第三章 8.森のエルフ (前編)
第三章のタイトルは「来襲」に決定!
……全然ひねりも無いのにずいぶん悩んだなあ(遠い目)
「へえ、珍しいな。この子はドワーフ族だ」
ジーク兄さんが後ろから覗き込んできて教えてくれた。
「ロゴスの民の一つで、人族よりほんのちょっと小柄な体格だけど、腕力が強くて魔力も多い。鉱脈を探して山の中や森の中に穴を掘って住んでいたり、金属の細工や物作りを得意としてる種族なんだそうだ。滅多に人里に出て来ることがなくって、偏屈で高慢で、エルフみたいに気難しいと言われている」
「……おい、聞こえておるのじゃ!」
「えっ?」
「おっ?」
ジーク兄さんと二人で顔を見合わせ、それから、横になってるドワーフの女の子に目を向けた。
「先程から黙って聞いておれば、見知らぬ他人に対して偏屈だの高慢だの失礼なことばかり言いおって、本当に無礼な奴らなのじゃ」
「す、すみません!」
「なんだ、目が覚めていたのか。やっぱり人族よりは頑強で毒にも強いのかな?」
「全く、失礼な奴らなのじゃ。じゃがどうやら、羅刹蜘蛛の巣より助けてもらったようなので、今の失礼な物言いは許してやろう。ほら、ちっこいの、もっと癒しをドバドバと掛けるのじゃ!」
ちっこいの、ってどっちが失礼な奴なんだよ。だいたい僕よりそっちの方が小さいじゃないか。でも怖いから口には出して言わないよ?
黙って何も言い返さずに、噛まれた傷を〈再生〉で修復し、プラーナを注ぎ込んであげた。もう喋れるんだから、解毒の祭詞は唱えなくても大丈夫だよね?
「ふーっ、だいぶ体が楽になってきたのじゃ。そろそろ歩けそうなのじゃ」
「君、この羅刹蜘蛛の群れに母蜘蛛はいなかったかい?」
ジーク兄さんがドワーフの女の子に尋ねた。
「妾を捕まえたのは小さい蜘蛛じゃったが、巣に連れて来られてからも大きな母蜘蛛は見掛けんかったのじゃ。すぐに食べようとはせずに、わざわざ巣まで運んで来たものだから、てっきり母蜘蛛への貢ぎ物にされるかと思ったが、大きいのは居なかったようじゃ。もっとも、繭にされてから間も無く毒で意識が朦朧としてきたから定かではないのじゃ」
この子はなんだかお年寄りみたいな喋り方をするね。
「では、やっぱり母蜘蛛の居ない群れだったのかもしれないな。それにしてもどうしてドワーフ族がこんなところにいたんだい?」
「妾たちのことを土矮夫と呼ぶな! 土矮夫だの堕悪エルフだのは、出戻りエルフたちが勝手に呼んでる蔑称なのじゃ! 妾たちこそが由緒正しい森のエルフなのじゃ。あいつらこそ大地を棄てて空に逃げて行った癖に、今頃になっておめおめと戻って来るとは情けない奴らなのじゃ。良いな? 妾たちのことは森のエルフと呼ぶように!」
(……と、言ってますよ、ジーク兄さん?)
(あいつらは、なんでか自分達をエルフと自称してるんだそうだよ。偏屈だって教えただろ?)
「何をごちゃごちゃと話しておるのじゃ?」
「ご、ごめんなさい。で、でも、エルフって言うのは髪が黒くて肌が白くて、すらりとした体型をしてるって聞きましたよ?」
「全く、人族の子供は物を知らないのじゃ。このような田舎に住んでては学が無くても仕方ないのかも知れんが、あの自分達を〈貴族〉とか自称している高慢ちきの青瓢箪どもは、長年の宇宙暮らしで、皮膚から色素が抜けて白くなってしまったのよ。宇宙線に焼けて髪は黒一色になってしまうし、重力のないところで何千年も暮らしてると、ヒョロヒョロと背ばっかり伸びてしまうのじゃ!」
(……とか言ってますが、何のことだか解りましたか?)
(言ってることはよく解らないが、ドワーフと呼ぶのは止めといた方が良さそうだな)
「だから、さっきから何をこそこそと話しておるのじゃ?」
「ああ、いえ、そろそろ村の人たちも動けるようになってきたようだし、日が暮れる前に村へ戻りましょうか」
「ド、――どうぞ、森のエルフさんも一緒に村に行きましょうよ」
「おお、ノジーハ村じゃな。旅の途中であの村に泊めてもらっておったのじゃ。妾の荷物も置いてきてしまったから、一緒に戻るとするのじゃ」
夏だ!海だ!山だ!「山の日」記念で投稿(全然どこにも外出できませんが)
褐色エルフ最高! のじゃロリ可愛過ぎ!
で、書いて見たかったんで登場させちゃった(汗)
後編はこのあと、火曜日の零時に投稿します。