お弁当
「あれ?リサさんを攻略するんじゃないんですか?なら、ライバルのぼくに進めるよりクリス王子が追ったほうがためになるんじゃないですか?」
「……認めたくないけど、きっとリサさんが追って来てほしいのは君だ。だからリサさんのために君に追って行って欲しい。」
「……」
しばらく無言になった後、ランはリサ追った。
☆☆☆☆☆
リサは1人、校舎裏で塞ぎ込んでいると1人の少年がやってきた。
「リサさん」
「もー、何よ!別に追ってきて欲しくなんか…」
そこにいたのはランではなかった。悪役令嬢リアの執事の少年だった。
「えと、貴方確か、リー君?」
「はい。」
「どうしてここに?」
「あの、僕はいつもここで昼食をとってて…」
「あら、お邪魔しちゃったかしら?すぐに立ち去るわ。」
「あ、いえ、大丈夫です。1人でいるより嬉しいです。」
「そっか、じゃあお言葉に甘え…」
ぐぅーーーっ。
そうだ、お弁当ちょっとしか食べれてなかったんだっけ?
「……あの、良かったら僕のお弁当半分食べます?」
「え?!いいの?!」
「はい。どうぞ。」
「ありが……」
渡されたのはご飯だけのお弁当箱。
「ねぇ?!半分は半分でもこれはちょっと…?!」
くすすっと、笑われる。
「冗談ですよ。」
「もー、びっくりしたわよ。」
リーはお弁当箱のご飯を半分にしてとっていくとおかずのお弁当箱の半分をくれる。そしてフォークを貸してくれた。
「フォークの予備なんてよく持ってたわね?」
「ああ、フォーク忘れた時ようにいつも持ってるんですよ。」
「へー。」
2人は仲良く話しながらお弁当を食べた。
「ねぇ、これって貴方が作ったの?」
「はい。そうです。」
「美味しい!」
「ありがとうございます。」
食べ終わると2人はじゃあと別れる。角に差し掛かった時だった。何かに引き込まれた。
「?!」
「彼を攻略するんですか?」
「え?!」
リサを引き込んだのは真剣な顔をしたランだった。
「え、いや、そういうつもりじゃ…」
「ぼくのお弁当より美味しかったんですか?」
「あ、いや、それは…」
「……」
しばらく沈黙が続く。そしてランは手のひら返しのようにニッコリ笑った。
「おめでとうございます。」
そう言って拍手してくる。
「やっと攻略対象が決まったじゃないですかー」
「え、いや…」
「ぼくも一安心ですよー。」
「ちょっと…」
「やっと天界に帰れますし、万々歳ですねー!」
ニコニコと笑っているのにその声は冷たく凍っている。全く笑っているように感じない。
「ラン!勘違いしないでよ!私はっ…!」
「勘違い?何が勘違いですか?」
「だから!リー君ルートを選んだつもりはっ…」
「……いい加減にしてくださいよ。」
「え?」
ランに腕を掴まれ壁に押し付けられる。
「いっ…」
強く掴まれた手には痛みが走った。
「ぼくは早く天界に帰って死者の魂を裁かなければならないんです!リサさんのつまらない願いのせいでぼくは迷惑してるんですよ!!」
「…ラン、痛…」
「……」
ランは手を離す。
「……すみません。つい、カッとなってしまって……」
「……ラン。私は……」
「……もうすぐ鐘が鳴ります。いきましょう。」
「まちなさーーーい!!」
背を向けて教室へと向かおうとするランへと突進した。
「?!」
ランはバランスを崩して地面に転がる。
「ふっざけんな!!」
そう言ってリサは床ドンする。
「ひぇ?!リサさん?!」
「何勝手に怒って勝手に話し終わらせてるのよ!」
「え、あ、いや、でも、リサさんだって授業遅れると困るでしょ?」
「ううん、それより謝るわ。ごめん。」
「え?何に対してですか?」
「私のせいで地上に降りる事になって、仕事できなくなったから…その、ごめん。」
「………リサさん、ぼく……」
「?」
「ぼく、リサさんの事っ!」




