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鳩の夢日記  作者: 伝書鳩
1/1

気付くと私は崖にいた。

草一本生えていない殺風景な鋭くv字型に尖った崖。空は晴天。そろそろ正午になるのだろうか、太陽が高く登っている。

崖の下にはゴツゴツとした岩が一面に広がっている。どこまでも、どこまでも広がっている。

 そこは、死んだ様に冷たく、静かだった。



 後ろで足音がした。

振り返ってみると、崖の先端から6歩ほど離れたところに友人のRがいた。

「よう、R。」

私はRに話しかけた。しかし返事はない。

「R?」

何度話しかけても返事はない………

どの位経ったのだろうか、ようやくRが口を開き、言った。

「お前は死に値する大罪を犯した。」

どういう事だ。私が何をしたというのだ。分からない。そもそも心当たりが無い。全くもって無い。

またRが言う。

「お前は死に値する大罪を犯した。」

「何なんだ、その大罪というのは。」

私がRに問うと、Rは壊れたレコードのように

「お前は死に値する大罪を犯した。」

と言う。その後も何度か会話を試みるも返ってくる言葉は

「お前は死に値する大罪を犯した。」

だけだった。



 日は傾き空が紅く染まった。

生暖かい風が頬を掠める。

ここには私とRの他には蟻一匹すらも居ない。

Rは話しかけても同じことを繰り返す。

話しかけなければ威圧的な目でこちらを睨んでくる。

ああ、この状況はいつまで続くのだろうか…

そう思った瞬間だった。

Rがこちらに向かって一歩、また一歩と進んできたのだ。押し黙り、威圧的な目で。

私は恐ろしくなった。逃げようと思った。だが、後ろは崖、逃げ道は無い。

Rが一歩一歩と近づくたび、私も一歩一歩と後退していく。

カラと音がした。何かと思い振り返る。そこには地面がなかった。既に私は崖の先端に追い詰められていたのだ。

Rは私の2歩ほど前に立っている。変わらない、威圧的な目で。

私は蛇に睨まれた蛙のようになった。

息が荒くなる。冷や汗が滲み出てくる。

そしてまたRは言う。

「お前は死に値する大罪を犯した。」

そしてもう一度。声高らかに。

「お前は死に値する大罪を犯した!」

そして叫ぶ。

「よって死罪に処する!」




肩のあたりに鈍い衝撃が走る。

背中に風を感じる。強く吹き上げてくる。

空が見えた。紅い、紅い空だった。

何が起こった、何がー

肩に受けた衝撃よりも遥かに強い衝撃が全身に走った。

全身の骨が折れる音がした。

皮が裂け、視界が赤く染まる。

薄れゆく意識。

私が最後に感じ取ったのは、Rの高い笑い声だけだった。

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