144. そういうこと
ルーとジエルの食事が終わり、バナナジュースをジエルに要求されたのでそれを出しておき。地図で3人の位置を確認。それによると北西をのほうへ向かっているみたいだ。
「3人を戻してくるから、ルーとジエルはまだ話があるかもしれないからちゃんとしておいてよ?」
「んー」
「はい、わかりました」
バナナジュースで口の周りがべたべたになっているジエルにいっているんだけどね? もうね、姫って話聞いてもねなんとも思わんですわ。普段こんなだし。今更だし?
民家を出てインベントリから自転車を取り出し3人が向かった方へと走り出す。普通に走ってもいいんだけど、折角ここなら乗り回しても誰の迷惑にもならないし、そのぶん楽だから移動には自転車が使いたいよね。走り始めて少しすると3人の後姿が見えてきた。うん…ステータスのせいだと思うんだけど自転車の移動もかなり早い。壊してしまう前に複製しておいた方がいいかもしれないな。
自転車である程度の距離まで近づくとお供の人が先に振り返って驚いていた。そして2人も気がつき振り返る。
「リョータなんだそれ!」
「魔物? いや…魔道具か??」
「ただの自転車…一人用の人力車的な?」
「いやなんでそこでお前が首を傾げるっ」
そんなこと言われても説明が難しいんだよ。
「ほら馬車には車輪があるだろう? これが同じような物。で、馬とか動物がいらなくて自分でこう…ここのところを回転させると前に動くっていう乗り物だね」
「ふむ…車輪が2つで安定するもんなのかね」
「あーうん、自分でバランスを取らないとひっくり返るね」
「また難儀な」
「ちょっとリョータ俺にやらせてくれ」
どうやらヨルさんが乗ってみたいらしい。簡単に乗り方を説明するとふらふらしながらもゆっくりと自転車が前へと動き出した。
「お…おおっ 中々難しいなっと。ところでリョータこれ止まる時は?」
「あ…」
肝心なブレーキを教えるのを忘れていた! そして俺に話しかけて振り向いたためにバランスを崩し転んだヨルさん…すまん。ヒールかけるから許してくれ。
「それにしてもここは一体どういった場所なのかね?」
足元の草に触れジルベスターさんが聞いてきた。うーん…なんて説明した物か。
「俺も詳しくは知らないんですけど、まあスキルで出した…いや繋げたのかな? 別の世界だと思います」
「つまり君はこの世界の神になったということなのかね?」
「神、ねぇ…この世界を作ったのは俺じゃないので違うと思うけど」
「だがこの世界を管理するのだろう?」
「あーまあそうなんですけど」
ずいぶんと小さな世界の神様だね。まあただのスキルなんだけど。
「エルフの姫に別世界の神か…とんでもない知り合いが出来たものだ」
ジルベスターさ~ん? 自己完結してること悪いんだけど多分間違ってるよ…訂正したほうがいいの? しない方がいいの?
「スキルですからね?」
「ああわかっている。ちゃんとそういうことにしておくよ」
わかってないじゃん!
3人を連れて扉をくぐりジルベスターさんの執務室へと戻る。終始無言だったお供の人がここで息を吐き出した。多分一人だけ色々と警戒をしていて疲れたんだろう。
「それでこれからどうするんですか?」
「それはもちろんダルシア男爵を罠にはめる作戦を話し合うんだ」
「2人も呼びますか?」
「いや表立って動いてもらうわけじゃないから決定した内容を伝えるだけでいい」
「わかりました」
そしてダルシア男爵を罠にはめる作戦の話し合いが始まった。その結果やはりおとり役は俺なわけで…もうため息しか出ないね。




