152. ジャンプジャンプジャンプ
外が暗くなり船を予約していることになっている時間にまもなくなる。俺とジエル(セブンシ―)、ルー(ミリエル)は宿を抜け出し人目を避けるように船着き場へと足を運んだ。索敵を展開し周囲を警戒してみるとところどころに隠れるように何かがいるのがわかった。まあこれが護衛なのかダルシア男爵の手の物かわからないのがちょっと問題だね。確認する手段はないこともないけれど、わざわざ自分から危険なことをする必要はないだろう。
さて…船着き場についたが周りはどう動くのか。船の所にいる船員に俺は話しかけた。もちろん本物じゃなくて護衛の一人。すると物陰に隠れていた人たちの一部が俺の方へと近づいてくる。
「おうおう兄ちゃん…こんな時間に船を出すとかなんかやましいことでもあるのか~?」
にやにや顔の男たちが俺たちを囲むように並び始める。ごろつき…ん-それともダルシア男爵の手の者だろうか。流石に今は判断できない。ジエル(セブンシ―)とルー(ミリエル)をかばうように前に出る俺。焦ったふりをする船員。男たちはただニヤニヤとしながらじりじりと囲みを狭くするように近づいてくる。何をするつもりだ? ぎりぎりまでこちらから手を出してはいけないと言われている。とういか相手が悪いという形が必要なんだとか。まだ今はただ声をかけられただけで何もされてはいない。ただ問題は…セブンシ―が大人しくしていてくれるかどうかだよね…
「…!」
男の一人がセブンシ―の腕をとった。すごいハラハラする! 心配しているのはセブンシ―じゃなく男の方。頼むから過剰に攻撃しませんように。
「何するのよ…っ」
グイっと腕を引いた男の腕を思いっきり払いのけた。するとその男はなぜか後ろの海の方へと飛ばされ落ちた。えー…払いのけただけでそれとかないわ~
「このっ」
「結界!」
怒った他の男たちが一斉に武器を構えたので俺はすぐに結界を張った。結界にはじかれる攻撃達…文句を叫びながらもひたすら男たちは攻撃を続ける。一度通らなかった攻撃が通るはずがないんだけどね…結界を上回る威力がないと解除出来ないよ。さて、こちらは問題なさそうなのでちょっと索敵中におかしな動きをしていた人を追いかけようか。ここにいる男たちは次々とセブンシ―とミリエルに倒されていく。護衛いらなかったんじゃないかな…
おかしな動きをしていたのは男たちが俺たちを囲んだ後、近づいて来ようとしていた人がいたんだけど…一人海に投げ込まれたところで近づくのをやめて逃げ出したんだ。そいつをジャンプで屋根に上り屋根から屋根へとジャンプをして追いかける。ちょっとジャンプをするのが楽しい。まあ危なかったら浮遊を使えば落ちても地面に叩きつけられることがないことに気がついたので好き放題ジャンプする。いた…小太りの男が必死に走る後姿が。
「ダークネス」
杖を取り出しその小太りの男を縛り上げた。逃げられないように1本でぐるぐるっとね。立っていられなくなった小太りの男はその場に倒れこむ…
「くそっ なんだこれは…! この…」
「やっぱりダルシア男爵でしたか」
転がっているダルシア男爵の前に飛び降りた俺は地面に転がる男をじっと見つめた。一人…こっちに近づいて来ている人がいるみたいなので警戒は忘れない。動けないダルシア男爵のうるさい口もついでに塞いでおこうか。魔法を使われるとやっかいだしね。
「むぐーっ むー!」
余計うるさくなった…
「あなたという人は…まあ怒るのは後にしましょうか。ダルシア男爵も捕まえたようですし」
近づいて来ていたのはアルバトロスだった。一人逃げ出したことに気がついて追ってきたんだろう。
「まずは魔法やスキルが使えないように拘束してしまいましょう」
なにそれっ アルバトロスが取り出したのは両腕にはめる腕輪状のもの。それを付けられるとスキルや魔法が使えなくなるらしい。主に犯罪者に使用するものなんだそうだ。
「これでいいでしょう」
さらに頑丈そうな縄で体も縛り上げられているダルシア男爵。その垂れ下がった縄をぐいぐいとアルバトロスが引っ張るが抵抗して歩こうとしない。
「連れていきたいんですが…」
「あーじゃあ…浮遊」
ダルシア男爵にスキルをかける。自分にしか使えないって書いてなかったからね。試してみたら使えるみたいだし。少し浮き上がったダルシア男爵は踏ん張りがきかなくなりそのまま連れていかれた。