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210. お姉ちゃんだし

「一度休憩にしましょうか」


 ルリアーナさんは立ち上がり部屋を出ていった。残された俺たちはどうしたらよいのかわからずそのままソファーに座っていた。


「私達姉妹だったのね?」

「ルー…俺、最初から知ってたんだ。ただいなくなったおやじを探してて…」

「そう…でも今の話の通りだとするとすでにいません。私の父親もそうですから。と言いますかあなたはまだ一緒に過ごせただけましですよね? 私とジエルは生まれた時からすでにいなかったんですよ」


 ジエルは何を考えているかわからないけれど、ルーとシズクの話によるとシズクは父親が勇者だというのを黙っていた。ルーは多分そうじゃないかと思っていたから以前シズクに対しての会話があんな感じだったってことか。


「で、結局俺が呼ばれたのはガチャのスキルのせいだとはわかったけど…それが何なんだろうな」

「それは後程説明があると思います」

「ルーは知ってるの?」

「もちろんです。リョータさんのスキルはとてもすごい物なんですよ?」


 すごいと言われてもすごさの程度がわからんな…だってさっき聞いた勇者の話の方がやばいだろう。たけすごい奴だったんだな? ただ記憶がないし、環境によっては同じことが出来るようになるかわからない。その辺が残念な人になっている気もする。現在は言われるままレベル上げのためにダンジョン攻略中だしな。というかまだダンジョンにいるんだろうか? そのあたりのこともわかるのなら教えてもらいたい。


 お茶をすすりながらぼんやりとしているとせんべいを食べる音が響いてきた。あー…確かに緑茶にせんべいは合うかもだけど、こういった話のお茶うけには向いてないよな。


「ジエル行儀が悪いよ?」

「むー…」


 せんべいを食べてたのはお前かよ! しかもせんべい片手にお絵描きを始めている。


「あら…それはシズクさんね?」

「ん、俺?」

「そう。ルーのもある」


 そういってジエルは別のページを開いた。腰に手を当てどことなく怒っているかのような表情のルー。


「私そんなに怒ってばかりだったかな?」

「ルーはもっと私に優しくしてくれてもいいと思う」

「もう…っ」


 ジエルの護衛兼教育係じゃ仕方ないよな。


「シズクはいい子」

「よせよ…」

「私お姉ちゃんだし」


 ジエルは身を乗り出しシズクの頭をなでた。言葉では嫌がっているシズクもジエルには叶わないのか大人しくなでられている。義理の姉妹だけど仲良くしているのはいいことだな。ルーとジエルはこんなふうに仲良くしているところは見たことなかったし。


「ルーもいつも頑張ってる」

「ジエル…」


 反対の手でルーの頭にも手を伸ばしなで始めた。ちょっと疎外感を感じる俺。まあ仲間に入ることは出来ないよね。そんなことを考えているとシズクと目があった。


「リョータ…救世主様? 勇者を、父を助けてください」

「ジエル…」


 普段感情をほとんど顔に出さない子なのにその表情が歪んでいた。もしかすると後を継ぐのに忙しくてあまり話を聞かされていなくて今回父親のことを初めて聞いたのかもしれない。そんな彼女の願いに俺は応えてやりたいとは思った。だけど…


「俺まだ何のために呼ばれたのかわかってないから、話聞いてからな?」

「わかってる。それでいい」


 冷たいと思われるかもしれないが、安請け合いは出来ないだろう。助けてやると言っておいてだめでしたじゃジエルに申し訳ない。もちろん友人でもあるから俺が何かすることで助けることが出来るのなら…言うまでもないよな。

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