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219. 羊アゲイン2

 おっとこんな羊に構っていないでさっさと町を抜けてしまおう。俺は羊を無視して通り過ぎようとした。


「おや、こちらに反応を示しておいて知らないふりをするのですかな?」

「……」


 めんどくせぇ…普通に無視するなって言えばいいじゃん! まあ無視しようとしたこっちも悪いかもだけど、できたらかかわりたくないと思ったんだから仕方がない。


「人違いじゃないんですか?」

「ほほほ。これは愉快なことをおっしゃる。人族を目にする数が少ないこの地で、さらに珍しい髪色をした人物を間違うと」

「はあ…なんなんですか? これでも一応急いでいるんですけど」

「おやお急ぎでどちらまで」

「海を渡った先」

「それは丁度よいですな。やはり私の予感はよく当たる」


 羊が首を縦に振り満足そうな顔をしている。だから急いでいるって言ってるんだから早く用件を言ってくれ。


「で、なんですかね?」

「そうでした。つい嬉しくて年甲斐もなくはしゃいでしまいました」


 いや、あんたの年なんて何でもいいが。


「実はですな私のスキルが言っているのです。お嬢様をリョータ様に港の町まで送らせよと」

「スキルが?」

「はい、私のスキル『予感』…半分ほど未来を予想するスキルです」

「半分…」


 それって半分は外れるってことじゃないか。つまり無駄になるかもしれないってことなんだが?


「ええ、ちょうどお嬢様も帰る頃でしたのでそれならばと思いまして」

「……それって完全にそっちの都合なんじゃないのかな?」

「そうともいいます」

「……」


 やっぱりこの羊との会話はめんどくさい。


「もしかしたらそちらにとっても都合のよいことになるのかもしれませんし、何もないかもしれません」

「連れていくのはそのお嬢さんだけか?」

「おや受けてくださるので?」

「条件付きでならそのお嬢さんだけでなら受けてもいいぞ」


 条件を飲んでくれるなら連れていく方法もあるからな。それに人数は少ない方がいい。やっぱり関係ない奴らに色々とスキルについて聞かれるのもめんどくさい。それに一番の理由は早く羊との話を終わらせて出発したい。多分ローレンスさんは俺がこの仕事を受けてくれるまで会話をやめない。


「どのような条件でしょうか」

「移動の間お嬢様には眠っていてもらいたい」

「ほう…?」

「だがこちらには眠らせておく手段がないからそれを用意してほしい。後出発は今すぐだ」


 どうだっ 流石に今すぐとか無理だろう??


「その程度でよろしいので?」

「…ん?」

「お嬢様の準備はすでにできております。それと眠らせておく手段ですが普通に睡眠薬でよいかと」


 あるのか睡眠薬…


「ではお嬢様を送ってくださるということでお願いできますか?」

「…わかった。報酬と届け先などを教えてくれ」


 ローレンスさんからお嬢様の届け先と報酬の話を終えると門の前で待ち合わせることにした。待っている間に俺はネコルーを呼び出して待機する。流石に馬車は俺には無理だしだからと言って徒歩な状態だと不審に思われるからだ。


「お待たせいたしました」


 馬車に乗ってローレンスさんがやってきた。まさかその馬車で向かえとかいわないよな…馬や他の人がいるのは厄介なんだが。様子をうかがっているとローレンスさんが馬車の中から少女を抱えて出てきた。


「お嬢様はすでに眠らせております。あとこちらが荷物と届け先に渡していただく手紙となりますね」


 そう、ちゃんと手紙を書いてもらった。いきなり俺が届けたら怪しい人だと思われてしまうからな。


「それとこちらが睡眠薬です。出来ましたらあまり連続の使用は避けていただきたいのですが…」

「わかった」


 まあ次を飲ませることはないと思うけど。荷物を睡眠薬を受け取りインベントリにしまう。


「お嬢様はどちらに寝かせればよろしいですか?」

「ここ」


 俺はネコルーの背中を指でつつく。


「なるほど。たしかにその生き物の背なら落ちることはなさそうです」


 そうなんだよね。理由は知らないがネコルーの背中からはなぜか落ちない。変な姿勢でいてバランスがおかしくても落ちないんだ。両手を話して立ち上がっても多分落ちないだろう。やったことはないが。つまりネコルーに乗ったまま武器が使えるということになる。


 ローレンスさんはお嬢様をネコルーの背にそっと乗せると数歩下がり頭を下げた。


「お嬢様をよろしくお願いします」

「わかった」


 頭を下げているローレンスさんを背後に送りながら俺はネコルーに乗り出発した。

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