167. 増えたちみっこ
箱庭の中で俺たちは一晩過ごし次の日。身支度を整え朝食も済ませたので箱庭の外へと出た。今日は移動をするために馬車に乗るか何か仕事を受けて向かうかしないといけないからね。で、外に出たまではよかったのだが現在…
「いい加減教えろよっ」
昨日、町中で話しかけてきた獣人が俺たちを待ち構えていたらしく目の前を塞いでいるのだ。しかも言っている内容がよくわからない。ルーとジエルに向かってお前たちエルフが隠してるんだろうとかなんとか。2人も意味が分からないのか首を傾げるばかりだ。
「あのへんなスキルとかも無関係とは思えねぇしな!」
さらに俺のスキルもなんか怪しいと疑われている始末だ。
「何も隠してない。疑うなら里までくればいい」
「言ったなー だったら俺をそこまで連れてけ!」
「里に帰るとこ。ついてくれば?」
「そうするわっ」
ええー…ジエルが余計なことを…ルーも微妙な顔をしているし。どうやら面倒な奴が一緒にエルフの里に向かうことになったみたいだ。
「おいどこにいく! そっちにいっても先は海だぞっ」
「あのですね…里まで距離がありますから、ギルドで仕事を受けるか馬車に乗らないといけないんですよ」
「そっ そのくらいわかってるってぇーの。なんだまだ仕事受けてねぇーのかよ」
俺たちが町の中に戻ろうとしたので何やら勘違いしたみたいだ。それにしても俺っ子か~…俺としてはまだ僕っ子のほうがましだと思うんだよね…種族はわからないけど尖った耳としっぽを生やし、可愛らしい顔をしたちみっこなんだよね。まあいいやとにかく移動手段を手に入れないとな。
町の中に入りまずは馬車の出発時間を確認。今一番早い出発の馬車はもうすでに人数がかなり乗っていて厳しそうだ。馬車に乗るのなら次のやつがいいだろう。ただ今の目の前の状態を見た限りかなり窮屈な状態で次の町まで行かなければならない。やっぱりギルドで仕事を受けて移動したほうがよさそうだ。
冒険者ギルドの中に入り仕事を探す。壁に張り出されている護衛依頼は数が少ない。獣人はあまり護衛を雇わずに自分たちで何とかしてしまっているってことなんだろう。
「なあなあ」
「なんだ?」
「あんた達立派なネコつれてるじゃんよ。馬車買った方が早くない?」
獣人の少女がそんなことを言い出した。ネコルーが馬車を引くか…うーん。
「俺馬車なんて操作できないぞ? ジエルも出来ないだろうし…ルーとえーと…」
「シズク。俺の名前な。ちなみに俺も出来ないぜ」
「私は出来ます」
名前もかわいい感じなのになんで口がこんなに悪いんだ…そしてルーは馭者がやれる、と。
「それに馬車とか高くないかな?」
「はぁ~? ちょっとは頭使えよな! そんなもんはなどうにか片道動きゃいいんだからやっすい廃棄寸前の荷馬車を、さらに値切って買うんだよっ」
いや…お前こそ頭使えよ! 1回使って捨てるようなものに金出せるわけないわっ
「いいからとにかくまずは見てみようぜ?」
「まあ見るだけならいいが…」
値段は知っておいてもいいかもだしな。安くていいのがあれば買うのもありかもしれん。シズクに腕を引かれ馬車を扱っているところへと連れていかれた。