261. 御神木の移動方法
…で、御神木様を元居た場所に戻す必要があるのはわかったんだけども、そもそもどうやって戻せばいいんだろう?
「どうした、早うここから連れ出してくれ」
「ええと…御神木様の本体? はその木ですよね?」
俺が裏に生えている朽ちかけている御神木を指で示す。
「もちろんじゃ」
木は…一応生き物だよな。となるとマジックバックやインベントリに入れることが出来ない。つまりそのまま運ぶしかないわけなんだが。根はしっかりと地面に埋まっているし、そもそも結構大きい。というか無理やり引っこ抜いたら崩れてしまいそうなのが怖いんだよね。
「だがこの体はもうだめじゃのう…巫女やもう少し無理してでも魔力を貰えんか?」
「ええと…ポーション飲めばなんとか??」
「じゃあ飲むんじゃな」
「うえええ…これあんまりおいしくないからたくさんは飲みたくないんだよね~」
「そうかなら7日ほどさっきと同じくらい魔力をくれるのでもいいぞ?」
響子が何か言いたそうに俺の方を見た。あー出来たら7日かけたいのか?
「ジルベスターさん。ここに7日ほどいることは出来ますか?」
「ここに滞在となると…王都へ戻り王城で許可を取ってこないとならないが、御神木様が何かおっしゃっているのかね?」
そういえば響子に触れていないと会話出来ないのか。
「御神木様は無理やりこの地に連れてこられたみたいで、いつまでもここにはいられないらしいです。そのせいで枯れかけてるみたいだし…それで、御神木様を移動させるために巫女に魔力供給の請求がありました」
「なら魔力をあげればよいのではないか?」
「それで響子…巫女である響子が魔力供給のためにポーションを飲むのが嫌だということで、その場合7日ほど毎日の供給がいるみたいなんです」
「さっき言ったとおりだ。滞在は許可に時間がかかる」
「だそうだあきらめろ響子」
「うえええええええっ」
文句を言いつつも響子はそれからポーションを飲みまくり魔力の供給を続けた。巫女になることを自分で選んだ以上それが仕事だ仕方がない。多分俺が魔力譲渡だっけ? を覚えていたら手伝えたんだろうが残念ながらまだないのでどうしようもない。
「うう…でる…っ」
口を押え気のせいか若干太ったように見える響子を横目に俺は御神木様に話しかけた。
「これでどうにかなるのですか?」
「うむ。よく頑張ったな巫女よ。新しい体を作ることが出来るようになったぞ…ほれ、そこを見て見よ」
指で示された場所…朽ちかけた御神木様の足元に新しい芽が出ている。
「その体なら運べるであろう?」
「そうですね…では根に気を付けて掘り出しますね」
俺はインベントリからカードを取り出しそれを破いた。結構前にガチャで出したプラスチックのスコップだ。今頃役に立つことになるなんて思わなかったよ。周辺の土を掘り、少しづつ余分な土を避けていく。細かい根は多少傷付けてしまうかもしれないが、太目な根は傷をつけないように気を付ける。
「あれ…」
太めの根の1本が朽ちかけた根と繋がっている箇所を発見。そりゃそうか…この木からこっちへ成長しなおしたんだろうからね。でもこれはどうすればいいんだろうか。
「なんじゃ?」
「えっとここの根なんですけど、繋がっていますよね?」
「ああー…ん-…ここじゃここで切ってくれ」
示された場所は伸ばされた根の丁度中間あたり。たしかに若干色が違う気もする。だけど…
「本当に切ってもいいんですか?」
「切らないと移動出来ないじゃろうが…若干痛みを伴うが」
やっぱり痛いんだ。俺はナイフを取り出し言われた場所に添えた。
「…一気にいきますね」
「お、おう…頼むのじゃ」
俺はナイフで根を切りすぐに成長促進をその根にかけた。するとナイフで切られた切り口から根が自然に伸び元からそれが普通だったかのように変わる。
「…っ ふぅ、ちくっとだけですんだ」
そりゃよかったね。
「あ…」
さっきまで朽ちかけていたけどその体を必死に保っていた大きな木がボロボロと崩れ始めた。その場にいるみんなが不思議そうにその光景を眺めている。
「お疲れ様じゃ…」
御神木様のその言葉で一気に大きな木が土へと還っていった。