罪と罰
「ぼく、リサさんの事っ!」
急に突風が吹く。ランは何かを伝えようとするがなんて言っているのかわからない。
「え?なんて?!」
「だから!リサさんがっ!」
今度は鐘が鳴った。ランの声は再びかき消される。
「だから、なんて?!」
「リサさん!」
ランはいきなり抱き寄せてくる。
「え?!」
「リサさん、背中にカブトムシついてましたよ?」
「は?」
ランの手にはカブトムシがいた。
つまり、抱き寄せられたのではなく、カブトムシをとっただけだった。
「ふっざけんなーー!!」
とりあえずランを殴った。
「何故ぼく殴られてるんですぅ?!」
その後、授業には遅れたが教室になんとか入れた。
☆☆☆☆
夜、リサはベッドの中でカブトムシをとるためとはいえ抱き寄せられた事が忘れられなかった。
「私、本当に……いや、ないな。」
「リサさーーんっ!」
夜中にも関わらずどんどんと扉を叩く音がした。仕方なく眠い目を擦りながら扉を開ける。
「リサさん!大変なんです!」
「どうした。自称神。」
「それが……」
「?」
ランの後ろに誰かの姿が見える。
「貴方が佐々木リサね!」
そこにいたのは小柄な女の子だった。
「誰?この子?」
「ぼくの部下の…」
「ナタリーよ。貴方のせいで天界は亡者達で溢れ返っているのよ!!」
「!」
「佐々木リサ!貴方は天界に混乱をもたらした!その罪、ここで償ってもらうわ!」
「!?」
ナタリーの手に大きな剣が現れる。あっという間にその剣でリサは貫かれ……。
「リサさん!」
かわりにランが貫かれてしまった。
「ラン!?」「ラン様!?」
「あー、いてて、ぼくじゃなかったら死んでますよ?神だから再生するけど…」
2人はランへと駆け寄った。
「ラン、何してるのよ!」
「そうですよ!ラン様!このような人間を庇うなど、一体どうされたのです!?」
「佐々木リサさんはぼくが転生させた亡者、責任はぼくにあります。ナタリー、帰ってください。」
「そう言う訳にはいきません!天界では、ラン様の穴埋めでにっちもさっちもいきません!」
「それはリサさんを罰する意味がありません!」
「何故です?」
「リサさんを罰したところでぼくが天界に戻れるわけではありません!なので、リサさんを罰する意味はないんです!」
「ラン様!そうはいきません!天界ではこの混乱を起こした佐々木リサに天罰を願う亡者まで現れております。これは皆の願いなんです!!」
「だから!責任はぼくにっ…!」
「わかったわよ。責任とるわ。」
リサは1歩前へ出る。
「往生際はいいようですね。では、…」
ナタリーは剣をもう一度出してリサを貫こうとする。
「やめろ!!」
ランは再び庇った。
「大丈夫よ!ラン、私はっ」
「大丈夫じゃないんです!あの剣はただの剣じゃなくて、貫かれると輪廻できなくされる剣なんです!神のぼくには効きませんけど!」
「……いいわよ。」
「「は?」」
「輪廻できなくなってもいいわ!だから責任をとる!!」
「リサさん!ダメです!!ぼくがリサさんを小馬鹿にしなければ、こんな事にならなかったはずです!責任はぼくにあります!!」
「ラン、……でも、私…」
「ラン様。私は神々からの要請で地上に派遣されたのです!この者の処罰は既に決まってしまったのです!ですから……」
「なら!ぼくを罰してください!」
「ラン様?!」
ナタリーはそれが信じられないと言うように目を丸くした。
「リサさんが罰せられる事を止めます!」
「何故ですか?!ラン様!!この人間に一体何故肩入れするのです!?」
「……ぼくは、確かに性格悪いし、地上では何もできないし、リサさんを怒らせてばかりです。でも、何もできないぼくでも、リサさんは隣にいてくれて、いつも笑ってくれています!!だから、リサさんを守りたいんです!!」
「……ラン。」
「ラン様、………わかりました。」
ナタリーは手にもった剣を収める。
「堕ちたのですね。」
ナタリーはそう呟くと大きな鎌を召喚した。
「零落した神よ!では、ここで死になさい!!」
大鎌はランへと無慈悲に振り下ろされた。
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