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286. 決別

「リョータさんっ リョータさんしっかりしてください!」


 どんっと背中にぶつかる感触とそんな声が聞こえてきた。声の主は…ルー。どうやら俺に後ろからぶつかるような勢いで抱き着いてきたみたいだ。


「その腕輪、キョーコさんや勇者様たちの時と同じように出来ないんですか?」


 …腕輪? ああこれか、そういえばさっきジルベスターさんから趣味の悪い腕輪を貰ってはめたんだったな。同じように…インベントリにしまえばいいのか。


「…しまえないみたいだね」

「そんな!」


 なんだろう…状況は見えているのにどこかぼんやりとしていてまるで他人事のように感じる。だけどこの趣味の悪い腕輪は早く外してしまいたい。


「…壊せないかな」


 今の俺のステータスだとちょっとでも力を入れようものならなんでも破壊しそうだった。普段はいつもと同じ感覚でしか行動をしていなかったので、実際自分がどのくらいの力をこめられるのか試したこともない。力を試すのに丁度よさそうでもある。腕輪のふちを掴み2本の指に力をこめてみた。


「あ…」


 腕輪からおかしな音が出た。見た目は特に変わっていないみたいだ。パカリと開いてカチャリとはめる感じの腕輪だったからその接続部分に負荷がかかったのかもしれない。つまりもっと力をこめれば壊れるかもしれないってことだね。


「ル~~~~ッ」

「だめっ 御神木は私とりょーちゃんを繋ぐものなの!」


 顔をあげるとネコルーと響子が騒いでいる。ちょっと響子は何を言っているのかわからないが…とりあえず俺はこの腕輪を壊してみよう。


「リョータさん…」


 俺に張り付いているルーの不安そうな声が聞こえ、腕輪にさらに力をこめる。パキンッ と小さな音がして腕輪が俺の腕から外れ足元に落ちる。すると思考がすごくクリアになり、なんで俺はこの状況で何もしていないのだと自分にイラついてきた。


「ネコルー、響子を背中に乗せてこっちへ!!」

「ルッ」

「響子は御神木をしっかりと持って」

「う、うん!」


 ネコルーと響子に指示を出し、俺の元へ来てもらう。ルーは俺にしがみついているからこれでいいとしてあとはカルガードか。さっきまで土について話していたのですぐ傍にいるな。


「カルガード何も言わず手を繋げ」

「お、おう?」


 いまいち今の状況を読み込めていないカルガードは戸惑いつつも面倒ごとはごめんだと言わんばかりにすぐに俺の言葉に従う。さりげなくカルガードは土を袋につめるのを忘れなかった。


「…壊されたか、これは力も制限しないとだめだったな」

「ジルベスターさん…なぜ?」

「なぜ…? これはおかしなことを。自分の理にかなうものは手元にこそ欲しいもの。そういうものだと思わないかい?」


 いつもと同じ笑顔でジルベスターさんがそんな言葉を口にする。


「りょーちゃんっ」


 響子を乗せたネコルーがすぐ近くにやってきた。俺はジルベスターさんの質問には答えずみんなを連れてテレポートを使用した。目的地は鎮守の森、エルフの里の入り口。俺たちが過ごせる場所はもう限られているのだから。

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