302. 許可をもらう
長の家は町の西側にあった。場所は通り掛けにいたドワーフに教えてもらったので間違っていないはずだ。俺とルーはその家の前に立ち扉をノックした。
「誰だ?」
「この町の長でしょうか?」
「そうだがあんたらは?」
「ただの冒険者ですよ。それでですねこの町のあちらこちらに捨てられている金属なんですが、もし不要であるのならいただいてもいいでしょうか」
会話はルーに任せて俺は成り行きを見守っている。俺がよくわかっていない種族に言ってはいけないことを口にしてしまったら面倒なことになりそうだからね。
「…物好きもいたもんだ。あれらはもうただのゴミだぞ? それでもいいなら好きなだけ持って行ってくれ。こっちも片付いて助かるしな」
長の話によるとあれらは鍛冶の練習に使われたもので、何度も熱を加え槌を叩きつけているもので金属としてはかなり劣化してしまっているらしい。使うことも出来ないし捨てる方法もないからあのように積まれているんだとか。本当にただのゴミだったのか…他に本当は理由があるのかもしれないと期待してしまったのはまちがいだったよ。そんな話を聞かされている俺たちの後ろを、鍋を頭にかぶり、鍋蓋を手に持ち、複雑怪奇な形状をした武器を持って走り去っていく子供たちがいた。どうやら子供たちのおもちゃでもあるらしい。
「さあリョータさんいただいちゃいましょう。あの壁になっているものは下手に触ると崩れそうで怖いので、道端に落ちているものを貰っていきましょうね」
試しにすぐ傍に落ちていた形状から何だったのか不明な金属を拾ってポイントに変えてみる。
ガチャポイント:4481→4501
お…? 20増えたな。もしかして金属のポイントは1じゃない?? 今度はサビて今にも崩れそうになっている金属片を手に取る。
ガチャポイント:4501→4502
これは1か。流石に完全にただのゴミだもんね。でもこれはいいかもしれないね。ポイントが安定していないけどもしかしたらこの中にはもっとたくさんのポイントに変わるものもあるってことだし。
「あ、回収の前に一度箱庭へ戻ろうか。ちょっと昼を過ぎているし」
「あら、それはいけませんね」
自分達だけなら昼ご飯の時間が遅れようとかまわないが、箱庭の中には作業をしてくれている人たちがいるのであまり遅くなってはいけない。その分作業の手が止まってしまうからね。
箱庭に戻るとすでにテーブルで作業員たちが座って待っていた。待ちきれなかったのか一部の人がおやつを食べていた。まあただ食べたかっただけなのかもしれないけどね。
「遅くなってすみませんっ すぐおだししますね」
俺の声に作業員たちは嬉しそうに声をあげた。よかった怒ってはいないみたいで。
みんなに食事を提供した後俺たちも食事を食べる。そして食休みのついでに夜ご飯のための複製を始めるとたけの顔が歪んだ。
「良太忙しそうだな~ なあ、俺にも出来ることないか?」
「…暇なら作業員たちと土を混ぜる作業をしてくるといいよ」
「他にはないか?」
「ないよ」
なんでそんながっかりした顔してるんだよ。ここにいるとあまり動き回ることがないからもっと動き回りたいってことなのか?
「この後ドワーフの町でゴミ拾いをやるんだが一緒にやるか?」
「ゴミ拾いか…それもいいかな。雪乃はどうする?」
「武がいくならいくけど…危なくない?」
「フード被ってれば大丈夫だって。人族の住んでいるとこじゃないしさ」
あーそうだ。2人には執事のスキルもイヤリングも渡していない。イヤリングだけは渡しておくか。ルーに言って俺のと対になっているイヤリングを貸してもらい複製をし、2人にもイヤリングを渡す。ちょっと俺の耳の負担が多いがこれでイヤリングが左右合せて6個…若干重い。




