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第三章 18.ターカシ王の次元庫 (後編)

 僕も窓の一つにそおっと手を伸ばしてみた。指先が触れた途端に青い光が消えて、壁龕の内部が鮮明に見えるようになる。その中には、根から茎、葉まで丸ごとついてる綺麗な花が置かれてあり、取り出してみると、まるでつい今しがた土から根ごと掘り出したばかりのような鮮度が保たれていた。


「なんと、その花は曼珠沙華ではないか? 千年に一度しか咲かないという幻の植物で、霊薬ソーマの材料になる貴重なもののはずじゃ」

 ダーバ様が後ろから覗き込んで大声を出した。


 えっ!? そんなに貴重なものなの?

 驚いて落としてしまわないように、すぐにまた壁に押しつけた。するとまた壁に四角い窪みが生じ、花を残して手を引き出すと青い光に包まれた。


 順々にアルコーブを見ていたサーラ先生が言う。

「玉石混交なのじゃ。帝国の全盛期に作られたようなものから、ほんの千年くらい前のものまでゴチャ混ぜなのじゃ。ターカシ王が自分で集めて収納したものも多そうじゃな。言うなれば、ターカシ王のビックリ箱といったところなのじゃ」


「サーラ殿、あの魔導鎧カヴァーチャも確かめてはもらえぬじゃろうかのォ」


「あちらに棺のような物もあるのじゃが、六代目ブッダが昼寝してないかどうか確かめなくて良いのかや?」


「ど、どうか、ブッダ様はそのまま御永眠させておいて下されェ」


「そうか、どれどれ」

 神殿長様の言葉にサーラ先生が一際大きなアルコーブの一つに手を触れた。青い光が消えたアーチ天井の小部屋には、人族の大人の三倍ほどの背丈の、黒い重厚な金属鎧を纏った神将像、否、魔導鎧カヴァーチャがあった。


「おお、これは骨董品なのじゃ。帝国の爛熟期に競技用に製造された市販品じゃな。このカヴァーチャはな、元々は宇宙での資源採掘活動用機器だったのじゃが、外宇宙で異星文明と衝突して戦争になった頃から色々と強化されて、物騒な兵器として使われるようになったのじゃ」


「ええっ!? それってつまり戦闘ロボットだったんですか?」

 アニメで見たことあるよ!


「ん? ろぼと? 戦闘兵器なのじゃ。それを民生用に危険な火器を排除して出力もデチューンしたのがこれじゃ。これを着用してボールの奪い合いをしたり、チャンバラをやったりするスポーツが大昔に大人気じゃったと聞くのじゃ」


「今でも動くんですか?」


「壊れている様には見えぬし、動くはずなのじゃ。どれ、試しに搭乗してみるのじゃ」

 そう言って、魔導鎧カヴァーチャの足元に近づき膝の辺りに手を触れると、魔導鎧カヴァーチャの胸の装甲が上に跳ね上がって搭乗口が開き、黒い巨人が片膝を突き背を傾けて床に屈んだ。


「妾の実家にも似たようなのがあっての、動かし方は解るのじゃ」


 サーラ先生はスルスルと身軽に、魔導鎧カヴァーチャの曲げた膝から胸へと登り、搭乗口に乗り込むと内部に姿を隠し、ハッチが閉められた。


『内部も綺麗じゃし、問題なく動くのじゃ!』


 おお、スピーカーを通したような声が魔導鎧カヴァーチャの頭部辺りから聞こえたよ。

 

 面覆いのスリットの中で目がピカリと光り、膝を曲げていた黒い巨人が立ち上がった。腕をぐるぐる回してから、その場で足を数度踏み換えてぐるりと一回転してみせた。そしてアルコーブの内部に置かれていた巨大な剣を取り、背に装着すると、ガシャンガシャンと音を立てて広間へと出てくる。アルコーブは魔導鎧カヴァーチャの後ろで跡形もなく消滅した。


「おお、これは凄まじい迫力ですのじゃ」


「勇ましいのォ。これがあれば、バールークの騎馬兵共を町から追い出せるのではないじゃろか?」


『カヴァーチャはまだ他にも数体あるようなのじゃし、全機で攻め込めば、奴等を打ち負かすことなど造作もないであろうよ。ただ問題は、このカヴァーチャを動かすには魔力が必要で、搭乗出来るのは妾とダルタくらいだということなのじゃ!』



すまん、実はこれ、ロボット出てきちゃうんですよm(_ _;)m


ファンタジーに巨大ロボとか邪道と思われる方も居られるやもしれませんが、この世界にはエルフ族の超古代文明があったという裏設定があるので、どうかご了承ください。

タンポポだって風に乗って海を渡って繁殖地を広げるのだから、超発展した文明なら他星系の征服を目指して宇宙進出しちゃったり、宇宙船とか巨大ロボとか作っちゃっててもありだよね?

キーワードに「ロボット」を追加しておきました。


次回は金曜日の夜に投稿します。


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