143. 笑いをこらえるのがつらい
黄色く光る扉を開けると中からルーとジエルが出てきた。そして驚いた。ルーはいつもよりちょっとだけいい服装って感じなだけだけど、ジエルがすごく着飾っている。なんていうか見慣れない…誰?
「この扉ははこの間たまごを取り出した…」
「まあ小さな別の世界みたいな場所に繋がってるよ」
ヨルさんが扉を見て驚いた。
「君たちは…?」
「お初にお目にかかりますムコン伯爵。私はジエル・ラライラと申します。隣にいますのはルー・ラライラ、私の妹です。このような形で挨拶をすることになったことをお詫びいたします」
本当に誰だ…丁寧に頭を下げる動作とかとても慣れているとしかいいようが…ん?
「ラライラ…そうか君たちはエルフの姫なのか。ますます問題じゃないか…っ この度はこちらの領地の者が大変失礼をしました」
「いえ…こちらの行動も軽率だったのです」
気のせいじゃない…喋ってるのジエルじゃない。よく見るとルーが喋ってる! ジエルはそれに合わせて自分が喋っているかのようにふるまっているだけだ。
「…姫?」
「ああラライラと言えば今エルフを治めている者だからな。つまり2人はエルフの国の姫というわけだ」
「たしかに母は国を治める者ではありますが…姫というような立場はございません。あくまでもエルフの国の1国民であります」
姫ってこと普通ならもっと驚くところなんだろうけど、2人の行動がおかしすぎて頭に入ってこないんだが。
「友好な関係を築いてくださってることに感謝すれ、そのように頭を下げる必要はありません」
「ありがとうございます」
ジルベスターさん頭下げてたのか…2人が気になって全然気がつかなかった。
「それにこちらのリョ…、こちらの者が救ってくれました。お礼を申し上げたいくらいです」
「君はこちらの方たちと知り合いだったのかね?」
「ん? ああ、この町に来て最初に声をかけてもらったんだよ」
ぐうううううっ
「……」
「……」
「……」
「…失礼。食事の前でしたのでこのような醜態を」
もうだめだよルー…ジエル全然演技できてないよ! お腹空いたほうが先みたいだ。それに俺も笑いをこらえるのがつらい。
「ジルベスターさん、2人に食事をさせていいですか?」
「ん、ああ、もちろんだ。そうだあれなら早いだろう?」
そういってジルベスターさんが指でカギカッコを作った。
「あーそれなんですけど…スキルの内容が変わってしまって」
「な、なんだと! じゃあもう食べられないのかい?」
「まじかリョータ…何に変わったんだ?」
「ご飯…」
「あー食事の後でいいですかね?」
「ああそうだな」
「ではちょっと行ってきます」
箱庭を使用し扉を出した。さっさと中へと入る2人を追いかけて俺も入ろうと扉に手をかけたところで声をかけられた。
「なあリョータ2人が食事の間その中見学出来ないか?」
「…別にいいけど、まだ何もないよ?」
「どんなところなのか見たいだけだから構わないさ」
「私も行っていいかね?」
「…いいですけど、睨まれていますよ?」
ジルベスターさんの後ろでいつも立っている人がじっとこちらを見ていた。まあ普通に領主だけを連れて行ったら怒られちゃうよね。ちゃんとお供の人も一緒でいいですよと…ね。
結局ヨルさん、ジルベスターさんとそのお供の3人が追加で中へと入った。
「では俺は食事を用意してくるのでおすきにどうぞ。魔物とかはいないんで大丈夫だと思うけど、水場だけはあるので足元には注意お願いしますね」
「ああ…すでにどうしていいのかわからんくらいだがな」
3人を放置して俺はルーとジエルのご飯を用意するのだった。まあパンは置いておいたのでスープを出すだけでいいと思うけどね。