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123. どこかに…?

 変化が訪れたのはそれから少ししてのことだった。妙にケガ人が増え、俺も回復を手伝う。ポーションにもやっぱり限界があってお腹の都合でたくさんは飲めないし、意識のない人に飲ませるのは難しい。そうなると傷に直接振りかけるしかないわけだが、これだと表面の傷は塞げるが、内側まで塞ぐことが出来ない。なのでポーションを振りかけて足りない分を魔法で補っている感じ…でもすべての人をちゃんと治せるわけではない。重傷者は無理に直すより応急手当をして休ませている。その傷を治す魔力がたくさん必要になるので、それよりも多くの人を再び討伐へと向かわせなければならないのだ。


「…ふぅ」


 何が起こっているんだ? さっきからここ忙しすぎじゃないか?? ベッドは全部埋まっているし、予備のシーツを地面に敷いて横になっている人もいるくらいだ。俺が拡張したスペースにまで座り込んでいる人がいるし…これちゃんと討伐終わるんだろうか。


 まあそれでも力の限りみんなで頑張らないと魔物が町にまで来てしまう。するとケガ人だけはすまないだろう。この世界に不慣れな俺だってそう思えるんだ。現地の人はなおさらなんだろうね。必死さが伝わって来てちょっと呑気に動いてた自分が情けない。


「大変だーーーー!!」


 大きな声を張り上げながら森の中から傷だらけの男が飛び出してきた。何事かと外で作業をしていた人たちはみんな声の方へと視線を向けた。もちろん俺もその一人で、続く言葉を待っている。


「魔力だまりは消えたが、最後に大物を吐き出しやがった!! ……地竜だっ」


 地竜って…土属性のドラゴンってことか? 2足歩行の大きなトカゲのことだったりしないかな…名前通りとは限らないし。


「終わりだ…」

「どこへ逃げればいい」

「早く家族を連れて逃げないとっ」


 叫ぶ人、その場に座り込んでしまう人…ケガ人を放置して町の方へと逃げていく人もいた。なぜこんなに騒ぎになっているのか俺にはわからない。確かにドラゴンとか強いんだろうけど、みんなで協力したら倒せるんじゃないのか?


「あんた何してんだ! 早く逃げないとじきにここまでやってくるぞっ」

「え? だって討伐部隊の人がまだ頑張ってるんじゃ…」

「そうだよ…そうなんだけどっ どれだけ生きているか…! そもそもドラゴンなんて倒せるのは噂の勇者くらいだろうがっ」


 それだけ言うと走り去っていってしまった。みんな自分のことで精いっぱいで、動けないケガ人たちはあきらめているのか涼しい顔をしている。いや違うか…震えを必死に抑えて耐えているんだ。俺はどうしたら? 一応俺も勇者として召喚された仲間の一人だろう? 直接倒すことが出来なくたって何か方法はないのか…? スキル…魔法…だめだ、倒す手段もなければ弱体化することも出来ない。だけどこのままだとここに残っている人たちは確実に死んでしまう。もちろん町に行った人たちだって無事に済むかどうかはわからない。ドラゴンがどこかに行ってくれない限り無理だろう…


「どこかに…?」


 俺ここからドラゴンを移動させるだけなら出来るんじゃ。でもどこに…俺が移動出来るのは言ったことがある場所だけだ。一時的に移動させたとしても今度はそこがひどいことになるだけだよな。せめて移動させた先にドラゴンが倒せる人がいるのなら…たけ今の強さで倒せるかな? 流石にまだ無理な気がする。他に倒せそうな人………あっ


「いた…これ確実なんじゃ」


 ただ問題はそこへ俺が行けるか、だが…テレポートの項目を眺めるが見当たらない。というかここから俺が行けるのは東の森とその森の休憩所。それと王都に行ったときに最初に泊まった村の手前だ。だけどっ


「魔法は想像力!! いけないなんて嘘だっ 魔力が足りないというのなら体力を消費したっていいんだ! だってあそこは行ったことがある場所だろう!?」


 再びテレポートの項目を眺めると目的の場所が表示された。それを確認した俺は自分に結界をかけ森の中へと走っていった。

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