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第三章 9.魔法 (後編)

 サーラさんが目を丸くして僕を見てた。

「おい、オヌシ。今、面白いことをやってたのじゃ。人族なのに魔力操作をしてなかったか?」


「えっ? 今のはプラーナ操作による身体強化術ですよ」


「プラーナと言うのは天地に偏在する自然エネルギーじゃな? 人族がプラーナを体内に満たすことで癒しを行ったり、体を頑健にしたりするというのは聞いたことがあるのじゃ。でもそれだけではなかったじゃろ? 魔力の動きも感知したのじゃ」


「プラーナを〈炉〉のチャクラでオドに変換してますから、そのオドを感知したのかな?」


「ほお、人族のオドなど微小過ぎて感知など出来ないかと思っていたが、オヌシ、いや、ダルタのオドはまるでエルフの同族のもののように感じられたぞ。そなたは人族にしては魔力量が多いのじゃ」


「うーん、どうなんでしょうね。自分ではよく解らないです」


 赤ん坊の頃に森で拾われて来たとか、髪が黒いとかは、関係ないよね?


「それだけの魔力量があるなら、そなたも魔法を使えるようになるかもしれないのじゃ」


「えっ? 本当ですか!?」


「もちろん、才能の有無は大切じゃぞ? エルフ族に生まれても魔法の下手くそな者はおるのじゃ」


「で、でもエルフと同じくらいの魔力量があるなら、下手くそでも少しは使えるようになるんでしょ? 僕は、家族や町の皆を守るためにも、魔法を覚えてもっと強くなりたいです」


「そうじゃな、森で掛けてもらった癒しの術も上手じゃったし、そなたなら魔法もそこそこ使えるようになるのではないか? なんなら、妾が魔法の手解きをしてあげるのじゃ」


 やったー、魔法を教えて貰えるよ!


「よろしくお願いします、サーラ先生」


「せ、先生!? ウオッホン、そ、そうじゃ、妾は先生なのじゃ。それでな、先生はちとお腹が空いておるのじゃがな。な、なにか食べるものはないのかの?」


「お昼に食べるつもりだったお弁当があります。色々あって食べるのを忘れていたけど、村に行ったら分けてあげますね」


「よし、ダルタよ、村へ急ぐのじゃ!」

 と言うとサーラ先生は小走りで村へと駆け出して行った。


 僕は急いで後を追い、ジークさんが先頭に立って率いてる村人たちの行列も追い越して、間も無く村に到着した。

 サーラ先生は、ルマン様が連れてきた冒険者たちからドワーフ扱いされて、目を吊り上げて怒っていた。


「ルマン様!」


「おお、ダルタ。遅くなって済まなかったな。だが、村人たちが戻って来ているところを見ると、ジークと二人でもなんとかなったのだな?」


「村人たちを拐って行ったのは羅刹蜘蛛ラクシャルタの群れでした」


「なんと、羅刹蜘蛛ラクシャルタが群れを作っていたというのか! 母蜘蛛はどうした? ジークと二人だけでは手に負えなかったろう。あのドワーフの娘と協力しても無理だったのではないか?」


「母蜘蛛の居ない群れでした。人族の大人より一回りくらい大きい子蜘蛛が九匹いましたが、ジーク兄さんと二人で全部倒すことが出来ました。それとあの女の子はサーラさんと言って、ドワーフではなくて森のエルフ族だそうです」


「うん? ダルタよ、エルフというのは黒髪に白い肌をしていてだな――」


「ウオッホン! 妾をヘタレ出戻りの青瓢箪どもと一緒にするでない。オヌシら人族が無知なのはよく解っておるから、もう期待はしておらんかったが、まだ妾をこれ以上ドワーフ呼ばわりするのならば、オヌシら全員まとめて相手にしてやるのじゃ!」


 サーラ先生が拳を握り締めて怖い顔をしているよ。魔法とかぶっ放されたら大変なことになっちゃうよ。


「あ、わわ、ルマン様! 色々と事情があるんですが、後で詳しく話しますので、この人をドワーフ呼ばわりはしないであげてください。お願いします」


「あ、ああ、解った。この娘さんはドワーフ族ではない、のだな?」


「そうじゃ、解ったのならよろしい。さて、ダルタよ、早くお弁当を出すのじゃ!」


 そこにジーク兄さんたちが到着したので、後の細々とした説明は任せて、僕はサーラ先生を連れて村の広場の片隅に陣取り、お弁当を広げた。


 僕もとてもお腹が空いていたので、一緒にお弁当をパクつくことにしたよ。ジーク兄さんにお裾分けしても大丈夫なように、母さんがパンにチーズや焼きベーコンを挟んだお弁当をたっぷり持たせてくれてたので、サーラ先生に半分分けてあげても充分に満ち足りた食事になった。

 先生も「三日ぶりの食事なのじゃ!」と喜んでいたよ。母さんに後でお礼を言わなくちゃね。




上古の終わり頃に空に上がって行ったエルフ族と地表に残ったエルフ族は仲が悪いです。空から戻って来たエルフたちは地表に残ってたエルフたちを「この色黒のカッペが!」と蔑んでますし、地表で暮らしてたエルフは空から戻って来たエルフを「何が今頃になってロハスじゃ、この似非ナチュラリスト共が!」と嫌ってます。

空に上がって行ったエルフ? まあ、六道輪廻の言い伝えによればエルフ族は修羅道の住人ですからね。外宇宙の征服にでも乗り出して行ったんじゃないですか?(すっ惚け)


次回は土曜日の夜に投稿します。

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