きたねぇ花火
「リーサさぁん!」
コンコンコンとドアをノックされる。
「はいはい、なによ?」
仕方なく扉を開けてみる。
「デートしましょう♡」
「は?」
「今日花火大会があるそうなんです!ここで攻略キャラとの距離を縮めるチャンスですよ!?」
「今のところ攻略キャラと接点薄いんだけど?」
「何言ってるんですか?!ぼくとの好感度は上がりますよ!」
「いらね。」
バタンとドアを閉じようとする。だが、ランは隙間から入って来ようとしてくる。
「そんな事言わずにぃいいっ!」
「扉が閉じないじゃないっ!」
「いぃいいれぇえええてぇええくだっさいっよぉおおおお!」
圧に負けて扉を離すと勢いよくランが転がりこんできた。
「いってて!」
「いったぁ……もうっ!何してっ!」
顔を上げるとすぐそばにランの顔があった。
「リサさん、ぼく……」
殴った。
「なんで殴るんですか?!」
「近いからよ!」
「へー、そんな事言って、本当はぼくにドキドキしてるんじゃないですかぁ?」
ニマニマと笑顔のこやつを仕留めたい。殴ろうとした。だが、珍しく腕を掴まれる。
「本当は、ぼくのこと、好きになってきてるんじゃないんですか?」
なんていつに無い真剣なトーンで話される。
「そんな、わけ……」
「まあ、冗談ですけど、」
そう笑って手を離す。
「いいわよ!花火大会行ってやろうじゃないの!」
「そうこないと!では、五時に迎えに来ます!」
ランは部屋から去っていった。
「なんなのよ。あいつ、はぁ。」
☆☆☆☆
5時になり、ランは迎えに来てくれた。
「さぁ、いきますよー。」
「はいはい。」
渋々ついて行く。
「何か欲しいものとかありませんか?買いますよ?(学園長のお金で)」
「うーん、そうね、肉かな。」
「可愛くないチョイスですね。」
「うるさいわね!じゃあ、」
「じゃあ?」
「じゃあ、あんたを飼うわよ?」
「………いや、もう、それやめてもらえません?ぼくもうもらわれるの嫌ですから。」
「ふふっ、冗談よ!あんたなんてなんの役にもたたないし、」
「ぼくは、もらわれるより、もらいたい側です。」
そう言ってランはリサの手を握った。
「っ!」
「ここが天界ならいくらでも力使い放題なのにぃーー!ぼくだって、何かもらえる権利あってもいいじゃないですぅかぁあああっ!!不公平ですよぉおおっ!?」
「はは、どんまい。あんたは物カウントだから仕方ないわよ。」
「もー、れっきとした神なのにぃぃいいい!イケメンなのにぃいい!」
「中身が絶望的なぐらいハズレなのよね。」
「うっるさいなぁ!もうっ!そんなリサさんにはお仕置が必要ですね?」
「は?」
人混みの中、急に手を離される。そのまま、ランは先を歩いていった。
「ちょっと、待って……」
人混みに分けられて合流できない。しばらくして路地裏へと逃れた。
「もー、なんなのよ!あいつから誘ってきたくせに、居なくなるなんて!」
「へーい、ねぇちゃん、俺らと遊ばねぇ?」
「へ?」
リサはいつの間にか不良グループに囲まれていた。
「いや、あの、」
「いいじゃん、行こうぜ?」
「楽しいところに連れってやるよ。」
「結構です。」
「んだよ。誘ってやってんのに!」
「黙って来いよ!!」
「ちょっとっ!いやっ!離して!」
「なーに、してるんですか?」
「へ?」
「「は?」」
振り向くとそこにはランがいた。笑顔で。いつになく笑顔で。
「ほら、さっさといきますよ。リサさん。」
不良の手を解いて連れて行こうとする。
「ふざけんな!!このちびっ!」
だが、不良に殴られた。
「誰が、ちびだ!!?さっさとどいてください!」
「んだとゴラ?」
「ちょっと、大丈夫なの?!ラン!」
「リサさん、ここは」
「うん!」
「逃げましょう!!」
「はー?!」
手を引かれてそのまま逃げてゆく。 戦う流れではないのね!
「はあ、はあ、すみません。1人にさせてしまって……。」
「大丈夫よ。」
「どこか怪我とかしてませんか?」
「大丈夫。」
「リサさん、ぼく………」
ばーんっと、花火が上がった。
「え?なんて?聞こえなかった!」
「ぼく、リサさんの事……」
ばーんっ!
「え?私が?なに?」
「リサさんは」
ばーんっ!
「ちょっ、聞こえないって!」
今度は大声で言った。
「リサさん本気出してくださいよーー!戦えるでしょーー?!怪力なんですからーー!!って言ってました!!」
ばーんっ!
「たまやー!かぎやー!」
花火と一緒にランくんも打ち上げてもらいましたとさ。めでたしめでたし!
「めでたくないですよぉおお!!」




