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イタリア アドリア海にて 日陰の部屋



イタリア、アドリア海に面した街並みはオレンジ色の屋根と白い壁が埋め尽くす。高台に建っているホテルの角部屋の窓が開いていた。


 角部屋は今の時間にうす暗い日陰になって少し涼しい。部屋を飾る調度品たちも日陰では眠っているようにおとなしい。


外に開かれた窓からは空高く登った太陽に照らされたホテルの丸いプールが見下ろせた。プールより先には港までオレンジ色の屋根たちが日光浴をしている。港から先は水平線までアドリア海の紺色の海がきらめいていた。


 うす暗い角部屋の中から外を眺めている部屋の借主は日系人女性。窓のさっしに手を添えて風景を眺める様子に楽しさはない。黒い長髪をそよ風に揺れさせて憂いる彼女はなにをしにイタリアにきたのだろうか。


 彼女の背後で扉がノックされた。彼女がどうぞというとホテルマンが扉を開けた。

 ホテルマンの背後に見える廊下も、電気を点けないで午後の陽光の好きにさせて日陰になってうす暗い。ホテルの建物が寝ている時間なのかもしれない。


「セニョリーナ スミカ。車の用意ができました」

「車は戻して。歩いていくことにしました」

 ホテルマンは一礼してホテルが目を覚まさないよう静かに扉を閉めた。

 伊藤澄香は窓を開けたままベッドルームに向かった。部屋とアドリア海をつなぐ魔法の四角をまだ閉じたくなかった。



 石畳をハイヒールで歩く。イタリアの陽気さに似合わない足音はローマの休日のように場違いな街に迷い込んだお姫様だ。

 イタリアの陽気な太陽から隠れた狭い路地はイタリアの陽気さも隠れているようだ。椅子に揺られて寝る老人。ゆっくり散歩しているイタリア人男性。コーヒーの香りが通り過ぎた窓から運ばれてきた。路地には午睡の空気が漂っている。

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