148. 山のふもとで豚骨ラーメン
フィレーネを出発して西にある山のふもとの森の中へ。開けた平原の移動は何事もなく進んだ。ここは以前ネコルーと出会った森だ。こうして森の中の街道を通って進むのは初めてのことでゆっくりと移動していく外の景色をぼんやりと眺めていた。もちろん馬車に結界は張ってある。ちゃんとやらないとアルバトロスに怒られるからね。
それにしても…ちらりと馬車の中を見渡すとフードを被った2人の女性。ぜんっっっぜん会話がない。もちろんいいんだけど、ちょっとくらいは会話してもいいと思うんだよね。2人とも仕事だからと無駄口は必要ない物だろうと黙ったままだ。出発前に騒がしかったことが嘘のようだ。
「ヨルさん…港町のこと教えてよ」
「ああいいぞ。何について聞きたい?」
馬車の中から馭者台の小窓に向かって外にいるヨルさんに話しかけた。せっかくなのでこれから向かう町について聞いておこうと思う。港町と言うくらいだから新鮮な生の魚も手に入りそうですごく楽しみである。
「やっぱり食べ物についてかな~ たしか生魚が手に入るんだよね?」
「ああそうだ。干していない魚が欲しいならやっぱり港町じゃないとな」
うん。ここで生魚を手に入れておこう。ただどんな魚があるのか不安もあるが、現地の人が食べているくらいだからとりあえず焼けば食べられるだろうとは思う。あとはやっぱり海ということで塩も取れるみたいだね。まあ複製が出来るようになったから困ることはないが。
ヨルさんと港町のことを話していたら、最初の休憩所である山のふもとについた。この後は山を越えた先まで休めないらしい。ここでしっかりと馬を休ませ水を取らせないといけないそうだ。
この休憩所にある水源は湖だった。山の横手を通るようにぐるりと川が伸びていた。きっとあの先は海に通じているんだろう。
「先に2人に昼ご飯渡してくるよ」
「ああ、そうだな。その後で俺の分もたのむなー」
…ん? なんでだ? 他の人たちは各自食事を始めているのになんでヨルさんの分は俺が用意するの? こういう時は大人しく携帯食でいいんじゃないのか? …まあいいや。ルーとジエルにご飯を渡さないと。箱庭を使用し扉をくぐり家の中へ。1階リビングには…誰もいない。ということは自分達の部屋にいるんだろう。2階にあがり一番手前の部屋の扉をノックする。
「ルー? ジエル? ご飯持ってきたけど」
「はーい ありがとうございます」
中からルーの声がして扉が開いた。部屋の中はテーブルとイスがあるだけで他には何もなく殺風景だ。ベッドとかあるといいかもしれないか、まあ寝室と調理場が設置してあるのでいらないだろう。
「ジエルは?」
「ポーション作ってるか寝てるんじゃないかな。声かけてきますね」
待っている間に一度1階に降りてコップに麦茶を注ぎフォークを持ってくる。ちょっと不便かもだけど、台所で食器を洗っておいておくのに便利だから利用している。調理場は…なんていうかもうジエルのポーション工房とかしていてそこで調理をしようとは思えないくらい散らかっている。
「お待たせしました」
「…なんか臭いぞ」
「あーポーション被った…」
今日被ったばかりの匂いじゃない気がする…まあ俺はここで食事しないから別にどうでもいいが、そんな匂いさせてたらルーがかわいそうだ。
「…せめて洗い流しておけよ?」
「わかった」
2人がそろったのでテーブルの上に豚骨ラーメンんを2つ取り出した。
「食べ終わったらまた洗っておいてくれ」
「わかりました」
俺の用事は終わったのでまたヨルさん達がいるところへと戻っていった。もちろんそこでも豚骨ラーメンを取り出して食べたんだが、セブンシ―とギルドマスターのミリエルはその匂いに顔をしかめていた。おいしいのに…ちなみにヨルさんは喜んで一緒に食べていた。