第2話 過去
俺の母は流浪の民だった。
たまたま流れ着いたこの国で俺の父と結ばれたが、そこに愛があったのか分からない。
月日が流れて俺が産まれたが、母からは母親らしいことをしてもらった事が無い。
やがて母は行方をくらました。
それで父はその寂しさを埋めるために、他の女に手をだした。
けれどその女も、一か所には定住しない旅人だった。
父はそうとうその女に入れ込んだようだが、女の反応はつれないものだったらしい。
あれこれご機嫌をとろうとする父に、一切なびかない女。
次第に父は荒れるようになった。
無理やりその女を王宮に連れてきて、監禁するまでになった。
それでもその女に振り向いてほしかったのだろう。父は、度重なる洗脳教育を施して、見事にその女をものにした。
その結果、父がいないと何もできないような女になってしまったが、一緒にいられるだけで父は満足なようだった。
内面はどうでもよくて、見た目が良かったから、伴侶に選んだに違いない。
女は母になることなく、妻になる事もなく、一人の人間として存在することもない。
ただの意思なき操り人形として生き続けているのだから。
そんな過去があったから。
俺は、そんな父と女のようにはなるまいと思っていた。