3. 木と木と木で森と書く
目を開けるとさっきまでなかった色が飛び込んできた。閉じると真っ暗。再び開ける…うん。どうやらさっきの場所ではないらしい。わかるのはそれだけ。目に映るのは空の青さとところどころに見える木々の葉っぱ。そして土の匂いがする。
「んん~~?」
慌てて体を起こす。というか俺は寝転んでいたらしい。目の前には木。右にも木。もちろん左にも…まだ確認はしていないがきっと後ろも木が生えているんだろう。
「ええ~…森スタートですか。別に行けどさ」
いきなり町中とかに転がってたら人に囲まれていただろうことを考えれば無難といえば無難。だけどさ…ずっとここにいるわけにはいかないわけよ。
さてこれからどうしようか? 勇者召喚された奴らは目的があって呼ばれたんだろうが、はっきり言って俺には何も目的がない。ただこの世界に呼ばれただけ。ここで生きていかないといけないってわけよ。だけどまずはあれだろう?
「ふふふふふ…っ」
あーにやけちまうね。一体どんな仕様にしてくれたんだろうか? …よしっ 頬を叩いて居合をいれる。
「ガチャ使用!!」
ブォンと音がして目の前に透明な画面が出た。どうやらガチャのメニュー的な画面らしいな。
「えーと…? 職業ガチャ…食品ガチャ…スキルガチャ…防具…」
うーん…なるほどねっ まあそりゃそうだよな。ゲームみたいにかっこいいキャラとかかわいいキャラとかが出てくるわけがないわ。つまりこの世界で生きていくために必要なものが出るガチャってことか…ガチャが引けるだけましだと考えるか、生きていくのに少し楽が出来ると思うべきか…はぁっ とりあえずどれか引いてみるか?
「ガチャを引くのにはポイントがいる…と。おっ これはサービスなのかな」
『1日1回単発無料(残り30日)』
そう書かれている。あとガチャポイントが2000あるぞ。こうなってくるとどれを引くか迷うな…ただこのポイントが曲者だ。使ったら減る。減ったら増やさないとガチャが引けない…当り前だ。どうやってポイントを増やす? くそっ 説明がないぞ!
【職業ガチャ・単発150ポイント】
火の日ピックアップガチャ魔法職業確率アップ中
【食品ガチャ・単発50ポイント、11連500ポイント】
日本で扱っている食料品がでます
【食品ガチャ2・単発50ポイント、11連500ポイント】
この世界の食料品がでます
【スキルガチャ・単発500ポイント、11連5000ポイント】
職業スキル以外がでます
【防具ガチャ・単発100ポイント、11連1000ポイント】
防具がでます
【武器ガチャ・単発100ポイント、11連1000ポイント】
武器がでます
【日用雑貨ガチャ・単発50ポイント、11連500ポイント】
日本で扱っている日用品がでます
【日用雑貨ガチャ2・単発50ポイント、11連500ポイント】
この世界の日用品がでます
【書物ガチャ・単発80ポイント】
あらゆる書物がでます
【道具ガチャ・単発500ポイント】
あらゆる道具がでます
一通りガチャのリストを眺めてみるがとても迷う。慎重に選ばなければ…今俺が必要なものはなんだ? 体をぺたぺたと触ってみるが持ち物はなし。手に持っていたはずのスマホはどこへ行った? とりあえず服は着ているが学生服だ。
「食べ物とかかな?」
…ちがうか? 今別にお腹は空いていない。いや小腹は空いているが…どうせ引くならお得な11連が引きたい。そうすると少し問題が出てくる。11個の食べ物は流石に全部食べられないから持ち歩くことになる。俺の持ち物は今来ている服だけだ。どうやって残りを運ぶ? 最悪シャツ脱いでくるめばいいのか??
「あーそうか…どんな状態で出てくるのかもわからないか…」
となると『1日1回単発無料(残り30日)』これを利用して試すのがいいってことか。
「よし…っ 俺はこれを引くぜ!」
目の前の画面の食品ガチャ単発のボタンらしきものをタップだ! ぽちっと!!
「おおっ?」
画面が小さくなってくるくると回転している。大きさは一般的なトランプくらい。回転が止まった。目の前にはトランプサイズのカードが浮いている。これを取ればいいのか? 右手を伸ばしカードを手に取る。すると真っ白だったカードにイラストと文字が…
『水』
…ガラスのコップに水が入ったイラストが描かれ、水と文字が…
「いやまあ…うん」
始めからいいものが出るとは思ってなかったよ? だから水が出たのはいい。問題はこれをどうすればいいのかって話しだ。どうすればこの水が飲めるんだ?
とりあえず振ってみる…イラストを触る…カードを両手で挟んで叩いてみる…出ないな。
「いでよ水!」
声にだしても出ないっと…くそぉ。これは困ったぞ。あとやってないことは…そうだ! 職業ガチャに魔法職業ってあったくらいだから魔力? マナ? そんな力を込めるとかかもしれないなっ
「… … …ってやり方知らねーーっ」
「きゃっ」
…きゃっ? そーっと後ろを見ると人がいた。髪の毛の色が水色だ! すごい異世界って感じがするなっ
「な、何しているんですか?」
「何って…えーとスキルの確認?」
嘘は言っていないぞ。ただ悪戦苦闘していたが。
「はあ…そうなんですね。スキルによっては町中では危ないかもしれないし納得です。それであの…その手にあるものは何ですか?」
「ん? ああこれは……水だね」
あれ? いつのまにか水の入ったコップを手にもっている…
「中身はそうでしょうけど、その器のほうです聞きたいのは。光に当たるとキラキラしてとても綺麗です」
「ただのコップだけど…えーとガラスのコップ?」
「ガラスですか…これが」
なんだ? 珍しいのかなガラス。
「えーと…いる?」
「ええっ こんな高い物もらえません! それに買い取るお金もないですし…そうだっ この後時間ありますか?」
「うんまあ」
予定もないどころか何していいかわからんくらいだ。ほんとは住む場所やこれからの生活とかも考えないといけないんだろうけど、そもそも町の場所も知らないしな。この子にくっついていれば案内してくれそうだ。
「では少し私のお手伝いをしてください。そうしましたらそのコップを私のお店で売りましょうか。いらないのならお金にした方がかさばりませんよ?」
「商人なの君?」
「はい。あ、まだ名乗っていませんでしたね。私はルー・ラライラ。一応商人をやっています」
「俺は高岡良太。良太って呼んでくれ」
「リョータさんですか。では私はルーと呼んでくださいね?」
うんルーにこの世界のことを色々教えてもらおう。結構人が良さそうだしね。商人としてはそれじゃあまずそうだけど。