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悪魔の殺し方

団子屋で食事をしている男。

甘いものを食べ、腹を満たしていると。


「おい店員さん。可愛いな。今夜は俺と遊ぼうぜ」

「こ、困ります」

「良いじゃないかよ。なぁ」

助けてあげたいけど、あの男が見つかるまで騒ぎを起こす訳にはいかないからな。


「人が下手にでたら調子乗りやがって!!お前に拒否権なんてないんだよ!!」

男が店員の手を思いっきり掴んだ。

「痛い!!」

騒ぎになるとか言ってられない。助けないと。

店員を助けようと立ち上がった瞬間。


「やめろ。目障りだ」

長身の男が騒ぎを起こしてる男の腕を掴んだ。

「痛えじゃねぇか!!ぶっ殺すぞ!!」

騒ぎを起こしてる男が持っていた刀で男の脇腹を斬りつけた。

「きゃーーーー!!」

まじかよ……。とにかく助けないと!!

俺も手元にあった刀を持ち、応戦しようとすると

「……お前は悪魔を知っているか?」

「はっ。急になにを言って」

「呼び方はなんでもいい。自ら悪魔と名乗り出した訳でもない。

人間が自らによく似た。けれど根本的に違う生命体のことを勝手にそう呼び始めただけだ」

「だからなんの話を!!」

「察しの悪い男だ。自己紹介をしてやっているんだ」

「……な、なんで!?傷が治って!!」

「悪魔を倒すには専用の武器がいる。こんな刀でつけた傷など、一瞬で治ってしまうぞ」

長身の男の言葉通り、結構深い傷だったのに綺麗さっぱり治っていた。


次の瞬間、長身の男が片手で投げ飛ばした。

「まだやるのか?」

「ひ、ひい。化け物ー!!」

男は逃げていった。

「……化け物か。言い得て妙だな」


「あ、ありがとうございました」

「構わない。目障りだっただけだ。いつものを頼む」

「かしこまりました。少々お待ちください」


いやー。すごいものを見たな。傷が一瞬で治るなんて奇術の類か?

体格なら向こうの方が良さそうだったのに、片手で投げ飛ばすなんて。

顔もすごく整ってるし、神様は不公平だな。

男の顔をまじまじと見ていると、左目の下に3つのホクロを見つけた。

それは俺が探している男と同じ特徴で。


「……見つけた」

嬉しすぎて叫びたかったが、気づかれる訳にはいかない。

そーっと近づいて針で刺し、血をもらおう。

この男の血が必要なんだ。

真後ろにいき、首を針で刺そうとした瞬間、男の持っていた刀の柄で首を思いっきり殴られた。


……やばい。意識が。







妻の夢を見た。

妻は綺麗な女だった。

家事もよくこなし。優しく。俺にはもったいない妻だった。


だから離縁したかった。

早めに離縁すれば、俺なんかよりもっと良い男が見つかるはずだ。

だからあえて冷たくした。俺に愛想をつかして出て行かせるために。

どれだけ冷たくしても、妻は変わらず優しかった。


椿も俺のことを……。なんて有り得ないことを夢見てしまうほどに。

違う。こいつは誰にでも優しいんだ。

困った人がいたら平等に手を差し伸べてしまう。俺みたいな人間とは根本的に質の違う人間なんだ。

ガキの頃から喧嘩ばかりしてきた俺みたいな男はお前の隣にいたらいけないんだ。お前にはもっと相応しい相手がいるはず。



ある朝仕事に出かけようとしていたら

「今日はなんの日かご存知ですか?」

と聞かれた。

考えてみるがなにも思いつかない。

「……なんだ」

「今日で私達、結婚して一年なんです」

……もうそんなに経つのか。一年も続けるつもりがなかったから、意識していなかった。


「幸せな時間というのは早く過ぎてしまう物なのですね」

……そうなのかもしれない。

でももう終わりにしないと。俺なんかのためにこれ以上時間を使わせられない。


「……くだらない。たった一年共に過ごしたからなんだっていうんだ」

「……そうですよね。申し訳ありません」

傷ついた顔をした妻の顔を見て心が痛む。

嫌。これでいいんだ。自分から出て行かないなら、いっそこのまま追い出して……。


「生涯を共にするというのに。たった一年で喜ぶな」

……なにを言ってるんだ俺は。


「……うふふ。そうですね」

そんな嬉しそうな顔をしないでくれ。

本当にそうしたくなってしまう。


「でも今日はご馳走を用意して待ってますね」

「……そんなことしなくていい。……君の料理はいつも美味しいから」

「……うふふ。貴方今日はどうしたんですか?悪い物でも食べさせてしまったかしら」

「な!?そんなんじゃない!!……ただ……」

「ただ?」

「……もう少し夫婦らしくしてもいいかなと思っただけだ」

「なにをくだらないことを言っているんですか」

……やっぱり今さらもう遅かっただろうか。


「夫婦に夫婦らしいもなにもないでしょう」

「……でも俺は君に幸せになって欲しい」

「あらあら。これ以上幸せになったら溶けてしまうかもしれませんね」


「……仕事に行ってくる」

「でもそうですね……。夫婦らしいことですか。今晩は鰻にしましょうか」

「な!?俺はそんなつもりで言ったんじゃ!!」

「あら。私も特別な意味を持って言った訳ではないのですけど、なにを想像されたのですか?」

「もういい!!勝手にしろ!!」


「うふふ。行ってらっしゃい」

「……行ってきます」


……無駄な時間を過ごしたのかもしれない。

俺なんかがと自分を卑下にする暇があったら、彼女を幸せにする方法を考えた方がよっぽど有意義な時間を過ごせたのかもしれない。


……今からでも間に合うだろうか。




仕事が終わり、すぐに家に帰った。

たまには家事でも手伝おうか。プレゼントでも買いに行こうか。

「ただいま」

いつもはすぐ出迎えてくれるのに、しばらく待っても声すら聞こえてこなかった。


……まあ、ご馳走を作るとか言っていたし、買い物にでも行っているんだろう。


そうだ。そうに違いない。

頭ではそう思うのに、心臓が違うと脈打った。

冷や汗をかいて気持ち悪い。

なぜだろう。なんの根拠もないのに。もう君に会えない気がする。


俺は玄関を出て走った。

早く君の顔を見て安心したい。おかえりと言って欲しい。


でもどこに行けば会え……『今晩は鰻にしましょうか』

魚屋だ。魚屋に行ってみよう。




「らっしゃい。らっしゃい。安いよー」

「おい。俺の妻が来なかったか」

「ん?ああ。数時間前に鰻買いに来たな。今日はあいにく置いてないって言ったら、隣町まで行くって言ってたけど」

「教えてくれてありがとう」


俺は隣町まで走った。

隣町まで行っているなら、まだ帰ってなくても別に不思議じゃない。

きっと俺の取り越し苦労だ。

そうに違いない。……そうであってくれ。



隣町についた。

いつもは賑わいをみせている町なのに、人の気配がまるでなかった。

……嫌な予感がする。

「……探さないと」


町を走っていると、だんだんと嫌な匂いが漂いだした。

……まるで血の匂いみたいな。


さらに走ると死体の山が築かれていた。

「おぇ……」

思わず吐き出してしまった。

なにが。なにがあったんだ。嫌。そんなことはどうでもいい。早く。早く見つけないと。



  


あの着物は……。

妻の後ろ姿が目に入った。

椿(つばき)!!」

妻の名前を叫んだ次の瞬間、妻が倒れた。


「椿!!椿!!」

駆け寄ると胸が血まみれだった。

妻の目の前にいた男に目を向ける。

「お前が!!お前がやったのか!!」

「……だったらどうする?僕を殺す?」

「殺してやる!!」

腰に下げていた刀で男に斬りかかるが、するりと避けられ、蹴り上げられた。

「がっ!!」

普通の人間の力じゃない。こいつ一体何者なんだ。


「……あなた」

「椿!!椿!!よかった!!生きてて!!」

急いで駆け寄り、抱き寄せた。

「私はもう長くないです……。逃げてください。この男は普通の人間じゃない。……がはっ」

椿が吐血した。

「わかった!!わかったからもう喋るな!!絶対に助けるから!!」

「……私が死んだら私のことは忘れて、早く再婚なさってくださいね。貴方は幸せにならないといけない人だから」

「死んだらなんて言うな!!絶対!!絶対に助けるから!!」


「ふーん。どうやって助けるの?」

男が俺の足を思いっきり踏み付けた。

ボキッ!!バキッ!!ボキッ!!

骨の折れる音が響き渡った。


「あはは。やっぱりいいね。目の前にいる家族を助けられない人間の顔。そうだよ。家族を助けるのは簡単じゃないんだ。だから父さんだって……」


「貴方の妻になれて私は幸せでした」

言葉を紡ぐ度に椿の目は閉じていった。

「駄目だ!!目を閉じるな!!生きてくれ!!」

「どうか……幸せに…………なって……くだ……さ……い」

椿の目が完全に閉じた。

「あ、死んだね」

男の感情のない声に哀しみが怒りに変わる。

「お前は!!お前だけは!!絶対に許さないからな!!」

「許さないって言われてもな。君には僕のこと殺せないし。

…………いや。待てよ。こいつを上手く使えば……。


あはは。どうしてこんな簡単なことを今まで思いつかなかったんだ!!

いいか。僕の顔をよく見ろ」

顔を掴まれ無理矢理、男の顔を見させられた。

「左目の下に3つのホクロがあるだろ。首都に行って同じホクロがある男を見つけて、その男の血をもってこい」

「……なんで俺がそんなこと」

「そいつの血を持ってきたら、自殺でもなんでもしてやるよ。

まぁ嫌なら無理強いはしないよ。お前のあの女への愛はその程度ってだけだし」

「お前!!」

「じゃあね。期待せずに待ってるよ」

「待て!!」

少しずつ目が開けられなくなった。

折られた足から流れる血のせいだろう。

意識を失ってる場合じゃないのに!!


俺の目は完全に閉じてしまった。



目が覚めた時、俺は自分の家にいた。

まるで何も起きなかったかのように家はいつも通りだ。

ただ一つ椿がいないことを除いて。


そのただ一つさえあれば、なにもいらないのに。


泣いたってなにも変えられないのに、涙が止まらた。


何時間泣いたんだろう。流す水分すら無くなった。

このまま餓死してしまおうか。

あの世にいけば椿に会えるのだろうか。




今の俺には3つの選択肢がある。


『そいつの血を持ってきたら、自殺でもなんでもしてやるよ』


○復讐のために生きるか


○このまま死ぬか。


『……私が死んだら私のことは忘れて、早く再婚してくださいね。貴方は幸せにならないといけない人だから』


○椿の望みとおりに生きるか。






人として一番正しいのは3つ目だろう。

死んだ人のことをどれだけ思っても生き返らないし、この世に生を受けた以上寿命が来るまで生きるのが正しいことだ。

それなら椿のことを忘れて、新しい女と幸せになる努力をするべきだ。


2番目に正しいのは2つ目だ。

あの世があるかは死ぬまでわからないが、もしもあるなら今度こそ椿を幸せにしてやれるかもしれない。


一番間違っているのが1つ目だ。

復讐なんてなにも生まないし、時間の無駄だ。

人殺しが約束を守ってくれる保証もない。

絶対にこんな選択しちゃいけない。


わかってる。わかってる…………でも。



 

俺は刀と少量の水と食べ物だけを持って、家を出た。





間違いだと分かっていても、椿を失った今の俺には正しい道なんて選べない。











「……お……お……ろ」





……なにか声が聞こえる。


「お……おきろ」


「おい。起きろ」


「え……。うわっ!!」

急いで体を起こす。

どうやら男の人の膝の上で寝ていたようだ。

……誰だっけこの人。

脳がまだ半分寝ていて思い出せない。


……あ、そうだ!!団子屋の娘を助けてた!!

でもなんでこの人の膝の上で寝て……。

思い出そうと男の人の顔を見ると、特徴的なホクロが目に入る。


そうだ!!この男の血を手に入れないと。


「……目も覚めたようだし、俺はもう行く」

「え、あ、はい。ご迷惑をおかけしました」

「……構わない。時間など腐る程あるからな」

男が背を向け歩き出した。

次こそは血を手に入れる!!


俺は再びそーっと近づき、針で刺そうとした瞬間、針を持っていた手を掴まれ、地面に押しつけられた。


「痛い!!痛い!!痛い!!関節外れる!!」

「一度だけなら見逃してやろうと思ったが……。

このまま腕の一本ぐらい折っておこうか」

「嫌ー!!痛いー!!助けてー!!」

必死に叫んでいると手を離してくれた。


「ほ、本当に折れるかと思った……」

「それで何故、俺の血を狙ってる」

「そ、それは……。その……」


こいつがあいつの仲間の可能性だって0じゃないし、正直に答える訳にはいかない。

……なにか言い訳をしないと。


「そ、その。俺、鍼の勉強しててさ!!痛くないように人を刺せるか試してたんだ!!巻き込んで悪かったな!!」

……さすがに無理があるよな。

でも初対面の人を針でいきなり刺す言い訳なんて思いつかない……。


「……そうか。わかった」

え、嘘だろ!?信じたのか!?

こいつ意外と馬鹿……。

次の瞬間、首に水が垂れた。


……いや。違う。これは血だ!!

そーっと目だけで右を見ると、刀が首に当たっていた。


「正直に答える気がないということだな」

刀がさらに首に食い込む。

「答えろ。何故、俺の血を狙っている。自分で飲むのか。誰かに頼まれたのか」

「じ、自分で飲む……」

咄嗟に嘘をついた。


「嘘を吐くな」

「痛っ!!」

刀がさらに首に食い込む。

これ以上斬られたら命が危ないと、本能が警告する。


「……何千年生きたと思っている。人間の嘘など目を見ただけでわかる。最後の質問だ。誰に頼まれた。答えろ。俺だって無駄な殺しは避けたい」

「な、名前は知らない!!本当だ!!」

「……性別は?」

「男だ」

「身長は?」

「だいぶ高かった。あんたよりも高かったと思う」

「……なにか身体的な特徴はないのか?」

「左目の下に3つのホクロがある!!あんたと同じだ!!」

「……なるほど」

男が刀を鞘にしまった。


……し、死ぬかと思った。


「……あ、あいつとどういう関係なんだよ」

再び斬られないように、数歩後退りながら聞いた。

「……俺の息子だ」

「え!?……全然似てないけど」

「……あの子は母親似だからな」

「な、なんであんたの息子はあんたの血を欲しがってるんだよ」

「……お前には関係ない」


いや。あるだろ。大ありだろ。

むしろ俺に関係なかったら誰に関係あるんだよ。

と言ってやりたがったが、再び首を斬られたくなかったので我慢した。


「ついてこい。首の手当てをしてやる」

お前が斬ったのになんでそんなに上からなんだよ。と思ったが、再び首を斬られたくなかったので黙ってついて行った。



ついた先は小さな病院だった。

「手当てしてやってくれ」

町医者に男が言った。

「うわ。なんだこりゃ。えらい深い刀傷じゃねぇか。兄ちゃんこんな傷どこでつけたんだ?」

「……俺がつけた」

「お前がか!?なにやってんだ!!ちゃんと謝ったのか!?」

「……謝ってない」

「なにしてんだ!!ちゃんと謝れ!!」

「……ごめんなさい」

「兄ちゃんこいつもこう言ってるし許してやってくれな。こいつも悪気はなかっただろうし」

「悪気なく首斬られる方がよっぽど怖いよ」


手当てをしてもらった。

「じゃあな。また来いよ」

「……病院に行かないで済むなら、それに越したことないんじゃないですか?」

「なに言ってんだ!!それじゃ商売あがったりだ!!自傷してでもこい!!」

駄目だ。この医者。


「お代はここに置いとくぞ」

「あ、いや。自分で払うよ」

「……俺が斬ったのにか?」

「……確かに」

そうだ。俺が払ってやる義理はないんだ。斬られたんだから。

「帰る。ついてこい」

「あ、ありがとうございました」

医者にお礼を言って男についていった。

「次はもっと治療費分捕れる大怪我してこいよー」

医者がとんでもないクズ発言をしていたが、無視して病院を出た。


病院を出てしばらく歩いたが、何もないところで突然立ち止まった。

「俺の血を渡して報酬が得られると言われたならその倍額払う。二度と俺の前に姿を現すな」

「違う!!金なんかのためじゃない!!ふざけるなよ!!」

「……じゃあなんだ」

「お前の息子に俺の妻は殺されたんだ。お前の血があればお前の息子を殺せるって言われて……。正直意味不明だけど!!意味不明でも信じないと……。

椿のいない世界で生きていけないんだ……」

「……そういうことか」

「なあ、教えてくれよ!!お前らはなんなんだよ!!血で殺せるってどういう意味だよ!!」


「……俺たちは悪魔と呼ばれる存在だ。魔術のようなものを使う悪魔もいる」

「……悪魔?」

「勝手に呼ばれ始めただけだがな。自称した訳じゃない。

悪魔は基本的に人間を食べる。人間以外の食物も食べられなくはないが味がしないし栄養も少ないからな」

「な!?人間以外の食べ物で生きていけるならそうしろよ!!人をなんだと思って!!」

「人間だって農作物だけで生きようと思えば生きられるのに、牛や豚を食うだろう。それと同じだ」

「人間は家畜と一緒だって言いたいのかよ!!」

「……そういう意味で言ったんじゃないが……。この話はどこまで話そうと並行線だ。続きを話すぞ。

悪魔は人間の五倍ほどの筋力があり、基本不死身だ。身体を切り刻まれようと脳天を銃で撃たれようとすぐに身体は再生する。

餓死するために何百年断食したとしても死ねない」

「はあ!?不死身!?じゃあ、どうやってあいつを殺せば!!」

「基本と言っただろう。一番愛する者の血を飲めば死ねる。悪魔が誰かを愛することは稀だがな」

「……じゃああれか。大好きなお父さんの血を持ってこいと俺は頼まれたわけか?」

「……そうなるな。何千年も会っていないし、あの子が俺を愛しているとは思えないがな」

「……愛ってえらく抽象的だな。もっと明確な基準はないのかよ」

「ない。本人が愛を自認していても死ねないこともたくさんある。神様とやらがいるならそいつの物差しで決まるんじゃないか」


「……お前も人間を食うのかよ?」

「俺はもう何百年も食っていない。人間と同じ物を食している」

「……味しないんじゃなかったのかよ」

「百年程食えば慣れる。

次に悪魔の繁殖方法だ。大抵の悪魔は元人間だ」

「は!?どういうことだよ!!」

「人間が悪魔の血を飲むと悪魔になる。長く生きた悪魔の血を飲む程、強い悪魔になる」

「ん?じゃあ、お前の息子って」

「息子は人間的な繁殖行為によって生まれた。そういった行為をする悪魔は稀だがいる」


「……お前は元々人間なのか?」

「ああ。そうだ」

「んん。頭がこんがらがってきた」

「あと少しで終わる。頑張れ。

俺は悪魔を捕まえる機関に所属している」

「……悪魔なのにか?」

「ああ」

「でもどうやって捕まえるんだよ」

「普通の武器でどれだけ攻撃しようと、すぐに回復するが、悪魔の血を多量に含んだ武器で攻撃すれば、回復を遅らせることができる。それでも時間が経てば回復するがな。回復する前に悪魔の血を多量に含んだ拘束具で拘束するんだ」

「わ、わかったような。よくわからないような……」

「二度説明するつもりはない。なんとなく理解していればそれでいい。

本題に入るが、俺はお前に血を渡すつもりはない。息子を万が一にも殺させる訳にはいかないからな」

「な!?あいつは何人も人を殺してるんだぞ!!」

「それでも俺にとっては息子だ。殺させる訳にはいかない」

「ふざけるなよ!!」

俺は隠し持っていた懐刀で男に襲いかかったが、軽々と避けられてしまった。

「クソッ!!」

「……だが自分の息子に妻を殺された男を放っておくこともできない」

「……じゃあどうするんだよ」

「俺の側に居たいなら居ろ。近くにいる時間が長ければ長い程、俺の血を取れる機会は多い。まあ、死ぬ可能性も高いしあまりおすすめは……」

「お前の側にいる!!あいつを殺せるなら俺は死んだっていい!!」

「……先程も言ったが俺の血を飲んでも、息子が死ぬ可能性は限りなく低いんだぞ」

「関係ない!!どうせ復讐以外に生きる意味もないんだ!!僅かにでも可能性があるなら、俺はそれに賭ける!!」

「……そうか。好きにしろ。自分の身は自分で守るんだぞ」

「わかってる」

「今から任務で悪魔を捕まえに行く。お前も来るか?」

「ああ。もちろん行く。他の悪魔との闘いでお前が血を流すかもしれないしな」

「たとえ血を流してもお前にくれてやるつもりはない」

「言ってろ。死ぬ気で取ってやる」


「……そういえばお前。名前はなんだ?側にいる者の名前を知らないのは何かと不便だ」

谷崎紡(たにざきつむぎ)だ。……お前は?」

「俺は創史(そうし)だ。苗字は忘れた」

「……普通に人間みたいな名前だな」

「まあ、元人間だからな。……これから一応よろしく頼む」

創史が右手を差し出した。

「……まあ、そうだな。お前の血を取るのも大変そうだし。それまでは……よろしく」

握手を交わし俺たちは歩き出した。


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