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第二章 8.一週間

 太陽が天空を千億も廻り

 月が百億の満ち欠けを繰返す

 業火が全てを焼き尽くし

 天水が破壊の傷を癒す

 緑の木々は廃墟を覆い原始に戻す

 やがて鋭い鉄が森を切り開き

 土が耕され畑が広がり国が興る

 太陽が天空を百億も廻り

 月が千億の満ち欠けを繰返す


 世の中に永遠不滅のものなどありませんよ、というブッダ様の教えをモチーフにした古い歌がある。で、この歌を覚えておくとこの世界の曜日が覚えられる。


 僕が正式に神殿入りしたのが水の日で、ルマン様に紹介していただいたのが木の日。鉄の日にジーク兄さんとも知り合い、ダーバ様からはプラーナの操作を教わった。そして今日が神殿入りして四日目の土の日だ。

 その土の日の午前。またラハン棟の修練場でルマン様から武術を習っている。


「昨日教えた基本の行程は覚えているな? 今日はその裏行程を訓練する。右半身の構えから左上撃ちをし、最後は左突きで終わる。さあやってみろ」


 えーと、右足を前に出した右半身の構えになって左手を上にして棒を持ち、左足を踏み込みながらの左上撃ちか。ややこしいな。


「どのような体勢からでも棒を繰り出せるようになるために、表と裏の行程を何度も繰り返して身に付けなければならぬ。よいか、基本は踏み出す足と同じ側の腕で打つのだ。体が覚えるまで何度でも繰り返すように」


 ひーっ、昨日までと全く逆に動くなんて難しいよ!


「踏み込み足と繰り出す腕の動きを合わせるのだ。棒の一撃一撃に体重を乗せろ。そこ! もっとしっかり腰を回せ!」

 

 頭がこんがらがりそうになりながら、今日も汗だくになりました。


「よし、今日の修練はこれで終わりにする。明日の太陽日からは実家に戻るのであろう?」


「はい、朝のお勤めを終えたら家に帰ります。次に神殿に戻るのは火の日の夕方です」


「では来週の武術の修練は水の日からだな。私は来週は午前中の丘番に就くから、武術の修練は午後にする。ダーバ様の房で昼食をとってからここに来るように」


 あーあ、来週はここでお昼を食べないから、毎日野菜食ばかりだね。


「三日も間が空くと体が忘れてしまうからな。棒を握らずとも良いが、足運びと手の振りだけは毎日練習しておくように」


「はい、御教授ありがとうございました」


 修練後は大急ぎで水を浴びてから食事の支度の手伝いだ。

 メニューは基本的に毎日同じらしく、今日も季節の野菜ゴロゴロスープとパンに焼きベーコンだ。昨日と同じようにジーク兄さんと並んで野菜を刻む。そして煮込む。

 出来上がったら盛り付けして、食堂に入ってきた人から順番に食事を出して、それから自分達も席に着き、お喋りしながら食事をした。


「そうか、ダルタは町中の鍛冶職人の子なのか。私は町の外の村の農民の子だから、休みの日に半日かけて家まで歩いて帰ってたな」


「僕は町の外には出たことがないんですが、ジーク兄さんは見習いの頃に一人で村まで帰ってたんですか?」


「最初の頃は親が送り迎えしてくれてたが、毎回だと親も大変なんで、二年目頃からは一人で棒を握って帰ってたよ。まだ体はそんなには大きくなかったけれど、棒を持ってればそこらの大人にも負けないと思ってたしな」


「へえー、小さい頃から強かったんですね。それじゃあ、一人でも怖い目に遇ったことなんかなかったんですね」


「なあに、その頃はちょっと自惚れて怖いもの知らずだったからな。実際はそんなにたいした腕でもなかったから、危ない目にも何度か遇ったさ。中でも今思い出してもひやりとするのが、〈貴族〉に追いかけ回されたことだな」


「えっ? お貴族様にですか!」


「ああ、まだ知らないかな。人族のお貴族様のことじゃなくて、〈貴族〉と言えばエルフ族のことだ」



>ブッダ様の教えをモチーフにした古い歌


お分かりかも知れませんが三瀬龍先生の大変有名なあの作品へのオマージュです(汗)


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