124. 知っている場所
森の中を音がする方へ向かってただひたすら走った。酷い惨状…草木はあちらこちら倒され、すでに死んでいる魔物が転がり、人も座り込んでいる。動かないので生きているのか死んでいるのかはわからないが、今は元凶の排除が最優先。
「こっちか?」
ありがたいことに向かっている方向には倒れている魔物はいても襲っていくる魔物がいなく、目的地に到達した。途中から姿がちらほらと見えていたが、地竜は思ったよりは大きくなかった。身長にしてネコルー…馬などの3倍くらいの高さ。竜にしては小さく見えるが力はあるのだろう。あたりの木々がいくつも倒れている。
「ガルシアさん!?」
地竜と戦っていたメンバーにガルシアさんの姿を確認。他にも数人いるがやはり地竜にダメージを与えれているとは思えない。少しは血を流しているみたいだけど…さて、テレポートでこの地竜を俺が連れていくのにはどのくらいの魔力がいるのだろうか。
「なっ リョータなんで来た!!」
「もちろん地竜討伐の手伝いですよっ …テレポート!!」
さあ、好きなだけ魔力も体力も持って行ってくれ。これで俺も少しはこの世界に召喚された意味が…ああそうか。俺、役に立ちたかったんだな…ガチャしか取り柄がないけど、まだこの世界に来て日が浅いけど…でもこれで!
ふわっとした感覚とさっきまでしていた緑の匂いや血の匂いが薄くなったことに気がつき、俺は目を開けた。よかったどうやらたどり着けたみたいだ。もし魔力と体力で補えなかったらどうなってたんだろうという気もしたが、今は…
「すまん、後よろしく…」
「な、な…なにしてるんですかー!?」
久々に聞こえてきた声を耳にしながら俺は意識が遠のくのを感じた。
どのくらい時間が経ったんだろうか。目を開けるとあちらこちらに色んなものが見えている。あれは…ボロボロになった森。誰だかわからないけど動く人が数人いる。こっちは…全く知らない村。あっちは…あ、ヨルさんが町の中で走り回っている光景。それと、たけ…たけ達がダンジョンの中で魔物と戦っているのが見えた。
「気がつきましたか? といいますか無茶しますね~」
「おっす 約1か月ぶりかな?」
「はいはい、こんにちは」
俺は目の前の久しぶりにあった幼女に挨拶をした。そう、あの幼女だ。俺が異世界へと行くときに会った幼女。相変わらずただのコスプレにしか見えないが。
「そうだ、地竜はどうなった?」
「あーあの子でしたらここに」
「…たまご?」
幼女が抱えていたのは彼女の身長の半分はありそうな大きなたまごだ。ここって言うくらいだからそのたまごを指している…んだよな?
「はい、私がむやみに命を奪うわけにはいきませんので…時間を戻してたまごにまで戻っていただきました。ってそれはいいとして、よくここに来れましたね?」
「んー いやだってここはある意味天国みたいな場所だろう? だったら地上と繋がってたっておかしくないじゃん」
「思い込みというやつですか…いいですか、ここはそもそも違う空間なのでレベルが上がろうと普通テレポートで来ることは出来ないんです。そんな無茶をするせいでまた死ぬところだったんですからっ」
「まじで?」
「大マジです!」
つまりもうテレポートで来ることは出来ない。そして俺は生きている…なら何も問題ないだろう。
「まあ助かったわ。あ、そうだついでなんだけど、俺のステータスなんかおかしくないか?」
「……はい、ガチャを無理やりねじ込んだ影響が出ているみたいです。これを通常に戻そうとするとガチャがなくなってしまいますがどうしましょうか?」
「ステータスが高すぎることで何か問題が出たりしないか?」
「……日常生活に気を付けてください、としか」
つまりレベルが上がりすぎると何かしらやばい…と。まあいいか強い分には。レベルは出来るだけ上げないようにしようか。
「ふぅーん…まあいいやじゃあ俺帰るよ。というか帰してくれ?」
「わかりました。あーついでにこの子も連れてってくださいね」
…たまごだ。いや、連れ帰ったらまたそのうちあばれるじゃないかっ
「困るんだけど…」
「大丈夫ですよ。たまごのうちにテイムでもしちゃってください」
「いやいやいや…デカくなるのがわかってるのに置いとけないだろうが」
「あーそれもそうですね…では大きな子でもいられる場所があればいいですね。スキルおまけしますから…はい、出来ました。ここで育てればいいかと」
箱庭:小さな別世界。好きなように自分で世界を作ることが出来る。作るためには魔力の消費が必要。
…まじか。
「では良い旅を」