表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
母は傾国の悪女でしたが、わたしは平凡な幸せを、掴みたいのです~藤原薬子の娘、転生し妖魔と戦う~  作者: 高取和生@コミック1巻発売中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/30

鮮血

お読みくださいまして、ありがとうございます!!

誤字報告、いつも助かっております!

 青緑色の竜を見た化生フィーマの瞳が、すうっと細くなる。


「木竜、だな。先ほどの雷光、発したのはこやつか。……ならば」


 青緑竜は全長は、成人男性二人分ほどだ。

 その竜はセイラルを護るように、彼女の頭上を漂う。

 化生フィーマは瞳を赤くして、するすると両の腕を再生する。


 化生はそのまま手を空にかざす。

 掌からは銀色に光る、槍の先が生まれる。

 化生フィーマは逡巡なく、木竜へと光る槍を放つ。


 シュンッ!!


 木竜は胴体が真っ二つに切断される。


「木気の竜ならば、金気に剋される。今我が手を離れたものは、金の気をまとう、白金だ」


 満足そうに化生が笑う……


 だが、その笑いは途中で凍り付く。

 分断されたはずの木竜は、くるりとセイラルの頭上を廻り、再び元の姿へと融合したのだ。


「なぜだ!」


 木竜は己の胴体を貫いたはずの尖った白金を咥えると、そのまま嚥下する。

 青緑色の竜体は、たちまち輝くばかりの白色に変わる。


「ま、まさか。セイラル、その竜は……」


「ええ、この地より遥か彼方の、桃源郷より生まれたもの。

あなたの単なる五行の知識が、通用することは、ない!」


 驚愕の表情を浮かべる化生に、再度雷光が落とされる。

 化生は両手で印を結ぶ。

 すると化生の背から。翼のような炎が燃え上がる。


 木竜が放った雷光は、揺らめく焔に吸収された。


 さらに、化生の体から生じた炎は結界の如く、セイラルとフィーマを取り囲む。


「もう、誰にも邪魔はさせんよ」


 化生が地面に手をつくと、地面は割れ、中からは岩石が溶けたような、泥流があふれる。

 あふれた泥流の表面は、銅のような色をしている。

 同時に、立ち昇る大量の水蒸気。


 炎にあおられ、地下熱が沸き上がり、セイラルの額にも汗が浮かぶ。


「あれは……」


 セイラルの脳裏に、霊峰富士の火口の極彩が蘇る。

 その中心は、焼けた鉄よりもなお赤く、大蛇のようにうごめいていた。


 溶けた岩であるぞ。

 そう小角は言った。


「さあ、この泥流を止めてみよ、セイラル。動き始めたら、草木も石段も飲み込むぞ。

ましてや人間など、一瞬で消え去る」


 化生の言うとおりである。

 高温で動き始めた泥流は、すぐにセイラルの足元まで来た。

 触れてもいないのに、セイラルの靴が溶けた。


 水の神よ!


 国を護りしユーニアーよ!


 何卒、守り給え!!


 セイラルの頭上、二体の竜が彼女の祈りに応える。


 水気の竜は黒色竜となり、泥流に氷結をぶつける。

 泥流は次々に、白く蒼く固まっていく。

 木気の竜は、地中の金属を固めて堤に変え、泥流が広がるのを防ぐ。


 セイラルは全身に、ユーニアーの清浄な水を受けた。

 これでやられることはない。

 熱気はもちろん。

 邪気にも、だ。


 セイラルは、アティリスに駆け寄った騎士が落とした剣を拾う。

 切っ先を天にかざし、水の神に祈る。

 剣は青白く光り、水の加護を持つ。

 水気の竜は、セイラルの身体に吸い込まれ、セイラルと一体化する。


「今

ここで終わらせる!」


 セイラルは剣を持ち、炎と熱風をものともせず、姉フィーマの身体に巣食う化生に向かって走る。

 化生は、泥流を浮かせ、土塊と変え、石礫いしつぶてのようにセイラルに投げつける。

 いくつもの石礫が当たったセイラルは、頬や脚の皮膚が裂ける。


 セイラルは跳躍する。

 化生の頭頂部から斜めに、一気に剣を振り下ろす。

 果物を切りさくように、化生の体は二つに割れる。


 だが。


 化生の切創は、互いに粘液を送り出し、すぐにぴたり、元の姿に戻る。


「ほお。思ったより腕が上がっているな。地底の熱も冷めてしまった」


 化生は、自分の手で、歪んだ顔かたちを整えると、そのまま指先を伸ばし、セイラルの心臓に突き立てた。


「ぐはああっ!!」


 セイラルの口から鮮血が散る。


「終わるのは、そなたの方だったな、セイラル」


 ずぶりと音を立て、化生がセイラルの心臓を掴み取ろうとしたその時だった。



 シャラアアアン!

 シャラアアアン!


 錫杖の音が、庭園に居る者全員に聞こえた。


 その音で、化生の顔色が変わる。

 セイラルの胸から手を引き抜き、自分の両耳を押さえる。

 化生は思いきり頭を振り、子どものように嫌がり始めた。


「やっ、やめろ! やめろやめろ! 音を止めろ!」


「そこまでじゃ。お主。空をみよ。目の前のセイラルに気を取られ、気付いておらなんだか」


 錫杖を持つ、高下駄を履いた老人が天を指す。

 つられて空を仰いだ化生の瞳孔が開く。


「ま、まさか。七、芒星ぼうせい!」


「我が弟子を、よくも傷つけてくれたな。お主の逃げ場所など、ないと知れ!」

応援、ありがとうございます!!

次回、援軍は一人だけではないようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 化生相手に苦戦するセイラルに、心強い応援が現れましたね。さらに現れる援軍は誰? エェー(◎-ω-)。o○(想像中)
[一言] おおっ、更に援軍が来ますか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ