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第3話 属性と魔力の関係

更新ですー!


「全属性ぃーっ!?」


 驚いた事に、祝福の儀で判明した私の魔法属性は全てだった。


「という事は私は全部の魔法が使えると言う事ですか!?」


 全部の魔法が使える! それって凄い事じゃない!?

 ゲームとかだと、職業やキャラクターによって使える魔法の種類が決まってるものだし、ダリルお兄様も使える魔法の種類は二種類だけだったもん。


「それがそう簡単な話でもないのですよ」


 けれどボルテド神官長が難しい顔になる。


「いや、まずはやる事をやってからにしましょう。リコアリア様、こちらの宝玉に手を触れてくだされ」


 ボルテド神官長が部屋の奥に設置された大きな宝玉に私をいざなう。

 というかデカッ! 子供の私と同じ大きさなんだけどこれ!?

 子供サイズの宝石って一体幾らになるの!?

 万が一これを壊したら凄い賠償金を支払わないといけないんじゃ……!!


 私は宝玉に傷を付けない様におっかなびっくり宝玉に手を触れる。


「ではこの宝玉に自分の体の中にある力を注ぐイメージを持ちながら『我が魂の血潮を捧げん』と唱えてくだされ」


 なにやら呪文っぽいセリフなので、これも儀式の一環なのかな?

 私は言われた通りに自分の体の中ある力を注ぐイメージを浮かべて呪文を唱える。


「『我が魂の血潮を捧げん』」


 その時だった。体から力が抜けるような感覚がしたと思うと、目の前の宝玉が輝き出したのだ。


「何!? そんな筈は!?」


 ど、どういう事? 何に驚いてるの? これかなり眩しいんだけど、ホントに大丈夫なの?

 っていうか、宝玉だけでなく部屋まで眩しくなってきたんだけど!?


「全属性で部屋を照らすなどっ!? こ、これはいかん!!」


 ええっ!? 何がいかんの!?


「リコアリア様、宝玉から手を放してくだされ!」


「わ、分かりました!」


 私は慌てて宝玉から手を放すと、部屋に満ちていた光が徐々に弱くなっていき、最後には何事もなかったかのように消えた。


「ほー、びっくりしましたぞ。まさかここまで強い魔力をお持ちとは……」


 ボルテド神官長は驚いたと何度も言いながら、大きく息を吐く。


「あの、何か問題があったのですか?」


「そうですな、詳しい話はユーラヴェン侯爵と共にする事としましょうか」


 なんか口を濁してる感じがするんだけど、何か問題でもあるの?


 ◆


 祝福の儀を終えた事で私はお父様と共にボルテド神官長の私室でお茶を頂く事になった。

 というのは建前で、実際には私の属性の話だ。

 お父様もこのタイミングで私室でのお茶に誘われた事に何かを感じたらしくすこし警戒している様子だ。


「それで、何かあったのですか?」


 お父様が前置き無しに切り込むと、ボルテド神官長もまた真剣な顔になる。


「リコアリア様は全属性の持ち主でした」


「なんだと!?」


 私が全属性だと聞いたお父様が慌てた様子で立ち上がる。


「では娘の魔力は……!?」


「それが、信じられないかもしれませんが、リコアリア様の魔力は一流の単独属性使い以上でした」


「……何?」


 かと思ったら今度はポカンとした顔になる。


「先ほどリコアリア様の魔力を計測しましたが、神殿の宝玉では測れぬほど膨大だったのです」


「そんな馬鹿な!?」


 お父様は驚いたり慌てたりと大忙しだ。 


「あの、どういう事なのですか?」


 というか、いい加減放置されるのは気分が良くない。

 本人を置いてけぼりで関係者だけで盛り上がらないで欲しい。


「そうか、リコはまだ属性と魔力の関係をしらなかったのだな」


「属性と魔力の関係?」


 お父様はいかんいかんと苦笑しながら私の頭を撫でる。


「うむ。簡単に言うと扱える魔法の属性が多い者程、体内の魔力が少なくなるのだ」


「魔力が少なく?」


 って事は属性が多い私は……


「その通りです。詳しい理屈は解明されておりませんが昔から属性が多い者ほど魔力が少ないのです。そして魔法を日常生活で使うには最大でも4属性、戦闘を考えると3属性程度でないといけません。それ以上あるとそもそも魔法を使う事すら出来ない程魔力が少なくなるのです」


「そして適性のある属性が少ない程、魔力は増え魔法の威力もあがる。私やダリルなどがそうだな」


 そういえばお父様やダリルお兄様が得意な属性の魔法を使う所を見せてもらった事があるけど、それ以外の属性の魔法を使っているところを見た事がない。

 ユーラヴェン家は大貴族だから、お父様達も私の知らない所で色んな魔法を使えるんだとばかり思っていた。

 この世界の属性はゲームでいうスキルLvみたいなものなのかな?

 一点突破だと強くなるけど、あれもこれもとるとどれもレベルが低いみたいな。


「そうなんですか……あれ? でもそれだと私は?」


 だとすると理屈が合わない。

 今の話の通りなら、全属性の私は魔法を使えない程魔力が少ない筈。けれどボルテド神官長は私の魔力が多いと言った。


「そう、全属性ともなれば魔法を使えない程魔力が弱い筈ですが、リコアリア様に限っては単一属性の使い手並み、いやそれ以上の魔力の持ち主なのです」


「あの、私ってそんなに凄いんですか?」


「凄いと言うより規格外と言うほうが正しいでしょうな。先ほど部屋が輝いたでしょう? あれは本来なら宝玉だけがリコアリア様の魔力によって輝くはずだったのです。けれどリコアリア様の魔力があまりにも多かったため、宝玉を保護する為に部屋に仕込まれた仕掛けが発動して室内全体に魔力を逃がしたのですよ」


 え、ええと、大物家電のコンセントから伸びたアースを使って放電した感じなのかな?


「私も幼い頃その仕掛けの話を聞いて自分が部屋を光らせて見せると意気込んだものだが、結局光らせる事は出来なかったな。まさかリコアリアがそれを発動させるとは」


「ほっほっほっ、あの部屋の仕組みを聞いた子供は皆そう意気込みますからな」


 お父様は心底驚いたと腕を組みながら何度もうなずく。


「ふっ、さすが私の娘だ」


「教会の記録によると過去に部屋の仕掛けが動いたのは数百年前だった筈です。それも単一属性で部屋をうっすらと光らせる程度だったとか」


 数百年前に一人だけ!? それって本当に私の魔力量はヤバいって事!?


「まさか全属性でそれほどの魔力量だとはな。だがこれはマズいぞ」


 お父様が困った困ったと頭を抱える。


「何故マズいのですか? 色んな魔法が使えて魔力も多いのなら寧ろ良いのではないですか?」


 そう、私はそれが疑問だった。

 魔法使いとしてここまで理想的な状況なのに何故そんなにも困った顔をするのだろう?


「確かに魔法使いとしてはこれ以上ない才能だ。なのだが……」


「リコアリア様の才能は類いまれなものです。それこそ世界中の権力者がリコアリア様を手に入れようとするでしょうな」


「ええ!? 何で!?」


「リコアリアをその……」


 お父様がもの凄く言いづらそうに口を濁らせる。


「リコアリア様を自分達のものにして、リコアリア様の御子にその才能が現れないかを期待するのですよ」


 あー、そういう事。結婚する事で自分の一族に私の才能を入れたいって訳か。


「神官長!」


 スパッと要約したボルテド神官長にお父様が苦言を呈するも、ボルテド神官長はどこ吹く風だ。


「言葉を濁しても問題を先送りにするだけですぞ、ユーラヴェン侯爵」


「それは確かにそうなのだが……政略結婚で済めばよいが、最悪誘拐される可能性もあるのだぞ」


「誘拐!?」


 まさかの強硬手段に私が驚くと、お父様が私を優しく抱きしめる。


「安心しなさい。私もお前を誘拐などさせたりしない。護衛を増やして危険に晒さぬようにしよう」


 お父様は絶対に私を守ると強い口調で約束してくれた。


「その為にもお前の部屋の為に屋敷を改装する必要があるな。侵入者がお前の部屋に入ってこれない様に建物を迷宮にするのも良いかもしれん」


「お父様落ち着いてください。それでは皆が不便になります!」


 駄目だ、お父様も割とパニクってる。


「幸いこの事を知っているのは我々だけです。リコアリア様の才能はしばらくの間隠すとよろしいかと」


 と、そこでボルテド神官長がお父様に冷静になれと促すように意見を出してくれる。


「隠すっていつまでですか?」


「そうですな。リコアリア様が自分の身を自分で守れるくらいに魔法を使いこなせるまでですな。それまでは使える魔法や魔力量の事を誤魔化すとよろしいかと」


 成程、魔法の勉強が出来る事に変わりないのなら、私としても異論はないしいっか。


「分かりました。私の魔法の事は正直に話さずに誤魔化します」 


 実際それが一番良い対策だろうね。

 それに今後の事を考えても馬鹿正直に自分の手札を見せる必要はないだろうし。


「リコアリア様の才能と魔力を考えると、転移魔法と防御魔法を覚えればある程度はなんとかなるでしょうて」


 成る程、防御魔法で身を守りながら転移魔法で逃げろって事だね。


「やれやれ、我が子に才能が有り過ぎると言うのも考えものだな」


 お父様が困ったとこめかみに手を当てながら溜息を吐く。


「ほっほっほっ、世の魔法使いの親達に聞かせたい言葉ですな」


 うん、言葉だけ聞いてると悩んでいると言うよりも自慢してるように聞こえるよね。


 ◆


 屋敷に帰ると、玄関前にずらりと使用人達が整列していた。

 お父様にエスコートされて馬車を下りると、使用人達が一糸乱れぬ動きで頭を下げる。


「「「「「「お帰りなさいませ旦那様、リコアリアお嬢様」」」」」」


「うむ」


「お嬢様、祝福の儀お疲れ様でした」


 家令のジョンソンが私に労いの言葉をかけてくれる。


「ううん、大したことはなかったわ」


 そして屋敷の中に入ると、驚くべき光景が私を出迎える。


 なんと屋敷のホールが大量の花で埋め尽くされていたのだ。


「リコアリア、祝福の儀おめでとう!!」


「おめでとう!」


「「「「「「おめでとうございます!!」」」」」」


 そしてムリエお姉様、ダリルお兄様、外にいなかった使用人達が花びらを宙に舞わせながら私を祝福してくれる。


「こ、これは!?」


「ふふっ、驚いた? 祝福の儀から帰ってきた子供には、こうやって花びらをばーっ!って舞い散らせてお祝いするのよ!」


「どうだ、綺麗だろう?」


「はい! ビックリしました!」


 すっごいビックリした!

 部屋中花だらけで、花吹雪まで用意するなんて、まるで少女マンガの世界だよ!」


「それでそれで? リコアリアはどんな魔法を授かったの?」


 ムリエお姉様が私が授かった魔法について聞いてくる。

 ええと、これなんて答えればいいんだろ。

 私が困っていると、お父様が突然私を抱え上げた。


「ふわっ!?」


「リコアリアが授かったのは防御魔法だ。我がユーラヴェン侯爵家にふさわしく、強力な魔法を使える可能性があるらしい。ほかにも2、3素質はあったが、どの程度使えるようになるのかは分からん」


「へぇ、リコは複数属性か。便利でいいな」


「これで危なくなったらリコに守ってもらえるわね!」


 ムリエお姉様がそんな事を言いながら私のほっぺに自分のほっぺを押し付けてすり合わせる。


「はわっ!?」


「二人とも、いつまでも立ち話をしていないで、サロンにいこう。リコも初めての外出で疲れているだろう?」


「もう、ダリルお兄様ったらせっかちなんだから」


 ダリルお兄様に促され、ムリエお姉様が仕方なしに私から離れていく。

 こうして私の初めての外出は終わりを迎え、その日の晩は祝福の儀を無事終わらせたお祝いとしてちょっとしたパーティをすることになったのだった。


 まさか一日に二回もお祝いされるだなんて思わなかったよ。

侯爵「困るわー。娘が才能に溢れすぎてて困るわー」

神官長「娘自慢乙」

神官「大変なんだってばー!」


おもしろい、続きが読みたいと思ってくださいましたら、感想、ブックマーク、評価をしていただけると嬉しいです。

凄く喜んでやる気が漲ります。


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