320. 妨害
「りょーちゃんどうしたの?」
顔を覗き込んできた響子が心配そうに声を俺にかけてきた。それにこたえるために顔を上へと向けると御神木様の後ろにぼんやりとした御神木が現れていた。
「あ…」
俺の声に響子もその方向を見上げあんぐりと口を開く。
『良太こっちからも見えてるそれかなりデカいな。っとそれはいいとして、ちょっと結界への攻撃が激しくなってきたぞ』
『わかった』
驚いて手を止めていないで進めないとな。雪乃のが出てきたことにちょっと驚いたが今はこちらを進めないといけない。
俺は御神木様の苗をぼんやりと見えている御神木の足元の地面に穴をあけ、丁寧に置き、そっと土をかぶせその穴を埋めた。
「2人とも御神木様成長させるからちょっと離れるぞ」
「はーい」
「わかった」
響子とジエルに苗から少し離れてもらってから俺はスキルを使用する。
「成長促進」
スキルを使うと少しの体力を消費し御神木の身長が俺の背を少し超えるくらいの高さに伸びた。まだまだ幹も細く、見えている完成形にはほど遠い。目的のサイズになるまで何度も何度も俺はスキルを使用した。スキルを使用するたびに大きくなっていく御神木。それに合わせ俺たちも木から距離をとっていく。
俺の体力が半分に近くなるころ、御神木様の大きさがあと少しで目的のサイズも後少しに…その時、ふと周りが気になり結界がある外回りに視線を向けた。いつの間にか攻撃がやみあたりが静かになっていた。
「…?」
直後、夜なのに空が明るくなり轟音が鳴り響きそのまぶしさに目を閉じる。聞こえてくる音の中には何かが割れる音も混ざり、突風がやってきた。
「リョータ、結界が、ない…」
「うそだろう…? これでも俺の魔力の半分を使った結界だったのにっ」
俺の現在の魔力は5324800だ。この半分…2672400の消費魔力で作った結界が壊れるなんてまずありえないことだった。
「そうだみんなに撤退してもらわないと!」
あんな威力の魔法を再び打たれたら結界の傍に待機しているみんなが危ない。もう一回結界を張るのでもいいんだが、同じ強度の結界を張るのにはポーションを飲んで回復をしてからになる。それだったら御神木の近くまで撤退してもらい、範囲を狭くして強度をあげた結界の方が早く今の魔力量でも貼ることが出来る。俺はすぐにみんなに連絡を取るためにイヤリングに手を当てた。
『良太! 雪乃だっ 結界があった場所の向こう側から雪乃がやってきた!』
俺が声を出す前にたけから連絡がやってくる。聞き間違いじゃなければ雪乃がやってきたとたけはいっているが…雪乃か。となるとこの結界を破った魔法は雪乃が使ったのかもしれない。ああ見えて雪乃は大賢者だ。まだ俺たちが知らない強い魔法を持っていてもおかしくはない。というか御神木様の記憶によると雪乃は一番最初にこの世界へ召喚されたたけと一緒にやってきたもう一人の人物。それがなぜ俺たちの友達としてあちらの世界にいたのかはわからないが…
たけ、ルー、シズク、ノノさんが近くまでやって来て隠密を解除した。その位置を確認し、俺は再び結界を張る。この後魔力を御神木様に渡すためにもこれではどう考えても魔力が足りなさすぎる。インベントリから初級魔力回復ポーションを取りだし2本一気に飲み干した。そのころにはすぐ目の前、結界の向こう側に雪乃とジルベスターさん、それと周辺を囲む武装した人たちがやってきていた。
「雪乃…なんで邪魔をするんだ?」
「なんでって…邪魔をしているのはそっちでしょう?」
そういうと雪乃は俺のことをキッ睨んだ。




