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第三章 22.解放(前編)

 ……ダルタ、……ダルタ、……ダルタ、……聞こえないの? ……ダルタ?



 ……なんだよ、邪魔すんなよ。……オレは牙を持つ獣なんだ。もっと奴らを殺すんだ。ほら、まだあんなにたくさんいるじゃないか――。


 目に掛かる赤い靄の向こうには、怯え、喚きながら槍を振り回す、黒い鎧を着けて馬に乗った奴らが……まだあんなにたくさんいて……。


 はっ!? ――意識が飛んでいた? どのくらい忘我の時間があったのか、周囲には死んだ馬、折れた槍、血まみれの潰れた鎧の騎馬兵がたくさん転がっていた。


「ぼ、僕は、どうしてたんだ? 騎馬兵団の列の横腹から突っ込んで反対側に抜けて、逃がすものかと、最後尾まで駆け抜けて……」


(ダルタ、ルマンから連絡、……あるよ)


「何? 東大門はどうなったの?」


(東大門、南大門は奪還成功。ただし西大門に敵の増援あり。……サーラ、苦戦中、だって)


「えーっ! サーラ先生が? 大変だ、直ぐに戻らないと!」


 この東の街道に誘き出されたバールーク兵は死者数が全部隊の半分にも及び、最早、戦意は見られなかった。見たところ怪我の一つも無い者はおらず、黒い巨獣がまた殺戮を始めないかと、ビクビクとこちらを見ている。


「今からすぐ東大門に戻るから、扉を開けておいてと伝えて!」


(わかった)


 背中に大剣があるのを確認してそのままカーシナラの東大門へと走り始める。


 これを全部僕が一人でやったのか?


 魔導鎧カヴァーチャが駈けて行く街道沿いには、バールークの騎馬兵団の残骸があちらこちらに散らばっていた。生き残りもかなりいるが、怪我の全く無い者はおらず、全員が心を折られた、怯えた顔をしていた。


 駈けていく地面がなんか近い。と思ったら、まだ四つん這いのままだった。でも二本足で走るよりも速い気がするから、まあいいか。


 走り出してすぐにカーシナラの城壁が地平線に見えてきて、段々と城門が大きくなって近づいてくる。


 東大門の見張りからも僕を認めたらしく、大扉が開かれ始めた。半分ほど開いた扉から中に滑り込む。


『ダルタ!』

 知ってる声に振り向くと、ジーク兄さんが城壁の上にいた。頭には包帯を巻き、激戦を潜り抜けたことが窺われた。


「ジーク兄さん! サーラ先生は大丈夫なんですか?」


『西大門前の広場で敵軍と対峙している。ルマン様たちも支援しているが、まだ、西大門は奪還出来てないんだ。

 それよりダルタは怪我はないのか? 魔導鎧カヴァーチャで這っているなんて故障でもしたんじゃないか?』


「大丈夫です、この方が速く走れるんです!」


 素早く情報を得るとそのまま四足走法で〈大通り〉を西大門へと急ぐ。魔導鎧カヴァーチャの全身のバネを使って獣のように走り、手足が地に着くのはほんの一瞬で、まるで宙を翔けているかのようだ。


 中央大広場には立ちん坊の魔導鎧カヴァーチャが三体そのまま残されている。

「西大門まで押し返すなんて、サーラ先生すごい頑張ったんだな」


 更にオドを振り絞りスピードを上げた。ところどころに騎馬兵の残骸が散らばる〈大通り〉を駆け抜け、残りの距離を踏破して、漸く西大門前広場に到着した。


「サーラ先生!」


 そこにはボロボロになったサーラ先生の魔導鎧カヴァーチャが、三体の見慣れぬ赤い色の魔導鎧カヴァーチャと対峙している姿があった。


いつもお読みいただきありがとうございます。


えー、実はなろうにて新作の投稿を始めました。

【テラ生まれのターさん異世界に行く】

https://ncode.syosetu.com/n3877gm/


本作のダルタ君が苦労している時代の千年ほど前の世界が舞台となっております。ちょっと重い展開となってしまいました本作よりは、お気楽極楽な明るいストーリーを目指しますので、是非とも気軽にご訪問くださいm(_ _)m


後編はこのあと土曜日の零時に投稿します。

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