ルー視点③
どうやらリョータさんは王都へ行くらしい。それにしても王都までの移動日数もしらないとか…大丈夫なんだろうか？ 一応必要な荷物も教えては置いたけどこうなってくると一人で準備を仕切れるのか気になるところ。だけど私はそんなことにかまっている暇はないのだ。だって私も王都へ行く準備を始めないといけないから。
今回王都へ向かうのは私一人だけだ。ジエルを置いていくことになるのでその間の準備もしておかないといけない。多分…今回はとても重要な旅となると私は考えている。
準備が整い王都へ向かう当日となった。
「いい、ジエルむやみに外へ出ないこと。これだけは約束して」
「…わかった」
心配だ…この子視線をそらしながら返事を返してきた。もしかすると守るつもりがないのかもしれない。
「むやみには、出ない。理由がある時だけ、出る」
「…食料はたくさんあるから出る理由はないとおもうんだけど？」
「退屈」
そんな理由で他の人に迷惑をかけられたら後で困るのは私だと思うんだけど…これは出来るだけ早く帰ってきたほうがいいのかもしれない。だけど帰りの馬車代くらい稼がないとちょっと後の生活が苦しくなる。
「もう…じゃあ私は出かけるからね？」
「ルーも気を付けて？」
ジエルと別れ私は乗り合い馬車が止められているところへやってきた。これから約５日間この馬車に乗って移動をすることになる。知らない人達と過ごすのはちょっと疲れそうだけどこればかりは仕方のないことだ。自分で馬車を用意してもよかったのだけど、それだと余分にお金がかかる上に馭者をすると守る人を雇わないといけなくなるのが痛い。ますます出費が増えてしまって今後必死で働かないといけなくなる。流石にそれは体を壊しそうなので、知らない人と馬車で過ごすぐらいは我慢が必要。
馬車の旅は順調に進んでいた。途中の町で人も入れ替わり全員が王都に向かっているわけではないみたいだった。この馬車に乗っているのは10人ほど。フィレーネから一緒に乗っている親子はちょっと会話をするようになり、ちょっと仲良くなった。
「じゃーおねーちゃんも勇者を見にいくんだ？」
「そうですね、折角なので勇者様を一度くらいは見ておきたくて」
どうやらこの親子は王都である勇者のお披露目が目的だったらしい。もちろん私も勇者を見ておくのが一番の目的だ。見ておくだけじゃなくて現在の状況も知っておきたいところだけど…流石にそんな機会はないかもしれない。
「じゃあ王都でまた会えるかもだね～」
「かもしれませんね」
にこにこと笑う女の子に私も笑顔で応えた。
無事王都についた。女の子と手を振って別れまずは宿を決める。だけどこれだけ人が多いと誰もが勇者を目的としてやってきている可能性もあって宿は空いていない。最悪どこかで場所を借りてテントを設置して寝ることになりそう。どうせなら冒険者ギルドで場所を借りてついでに何か仕事を探そうかな。今から商人ギルドで仕事を貰おうとしても厳しそうだからね。というか店を出したりしていたら勇者を見ることが出来なくなってしまう。まあ店をやるための荷物は用意してないわけなんだけど。
冒険者ギルドで仕事を見てみると大した仕事がなかった。やっぱり勇者を見るために先に仕事を終わらせようと今頑張っている人たちが多いのかもしれない。となるとこのゴミ拾いくらいかな…勇者のお披露目時の町中の。店も多く出るからゴミもたくさんでてそれを拾うだけで仕事になる。まあ…私のマジックバックじゃたくさん集められないけどやらないよりはましくらい。この依頼書を壁ならはがし私はついでにテントを張る場所を借りることにした。
