182. 町長たちと食事
食事の時間となり食堂へとそろって案内された。どうやら大き目なテーブルでそろってみんなで食事をするスタイルのようだ。テーブルについているのは町長さんと多分その奥さん、俺たちと同じくらいの年の子供が1人。そこに俺達4人とネコルーとアスが加わるようだ。
案内された椅子に座るとすぐにテーブルに食事が運ばれ始めた。これは…順番に出てくるコース料理的な奴じゃないかな…はっきり言ってなんとなくしかわからないんだがマナーとか。ちらりとルーの方を見るがどうやら助けてもらえそうにない。ジエルに集中しているらしくこっちにまで手は回せない感じだ。気を付けないと何をしでかすかわからないからね。一応立場的にマナーとか知っていそうなんだけどな~ 仕方ない見様見真似で進めていこう。
結論から言おう。多分どうにかなった! ジエルとジエルを繕おうとするルーにみんな視線が集まっていて俺のことなんてほとんど誰も見ていなかった。町長さんは苦笑いを浮かべつつも黙っていたくらい。ジエルのほうが身分として上だからあまり強く言えないのだろうね。意外だったのはシズクだ。一緒に旅をし始めて食事をしたりもしたが、特別なんとも思わないくらい普通だった。それが今日とても綺麗な姿勢で食事を勧めていた。人は意外な特技とかがあるもんなんだなと思った。
食事が終わりお茶が運ばれてくると、町長さんに押されるように女の子が席を立ちあがってこちらを見ていた。多分この子がここにやってきた孫で俺たちが助けたらしい人なんだろう。
「あ…あのっ 先日は譲ってくださり助かりましたわ。この私がお礼を言うのですから感謝しなさいっ」
「「「………」」」
「…?」
どんなお礼だよと俺もルーもシズクも思ったね。言葉が出ないくらいだ。ただジエルだけはわかっていないのか首を傾げ女の子をじっと見ている。
「ほら言ったわよ!」
俺たちが無言だからか顔を赤くし怒ったように席についた。
「すみません…これでも本当に感謝しているのですよ」
「我慢した…? 我慢つらかった?」
「!!」
突然ジエルが言い出した言葉に女の子はますます顔を赤らめ一度座ったのに再び勢いよく立ち上がった。
「な、な…んのことをっ おじい様お礼は終わりました! この者たちにもう用はありませんっ 早く外に追い出して…っ」
「落ち着きなさい。それに失礼ですよ」
何だかわからないが突然騒がしくなってしまった。ルーが慌ててジエルの口を塞いでいるが、もう手遅れだと思うんだ…というかジエルは何の話をしているんだろうか? その場にいなかったはずなのにたまに妙な反応が返ってくる。
「あのすみませんが私達これで失礼します。食事ありがとうございました」
ルーが立ち上がり名残惜しそうにテーブルにかじりついているジエルを引きはがし、慌てて部屋から出て行ってしまった。ポカーンとそれを眺めていた俺も急いで立ち上がりシズクとともに頭を下げ部屋を後にする。2人を早くおいかけないとな。
町長の家を出るとすぐ外で2人は待っていてくれた。
「すみません…ジエルが余分なことを口走ってしまったばかりに」
「いやそれはいいが…あれってやっぱりあの子の休憩所を譲って欲しかった理由にかかわるのか?」
「えーと…お話は戻ってからにしませんか?」
つまりあまり周りで誰が聞いているかわからないところでできる話ではないってことか?
「そうだな。じゃあみんなは先に中入ってくれ」
「リョータさんは?」
「俺はちゃんと宿に戻ってから入るよ。そうじゃないと朝困るからな」
「わかりました」
索敵で周辺を探り人通りのない場所で箱庭を開いた。みんなには入ってもらい、俺は一人テレポートをしようして宿の前に帰る。地道な回数稼ぎってやつね。使わないとレベル上がらないみたいだから。宿の一人で戻ったけど特に不思議に思われなかったのでそのまま部屋へ。そして俺も部屋の鍵を閉め箱庭の中へと入っていった。




