入院しちゃった1(昔話風)……… 発病
今年、脳出血を起こし約5ヶ月ほど入院したのですが、その時の状況やら、暇つぶしで書いたエッセイやらを投稿します。
まあ、暇つぶしに………
これはちょっと前におきた、幸が薄ければ頭も薄い、ある男の物語じゃ。
たいした話でも無い。
鼻くそほじくりながら聞けばよかろう………
昔、あるところには25年勤めた会社を辞めた、頭のうっすい男がおったそうな。
男に会社を辞めた理由を聞いても、「一身上の都合により」とだけ言って中々しゃべろうとしない………
だが、どうせたいした理由があるわけでもあるまい。
その当時、巷を騒がせているコロナウイルスが蔓延していてな。
そんな状況下で「バカな事を」と思われる方々もいるだろうが、ワシもまさにその通りに思う。
とにかく、その男は会社を辞めて、しばらくダラリとした生活をしていた。
好きな時に起きて、、好きな時に食事し、好きな事をして、好きな時に屁こいて寝る。
そんな自堕落な生活をして、男はストレスと言われるものから離れたと思っていたそうじゃ。
じゃが、何故か男の体重は減って、食も進まなかったらしい。
そして「次の職を探さなければ」と思いつつ、愚かな男は近所のパチンコ屋に足を運んでスロットを打っていたのじゃあ。
「これじゃあパチンカスと言われても仕方がないな」と自分で自分を嘲るようなことを思っていても、止める気分にはならなかったそうじゃ。
まあカスだからのぅ、そうじゃろうて。
あるとき、その愚かな男はいつものようにスロットを打っていると、右手が急に小さく震え出したのに気づくことになる。
そして徐々に力が抜けていく、腕がわずかにしか上がらないようになってしもうた。
男は何か変だと思い、もう止めて帰ろうと席を立ったのだが、すぐに右足の感覚も変に感じることになる、足を引きずるようになっておったのじゃ。
男は早く家に帰り休まねばと思い、その状態で足を引きずりながらも車に乗り込んだ。
この時点で右半身、右手も右足もほとんど動かなかったみたいなのじゃが、なんとか左手でエンジンをかけ、左の足でアクセルを踏み込む。
幸い意識はハッキリしていたみたいじゃが、事故の可能性が高いと思った男は、ハザードを点滅させながら、大通りをノロノロと進むことにした。
懸命なことよ、じゃがやはり愚かよのう、そこまでして乗る必要がどこにある?
まぁ良い………
最初の交差点を曲がれば、ほとんど車の通らない道に出る。
じゃが、交差点までが長い道のりじゃった。
実際、男は左の足でのアクセルワークもたどたどしく、アイドリングだけで車を進めていたのじゃ。
それでも何とか交差点を抜けて、男は自分の住む団地の駐車場に着くことが出来た。
この時には、右半身はまったく動かすことは出来なかったらしい。
男は左手でシャツの左ポケットから電話を取り出す。
家までの数十メートルの距離。
じゃが、そのわずかな距離を移動することなど出来ないほどに、男は気力を失っておった。
電話越しに家内を呼び出す。
「きゅう……… きゅうきゅっしゃ……… よんで」
この時、男の声は普段と比べたら発音がおかしかったらしい。
らしいと言ったのは、男は「言い難いな」とは感じていたが、キチンと言えていると思っていたからじゃ。
車のドアを開けて右足を出そうとするも、まったく動かない。
男は左手でズボンの膝の辺りを掴み、持ち上げ車外に右足を出す。
その時に家内が蒼白な顔で現れおった。
それに気づいた男は、たどたどしい言葉で自分の嫁に言ったんじゃ。
「いしきは、はっきりしていりゅかりゃ、だいぃじょうぶ。きゅうきゅうしゃ……… は?」
「十五分から二十分ぐらいで着くって」
「すこしめをつむる……… 」
「(病院に行く)用意するから」
嫁は会話ができたことで少し安心したのじゃろう。
そう言うと、一度家へ戻って行った。
「……… 」
気分が悪いことはなく、頭が痛いわけでもない。
「……… (参ったな)」
遠くに救急車のサイレンが聞こえた時、その男は心の中でそうボヤいた。
救急隊員が三名現れ、速やかに担架の準備をすると、その上へ私を運ぶ。
救急車の中に運ばれた時点で、隊員の一人は家内と話をし、一人は行き先の病院を探す。
そしてもう一人は私に意識があるのかを確認しながら、血圧を計り酸素マスクを取り付けた。
サイレンが鳴る
男を乗せた救急車は、サイレンとともに走りだした。
隊員の会話から、少し離れた病院に向かうらしい。
愚かな男は呑気なことに、「こうなると焦っても仕方がない」と、病院に着くまでの間、目を閉じることにしたんじゃと。
救急車が病院の敷地内に入ったところで、男は目を開く。
右手に力を込めてみるが、やはりまるで動かない。
救急車が止まると、ハッチバックが開かれ、速やかに病院内に移動する。
そこに若い小太りの医師と、別嬪の看護師さんが玄関口で待機していた。
救急車の担架から病院のに移し変えたあと、それからの動きは速やかだった。
「お名前と誕生日を伺ってもよろしいでしょうか?」
その看護師さんは、優しげな口調で質問をすると同時に、ペンライトの光を眼球に当て顔を覗き込む。
年甲斐もなく、男は鼻の下を伸ばしそうになる。
(別嬪さんだ、嬉しい。)
いや、そうではないじゃろうが………
別嬪さんではあるが、そういう事を言う余裕などないはずなのじゃが。
しかし、この男、次に驚く事となる。
看護師さんの動きが、それはそれは凄かったのじゃ。
体温や血圧、採血など一連のバイタルを計る動作において、まったく無駄が無い。
救急車内において、男が右腕を動かそうとし、まったくもって動かなかった時に、自分の腕を見ながら「まったく無駄のない、無駄な動きだな」など考えてたみたいなのじゃが。
あまりに独りよがりで恥ずかしい。
男はそんな感じで、ろくでも無いことを思っているものなのじゃが、看護師さんの動きは止まらない。
男に点滴をぶっ刺さしたと思ったら、あっという間にMRIの機械に放り込む段階までになった。
その段階で、その看護師さんは抜けたのだが、その時の、しょんぼりする男の何というメンタルの情けなさよ………
まあ良い、男の病名はMRI の結果から、予想どうりであった。
「脳出血」
こうして、めでたく入院される運びとなったそうじゃ。
この手の書き方って読む人を選ぶんよね〜
っていうか………自分で書いててなんだけど………
スベってない?