用可能。

 

  

 ◇◇◇

 

 

 

 《(ひいらぎ) 奏多(かなた)

 Lv.50

 

 HP【6000/6000】 MP【0/0】

 

 STR【500】 ATK【500】

 

 VIT【50】 DEF【50】

 

 INT【50】 RES【50】

 

 DEX【50】 AGI【50】

 

 LUK【50】

 

 アビリティ:【不器用な魔法使い】

 アビリティ:【魔法使いのとっておき】

 アビリティ:【魔法使いの最終手段】

 アビリティ:【魔法使いの掟破り】

 スキル:【ミスディレクション】

 スキル【イリュージョン】

 装備:【戦士のピアス】

 

 

 ◇◇◇

 

 

 【不器用な魔法使いLv2】

 ・与える物理ダメージ3倍

 【魔法使いのとっておきLv2】

 ・物理ダメージのクリティカル率100%+10%ダメージ上乗せ

 【魔法使いの最終手段】

 ・杖所持→未所持になった場合のみ、10秒間物理ダメージ5000%上昇

 【魔法使いの掟破り】

 ・魔法使いに与える物理ダメージが500%上昇し、魔法使いから受ける魔法ダメージを0にする。

 

 スキル【ミスディレクション】

 ・【MP消費0 相手の視界から一時的に消えることが出来る。

 ※ただし、相手との力量で効果変動

 

 スキル『イリュージョン』

 ・MP消費0 使用者の望んだ事象を使用可能。

 

 

 【戦士のピアス】

 ・物理ダメージ5%上昇

 

 

 ◇◇◇

 

 

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