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325. 森

 目の前が白く染まっていく。眩しくて目が開けていられなくなった。その光は御神木から出ているようで、間近で見ていた俺にはただひたすらに白く感じた。それもあり雪乃の記憶が見えなくなり、まだ続いていたかもしれない記憶のその先はわからない。だがわかったことは一つだけある。雪乃はたけの傍にいたかっただけなんじゃないか…と。


 眩しかった光が収まると元の見慣れた光景が見えてくる。御神木の前に建つ御神木様と祈る姿勢の響子。俺の傍でまだ意識が戻らない雪乃。御神木を守るように少し離れて周りを警戒していたルーといつの間にかその傍にいたジエル。たけ、シズク、ノノさん。ただみんなの顔は結界の向こうではなくなぜか空を見上げていた。


 湧き出していた魔物もそれが収まりさっきまで暴れていたその魔物や、襲われていた人たち。ジルベスターさんとヨルさん、アルバトロス、セブンシ―も同じように空を見上げる。俺も遅れて空を見上げると木漏れ日が差す木々に囲まれている不思議な光景だった。


 普通に考えておかしいだろう。だって空からは木漏れ日がさしているのに今いる俺たちの周りには木は御神木しかない状態なんだ。


「初めて見た…守りが完成するところ」

「それで、普通」


 ルーとジエルの言葉が耳に入ってきた。守り…なるほど。そういえばエルフの里は森に囲まれていた。あれは本物の森ではなく、御神木が作り出した結界なのか。だから雪乃の記憶で見た実を食べることが出来なかったというのは当たり前だったのか。


 誰もが呆然と空を見上げていたがそこで動き出す者が現れた。魔物達だ。大人しくなった魔物達はゆっくりと体の向きを変えると、まるでそれが当たり前のように町の外へと移動を始める。武装した人たちもさっきまで魔物に武器を向けていたのにそれをただぼんやりと眺めていて誰も攻撃をしようともしない。


 その中で一人…いや、正確には3人が移動する魔物達と違う動きで進みだした。それは呆然と空を眺めていたジルベスターさんの前だった。


「…ジルベスター、大人しく王都へ一緒に向かってくれるか?」


 ヨルさんの言葉に気がついたジルベスターさんがゆっくりとその顔をヨルさんに向ける。


「ああ…」

「……父上」


 周りの音に消えそうなほど小さな声でヨルさんがつぶやいた。もしかするとジルベスターさんにも聞こえていなかったかもしれないが俺はその声を拾ってしまった。


 そしてジルベスターさんは大人しくヨルさん達に連れられ大勢の武装した人たちも引き連れブンナーから出ていくのだった。


 残された俺たちはいまいち事態が飲み込めないまま取り残され、ぼんやりと光り輝く御神木を見上げた。とても大きくて立派な御神木が風もないのに葉を揺らし、御神木の前にいた御神木様の姿はいつの間にか見えなくなっていた。そういえば響子が契約を行っている時御神木様の姿は多くの人に見えていたようだった。それがなんでなのか俺にはわからない。多分知っているのは御神木様本人だけなんだろう。


 ちらりと雪乃を眺める。俺たちも一度帰ろう。ゆっくりと休める場所へ。

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