217. 厳しい現実
数日前エルフの里に向かう途中シズクに言われ寄った場所…魔吸ダンジョン。まあ実際はダンジョンではなくその手前で自給自足…と言っていいのかわからない家族達がいた。その親たちが怪我をし食事に困っていたところを助ける形になったわけだ。そして今回帰る途中様子を見るために少し寄ることになったわけなんだが…
「…これは一体何が?」
魔吸ダンジョン前は数日前と打って変わりかなり荒れ果てていた。ダンジョンの入り口は塞がれていないが外は荒らされいろんなものが散らばっていた。食べ物だったと思われるもの木片が多数。これは布だろうか…地面のおうとつも目で見てわかるぐらいデコボコだ。
「あいつらはどうなったんだ?」
いや気持ちはわからんでもないがそんなことを俺に聞かれてもわからんが。シズクは辺りをうろうろとして多分その姿を探している。
「……」
ところどころ血痕もあるんだよな~…襲われたのかな。やっぱり集団から外れて暮らすのは厳しいってことなんだろうかね。まあ俺もフィレーネに行けなかったら同じようになっていたかもしれないんだ。この辺はルーに感謝だな。
「リョータ来てくれっ」
シズクの姿が見えないが声が聞こえてきた。
「こっちだ」
ダンジョンの入り口からちょっと外れたところから手をひらひらさせたシズクが見えた。なんだろうか? その方向へと向かってみるとそれがはっきりと見えてきた。
「これは…」
そこにはシズクが探していた人たちがいた。お互いをかばいあうように折り重なって傷だらけで生きているかどうかもわからない状態だ。
「頼む生きていてくれ…っ」
願うように言葉を紡ぎながらシズクは手持ちのポーションを取り出し順番に傷口へと振りかけていく。でもそのシズクの顔は歪んでいくばかりだった。俺は知らなかったのだが傷口が回復するのは生きている者だけですでに息がないものはポーションを使っても傷が塞がらないらしいと後で聞いた。状態がひどいときに無理に飲ませようとすると喉に詰まらせてしまうから確認のために行うことなんだとか。
「あ…」
ポーションを使用していたシズクの手が止まる。
「どうした?」
「子供達が生きてる! リョータヒールをっ」
「わかった!」
俺は2人の子供に順番にヒールをかけた。ただのヒールなのであまり深い傷だと効果が薄いが、生きてさえいれば命を繋ぐことくらいは出来るだろう。ヒールをかけるとさっきまで呼吸も怪しかった子供たちが少し苦しそうに呼吸を始めた。命が助かったことはいいことなんだが…完全に回復してやれないことがくやしい。
「生きてるやつがいてよかった…俺のせいでみんなとか」
「…シズク?」
途中で言葉を止めたシズクが子供たちの傷へとポーションをかけ始めた。深い傷は完全に治せないだろうがとりあえず表面上の傷口は塞がる。目が覚めたら直接飲めばきっと効果もあがるだろうしね。
「とりあえず子供達はこれでいいとして親たちの方を埋めてやらないとな」
「そうだな」
土壌改革で土を柔らかくし穴をシズクと2人で掘って埋めてやった。火が使えるともっとよかったかもだけど俺もシズクも火魔法が使えないから仕方がない。
「それで子供たちはどうするんだ?」
「回復するまで箱庭で預かれないか?」
箱庭でか…もちろんずっととかじゃないなら構わないが、傍に誰かついていないとだめなんじゃないだろうか?
「誰が面倒みるんだ?」
「俺が見るよ…もちろんリョータが必要なことは手伝うからその時は声かけてくれよな」
「まあそれならいいが」
回復した後どうするのかを聞き忘れたがひとまず俺たちはいったん箱庭へと入っていった。