表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
354/355

箱庭の山登り

ジエル視点③を109話の後に追加しました。

 このあいだ空き時間にちょっとだけ登った山を今日こそ頂上まで登ってみようと思う。家から見るとそれほど高くない山なんだけど、下から見るのと上から見るのは結構違うと思うんだよね。


「あ…」


 なんてっこった…このあいだと同じくらいの高さまで登るとまた熊に遭遇した。しかもこの熊多分このあいだの熊と同じ熊だと思う。俺を見て距離を取るかのように近づくと下がっていくから。前みたいにさっさと通り過ぎてしまおうか? だけどこの間いきなり倒れたんだよな~ そうだ今回はむしろこの熊と仲良くなってみるか。そしたら気にせずに山頂まで向かえるようになるだろう。まあ何度も来ることがあるかはわからないが。


「おーいお前これ食べるか~?」


 俺はインベントリから…食べ物を出そうと思ったんだけど、そもそも熊って何食べるんだ? 鮭? 肉? 果物か? はっきり言ってよくわからないから色々出して見ようか。えーと…魚だろう? 一応肉もだすよな? 果物は…なんでもいいか。あーそういえば熊って言えばハチミツとかどうなのよ。まあハチミツはもっていないんだけどもさ。甘いものが好きなのかな? チョコレートとか試してみるか。


 食べ物をいくつか並べ、ちょっと離れて見ると熊がゆっくりと近づいて来てちらちらと俺の方を気にしてみていた。ねえこれ食べていいの? と言っているように見えないこともない。ひとつづつ匂いを確認し歩いて回っているのは警戒しているのかただ単に食べ物の種類を見極めようとしているのかはわからないね。


 最初に口を付けたのは果物だった。なるほど…確かに言われてみれば山に住んでいるなら果物や木の実を食べるのが自然なのか。魚と肉に関しては匂いだけ確認して口もつけなかった。食べないことはないけど果物の方が慣れ親しんでいるってやつかもな。


「お?」


 最後にちょっとしたいたずらで置いたチョコレートの匂いを確認すると、そのチョコレートの周りをぐるぐると周って歩き始めた。果物を食べるから甘いものが食べられないということはないだろう。だけど口をつけずただ周りを歩くだけ…気になるけど食べる勇気がないと言った感じか? さっきからこっちをまたちらちらと見ているし。


 そしてついに熊がチョコレートをぺろりと舐めた! 舐めたところで溶けていないとあんまり味はわからないと思うんだけどね? 


「ん?」


 何度かなめていた熊が突然また倒れた! 一体何なんだっ よくわからんが今回はここまでだな。近づいて確認してみると一応生きてはいるみたいだし…まあこの隙に頂上を目指そうか。


 山道を歩いて上へと進んでいくと枝の上とか木の裏側とかに小動物を発見。ちらりとしか見えなかったから何かは分からなかったけど、普通はそう人前にはでてこないよね。熊はまあ体が大きいから偶然遭遇しただけなんだろうね。あーそうか、熊だって山の中で見慣れない人にあったから怖かったのか? だとすると悪いことをしたな~ そんなことを考えながら進むとどうやらそろそろ頂上が見えてきたみたいだ。その先はまた緩やかに道が下っているし。


「えーと…おーい?」


 山の頂上につくとそこにはお腹を向けて転がっている生き物が一匹。なんていうかよく知っている生き物が転がっていたわけなんだが。


「…キュ?」

「何してんだ?」

「キュ~!」


 はっきりとわかったわけじゃないけどどうやら寝ていたらしい。鳴き声を上げた後また瞼を閉じてしまった。


「アス~? なんでお前はここにいるんだ?」


 もしかしたらアスは普段からこの山の中で過ごしているのかもな。俺が呼ばない限り箱庭の中で自由にしているわけだし。あーとなると…熊が怯えていたのはアスなのかも。一応俺の獣魔だしお互いの匂いがついているかもしれん。


「この子は山で何をしてるんだかね~」


 お腹をつついても気にもせず気持ちよさそうに眠っているアスから視線をそらし、山頂から家のある方を見てみる。ここからは俺が設置した建物が全部見えていた。ちょっと視線を動かすと南東側の森も見えるね。もちろん北西にある森も見える。ここにたつとこの箱庭がすべて見渡せるんだね。


 つついてもおきないからアスは放置して俺は山を下っていった。途中熊に餌をあげた場所と通過したわけなんだけど、魚も肉もそしてチョコレートもなくなっていた。誰が食べたんだろう? さっきまで倒れていた熊もそこにはもういなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ