とあるギルド職員視点③
しばらく平穏な日常が続いていましたが、久しぶりにあの仕事がやってきました。そうです…西平原の草取りですね。もちろんその仕事を受けたのはあの人です。でも今回は嫌な顔はいたしませんよ。これでもギルド職員は接客業ですからね。こういった特殊な仕事の場合の対策は練れるのならちゃんと考えておくものです。そして私は考えました。彼の仕事にはまともに付き合うべきじゃないということを理解しています。
西門へ行くと彼と合流しました。それほど長い期間草取りをされていなかったわけではないのにもう前回抜かれた場所にも草が生えてきています。この土地を利用したほうがいいんじゃないかと思う方もいることでしょう。ですが、こういった町の傍は広々とした土地を確保しておくものなのです。あまりいい話ではありませんが戦争とかになった時にテントを張る場所にもなりますし、もし森から魔物がやって来ても塀の上から攻撃するのに見渡せてよいですね。今のところそう言ったことに使われたことはありませんけど、町のすぐ外にまた違う町があるというのもおかしな話ですからね。
彼は早速走って行ってしまいもう姿が見えなくなりました。さて、私はこの間に読書でもして待ちましょうか。往復で戻って来た時の回数さえ数えて置けば何も問題はないでしょうし。私の計算がおかしいと言われても誰も文句は言えないのです。文句を言うくらいならその人が監視すればいいのですからね。つまり私がこれで合っていると言えばそれで終わり。実際しっかりとは見ていないですが、もうこの監視も3回目です。同じように草を抜いているのでしたら問題なく出来ているはずですからね。何も問題はないでしょう。
たまに休憩で水分を取っていた彼がとうとう足を止め私の所へ向かってきます。今日は終わりにするんでしょうね。読んでいた本を閉じ私はペンを用意しました。
「はい、終了印です」
「ありがとうございますー」
依頼書に私の際を入れました。これで私はギルドに戻り報酬金の報告をいたします。でもその前にちょっと気になっていたことを聞いてみました。
「そういえば久しぶりにこの仕事を受けたのですね」
「あーちょっと王都にいっていたんですよ」
なるほど…それでしばらくいなかったのですね。でも王都となりますとたしか勇者様のお披露目があったはずです。つまり彼はそれを見に行っていたというわけですか。ちょっとうらやましいです。それをたずねてみるとやはりそうでした。気になっていた勇者様のことを色々聞かせてもらいます。その話の中で逆に私が教えることがあったのが驚きですね。やはり誰もが勇者様のことを知っているわけじゃないみたいです。
ですが…魔法やスキルが勇者様のおかげだというのを知らないというのは流石に少し妙ですね。まあ田舎にいて教えられていないだけなのかもしれませんが。