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第二章 10.トゥルパ

「ダーバ様、ただいま戻りました。今日はルマン様に昨日までとは逆の行程を教わりました。あと来週からは武術の修練は午後になるそうです」


「あい、わかった」


「昼食の時にエルフの話を聞きました。エルフの魔法ってすごいんですね。魔導具で空を飛ぶとか聞きましたよ」


「エルフたちは己の種族を〈貴族〉と自称しておるだけあって、ただ高慢なだけではなく優れた容姿と長い寿命、それに強大な魔法の使い手なのじゃ。実際のところ本物の魔法を使えるのは、生まれついての強大なオドを持つエルフだけでな。魔法種族と言ってもよい存在なのじゃ」


「でもお師匠様、優れた〈再生〉のギフトの使い手は魔法使いと呼ばれてるって言ってましたよね?」


 前に聞いたことあるよ?


「人を死の淵から呼び戻せるほどの優れた〈再生〉のギフトを持つ者は、〈再生〉の魔術師と呼ばれておる」


「魔法使いと魔術師は違うのですか?」


「魔法とは世界に干渉する技じゃ。本来、エルフ以外のロゴスの民は、エルフに比べて体内のオドが格段に少ないため、外界に干渉するような魔法は使えん。しかし天地のプラーナを体内に取り込むことで本来肉体に備わった能力、視覚や聴覚、全身の筋力などの肉体強化が出来るようになる。あとはトゥルパの使役じゃな。こういう力を持つ者の中で、特に優れた者は魔術師と呼ばれておるのじゃ」


「トゥルパって前にも聞きました。僕にも基礎が出来てるとか……」


「うむ、トゥルパとは体内に取り込んだプラーナを練ることで作り出せる己の分身じゃ。その姿は自分にしか見えないが、人の姿そっくりにすることも出来るし、鳥や獣の姿をとらせることも出来る。思いのままに宙を飛ばし、周囲の様子を探ったり、遠方の者に言葉を届けたり出来るのじゃ。さらに修行が進むと、トゥルパを実体化させて召し使いにしたり、護衛として敵と戦わせたりなども出来るという」


 なにそれ、凄い!


「まあ、そこまでのトゥルパの達者となれる者はなかなかおらんが、ラハンは皆トゥルパを従えており、警護の際に周囲の索敵をさせたり、離れた場所にいるラハン同士でトゥルパを介して言葉のやり取りをしたり出来るのじゃ」


「ルマン様やジーク兄さんもトゥルパを持っているのですか?」


「おう、ラハン職にある者は皆持っておるわ。何しろ見習い期間中にトゥルパを生成出来ぬ者はラハンには成れぬからの。ワシも元ラハンじゃからトゥルパを持っておるぞ」


 ふふふふん、と自慢気に白い髭を撫で下ろしながらダーバ様が僕を見下ろしている。


「ダーバ様のトゥルパはどんな姿をしているのですか?」


 わくわくしながら僕が訊ねると、不意に頭上から聞きなれない女の子の声がした。


(しろい こぐま トゥルパ よ)


「えっ? ええっ?」


  突然の声に驚いて頭上を見上げてみると、いつもの黄色い金魚が僕を見下ろしながら口をパクパクさせて、もう一度、(しろい こぐま トゥルパ よ)と、喋った!


「どうじゃ、ワシのトゥルパの姿がわかったかの?」


「し、白い小熊の姿だって、声が! ……もしかして今のはダーバ様が声を届けたのですか?」


「そうじゃ、そなたは金魚の姿が見えると言っておったからの。もしや既に声を伝えられるほどに出来上がっておるのではと、ワシのトゥルパを使ってそなたのトゥルパに話しかけてみたのじゃ」


「でも、女の子の声で聞こえましたよ?」


「トゥルパは己の分身ではあるが、己とは異なる自我を持っておる。そして、なぜか、男が作るトゥルパは女性になり、女が作ったトゥルパは男性の意識を持つのじゃ。そしてトゥルパ同士では会話が出来、それぞれの主人の言葉を伝えることが出来るのじゃよ」


 警護中のラハンが口を利かず、じっと立っているだけなのを不思議に思っていたけど、ひょっとして、トゥルパを使って離れた場所にいるラハン同士でお喋りしてたりするのかな?




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