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161. 箱庭の森で

 視界の先に森が見えてきた。だけどネコルーの姿は見えない。自転車だと流石にネコルーにはおいつけないみたいだね。


「この匂いは…森?」


 流石エルフ。森がこれだけ離れていても匂いわかるんだな。


「ああ、あと北西の方にも森があるよ」

「へー…てっきりあの家しかないのかと思っていました」


 まあね…家から全然出ていなかったしわかるわけがない。ルーと雑談をしていたらあっという間に湖の所についた。ネコルーは…あーいたいた。よかったジエルは背中から降りている。


「ジエル怪我ないか~」

「ない」


 まあネコルーの背中からは落ちることはないんだが念のためにね。なるほど、湖についたからジエルをおろしてネコルーは水分補給をしているのか。この距離を走れば喉も乾くか。


「時間もあるしここでちょっと過ごすか?」

「ここは気持ちがいい」


 ネコルーをじっと眺めているジエルはどうやらここにいたいみたいだ。ちらりとルーの方を見る。頷いて返してきた。どうやらオッケーみたいだ。


 俺とルーは川に渡してある歩道橋の階段に腰掛けぼんやりとネコルーについて回るジエルを眺めた。それにしてもまあすごい気に入りようだな。


「よかった…」

「ん?」

「ジエル、楽しそうだから」


 まあそれは俺が見てもわかる。ポーションと食べ物にはくいついてきていたが普段不機嫌そうなことが多かったし。


「今回リョータさんを探すために外へ出てきて、ポーション以外で興味を持つものはなかったの。こう見えてジエルすごい外の世界を怖がっていてね、でも来ないわけにもいかなくて…」


 ルーがジエルのことについてゆっくりと語る。ジエルは跡継ぎだから覚えなければならないことが多くて、エルフの里からすら出たこともなかったこと。フィレーネまで連れてくるのがやっとで王都までは連れていけなかったこと。数年そこで過ごすうちにポーション作りにはまったこと…なるほど。ルーが商人をやっていたのはジエルが好きで作っているポーションを減らすためだったのか。作るだけ作って放置しておいたら場所を取って邪魔になるしな。


「私はねジエルの妹だけど、魔法が得意じゃないから…ジエルの護衛なんだよ?」

「護衛…」

「だから小さなころからジエルを守るためにいろんなことが出来るように教えられた。だけどジエルはいつもつまらなそうで、なんで姉だからって一緒にいて楽しくない相手といなければいけないんだろうと思ってた」


 そこでいったん言葉をきるルー。俺は静かに続きをまった。


「…立場が違うだけで一緒だったんだね。ううん、自由に動き回れるだけ私の方がきっと楽だった」


 バタバタとしている毎日だったところ、こうやって森で落ち着いて座ることが出来たからなのかルーは色んな事を話してくれた。だけど一番聞きたい俺がなぜ2人の母親に会わなければならないのかについては教えてくれなかった。本人から聞くべきだから、と。


「あ…」

「なんだ?」

「この森少ないけど妖精もいるのね」


 そうなんだ? ルーには何が見えているんだろう。俺にはそんなものは全く見えない。もしかしたら何度かやった扉の開閉でたまたま入ってきてしまったのかもしれない。


「紛れ込んだのかな…出してやった方がいいか?」

「うーん…森も水も綺麗だから問題ないと思う」


 そりゃそうだ。基本俺とネコルーしかいないんだし。


「ただ生えている植物の種類が少ないのかな? 妖精の種類も少ないから…」


 なるほど妖精には好みの植物があるらしい。


「ルーも楽しそうだな」

「え? あ…妖精はずっと相談相手だったので」


 ちょっと顔を赤らめルーはうつむいてしまった。妖精が相談相手って言うのは恥ずかしいことなのか? ちょっと考えて見る。妖精は基本見えない…どうやらエルフには見えるらしい…フィレーネに数年いたルー…森で他の人が見えない妖精に相談をする…つまりなんだ。数年住んでいて相談できる友達もいなかった、と。


「…俺でよければ相談のるぞ?」

「ふぇっ?」

「というか俺すっかり友達だと思ってたわ」

「いいの…? 人の命は短いのに私みたなエルフと過ごす時間に使って」

「むっ つまりなんだルーは用事が済んだら俺はもう用なしってことだったのか?」

「そ、そんなことは!」

「だったら、どんな用があって呼ばれたのかは知らないが、それが片付いた後だって友達なのは変らないだろう?」

「あ…」


 ルーは自分のほうがおかしなことを言っていたと気がついたのか口を押え、ちょっと照れくさそうに「ありがとう」といってほほ笑んだ。

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